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第三章 美少女学園一年目 芽吹き根付く乙女心
【第79話】 つばさ女性化計画(1)
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ほんのりと消毒液の匂いがした。
白くて透けたカーテンに囲まれている。ここは保健室だろうか。
直前のことが思い出せず、頭がもやもやする。
清潔なベッドで、明るい方に寝返りをうつ。
つばさの瞼に、光を遮る一人の影が浮かび上がる。
「目が覚めたようね。つばさちゃん」
大人の女性の声がする。理知的で、冷静で、魅力的で、それなのにどこか得体の知れない不思議な声だ。
「あれ? つばさ、どうしてこんなところに」
小さな手をお口に当てて、つばさは上品にあくびをする。
女医の姿に気が付くと、恥ずかしそうにシーツに顔を隠した。
「可愛らしいお顔ね。あなた、食べちゃいたいくらい魅力的よ」
そう言って女医は、ゆっくりと舌なめずりをした。
美しくも冷たい顔を見ていると、全身がむず痒くなっていく。
小さな心臓がトクトクと速く動いている。
「お姉さん、誰?」
つばさは無垢な表情を保ったまま、小首をかしげた。
母の女優の血がそうさせるのか、少し大人びた女らしい仕草が自然と湧いてくる。
だが、体の芯はブルブルと震えたままだった。
「申し遅れたわね。あたしは速水早紀。ここで非常勤で働いているの」
早紀の妖艶な唇が妖しく光った。
穏やかなのに射抜くような目で、つばさを見つめてくる。
(あれ……この人見たことがある?)
得体の知れない違和感が湧いてくる。
(翔。危険だ。早く逃げないと、取り返しのつかないことに……)
(翔って誰? 取り返しのつかないことってどういうこと?)
頭の声がぐるぐると渦を巻く。
だが翔だったころの本能から警告は、つばさにとってはただの雑音にしか聞こえない。
つばさの長くさらさらの髪を、早紀は指を絡めながらゆっくりと撫でていく。
どこまでも心地よく、優しい撫で方だ。
手のぬくもりに癒されて、警戒心が解けていく。
「大丈夫よ。つばさちゃんはいい娘。とってもいい娘」
優しい言葉に、気持ちが和らいでいく。
つばさはゆっくりと目を閉じる。
頭から伝わる暖かさに、もやが次第に晴れていく。
「あれっ、あっ、つばさ……」
スッキリしていくにつれて、教室で起きた衝撃も蘇っていく。
そうだ。さっきものすごく大変なことが。
思い出した瞬間、頭をぶたれたようなショックで目の奥がチカチカする。
『つばさちゃん、なんでおちんちんがついているの?』
瞳ちゃんの声が頭の中で再生され、リアルに焼き付いて離れない。
突き付けられた衝撃の事実。親友から告げられた、拒絶の言葉が頭をこだまする。
自分が男の子なんてあるわけないのに、みんなが自分の股間をまじまじと見つめてきて……。
「ち、ちがうの」
誰に向かってでもなく、つばさは恥ずかしそうに独り言を絞り出し、内股に股間を隠した。
友達全員のスッキリした股間に対し、たしかに自分には違うものがついていた。
女の子にあるはずのないものが。男の子にしかないものが、女の自分についていた。
それがすごくいけないことのような気がしてならない。
しかも、綺麗な大人の女性に見られるのはさらに気まずかった。
自分がどうしようもない悪い子になった気がして、体を縮こませた。
早紀は相変わらずつばさの頭を撫でながら、耳元で囁く。
全てお見通しと言わんばかりに、落ち着いた声で同じ言葉を繰り返す。
「大丈夫よ。リラックスしていいの。あなたのことは知っているわ」
「知ってるってどういうこと」
つばさは震え声で返す。そして、つばさに告げられたのは、聞きたくない事実だった。
「つばさちゃんの体は立派な男の子ってことよ」
そう言うがはやいか、早紀はシーツをがっしり掴むと、そのまま上へと引っ張り上げた。
「あっ、だ、だめっ」
いともたやすくシーツを剥ぎ取られると、そこに剥き出しの下半身が現れた。
つばさはとっさに、子供おちんちんを両手で隠す。
「こんなに可愛らしいお顔をしているのに、ついてるのよね。不思議だわ」
つばさは顔を真っ赤にして、いやいやと首を振る。
これまで意識したことのなかった股間の突起が、どうしようもなく恥ずかしくなっていく。
「い、言わないで。お願い」
シーツに顔を押し当てながら、つばさは声を絞り出す。
「ふふっ。可愛い。あなた、本当に可愛いわ」
生暖かい声が、つばさの鼓動を高め、胸の奥をじんわりと貫く。
「……」
何も言えなく固くなっているつばさに、早紀は諭すように声をかけ続ける。
「このまま食べちゃいたいくらい」
股間を内側から優しく撫でる。細い指でつばさの緊張を、取り除くように。
ゆっくりと時間を掛けながら、体の強張りを取り除いていく。
つばさの目は次第にとろけ、体から力感が失われていく。
心地よさからか、背中に電流が走り、つばさは太ももをびくつかせた。
「ふふっ。気持ちよさそうね。でも、ダメよ。それはね男の子の反応よ」
男の子と言う言葉が、つばさの心をえぐる。
(違う。つばさは男の子なんかじゃないの。女の子なの。だって……)
悔しさからか顔が熱くなっていく。自分を否定されている気がして、涙腺が緩んでいく。
つばさの心の声を読んだかのように、早紀は言葉を重ねる。
「大丈夫。知っているわ。あなたはとっても可愛い女の子。おちんちんが付いているけど、あなたの心は女の子なのよね」
つばさの頭を、自分のおっぱいに押し当てながら早紀は続けた。
声を低くして、恐怖心を煽るように、ゆっくりとつばさに語り掛ける。
「でも、知ってる? いくら心が女の子でも、おちんちんが付いていると、体は男の子になってしまうの。声も低くなって、筋肉質な体になって、お髭も生えてくるかしら」
早紀はつばさの顎を細い指で撫でながら、目の奥を覗き込む。
つばさは首を振る。
(そんなことない。つばさは、可愛いお嫁さんになるの。そのために毎日厳しいレッスンにも耐えているの。だって、いつかつばさは、おじさまに……。おじさまに……)
聞きたくない言葉を浴びせられて、余裕がなくなっていく。
「そ、そんなこと……ない」
つばさの声は弱弱しい。突き付けられた言葉の暴力を、否定することでしか自我を保てない。
「残念よね。せっかく、こんなに今は可愛いのに。ドレスもこんなに似合うのに。おちんちんが付いているばかりに、つばさちゃんは男の子になってしまうの」
つばさの頭に、自分が男になった映像が浮かび、喉元が苦しくなる。
吐き気が湧いてくる。自分自身のイメージを泥で塗りたくられた。
そんな嫌悪感と拒絶感が頭を充血させていく。
「な、ならない……なりたくない。うぐっ」
シーツが熱い涙で濡れていく。嗚咽が止まらない。
そんなつばさの背中を何度も撫でながら、早紀はさらに心の傷を広げていく。
「気持ちじゃどうにもならないわ。これからあなたは黒いランドセルを背負って、半ズボンを穿いて、他の男の子と一緒に登校するの。体は男の子だもんね。しょうがないわ」
本来、翔のままであれば、何の変哲もないことだっただろう。
だが、何も気が付かないままに、女性として洗脳しつくされたつばさの脳と心は、男になることを拒絶する。
男性として大きくなるという想像が、最悪のトラウマとなっていく。
純粋な恐怖が、幼いつばさの心を蝕んでいく。
「い、いやーーー」
想像に耐え切れず、甲高い声でつばさは叫ぶ。
男なんて、なりたくない。
筋肉質な体なんて、欲しくない。
髭なんて、絶対に無理。いやよ。ありえないわ。
つばさは恐怖と不安で癇癪を起しつつあった。
目の前には絶望しか見えていない。
頃合いと見たのだろうか。早紀は、つばさと向き合うと、今まで以上にゆっくりと、優しい声で語り掛けた。
「大丈夫よ。わたしはあなたの味方だから。だから今日はとってもいいものを持ってきたの」
「ぐすん。い……いいもの?」
すがるような声のつばさは、早紀の手の中にあるガラスの筒を不思議そうな目で見つめていた。
「そう。いいもの」
早紀が取り出したのは、一本の注射だ。ピンク色の液体が満たされた注射器から、一、二滴、水滴の雫が零れ落ちる。早紀はまた、つばさの内股を撫で始める。ゆっくりと、その注射器を近づけながら。
「これにはね、あなたの体が男の子にならないよう、いいえ、女の子になれるようなお薬が入っているの」
「お、お薬?」
つばさの声は震えている。未知のものへの恐怖? 期待? それともその両方だろうか。
「そうよ。女性ホルモンリセプター増幅剤っていうの」
「じょせ……リセプ……ぞーふく?」
「名前は覚えなくていいわ。女の子になるためのとってもいいお薬ってこと。これをあなたの体に入れれば、将来女性ホルモンを取るとき、より効果が高まるの。その年齢になった時に、お肌もスベスベになるし、おっぱいも大きくなるし、きれいなくびれもできるし、成熟した本当の女性になれるの」
「……」
全ては理解できないのだろう。つばさはまた、首をかしげながら聞いていた。
だが、より女らしい体になれる。その部分だけは理解ができた。
絶望の先に現れた光に、つばさの心は吸い寄せられていく。
「そう。本当は男の子になってしまうあなた。それが、他の娘も羨むぐらい立派な女の体になれるの。副作用はおちんちんが大きめになってしまうことだけど、どうせ切り取るのだから問題ないわ」
事も無げにそう言うと、早紀は針をつばさの睾丸にさらに近づけていく。
「どう? つばさちゃんは、本当に女の子になりたい? このお注射をすると、もう戻れないわよ。二度と男の子になれないわよ。それでもいい?」
質問の意味がつばさには分からない。
早紀は真剣な面持ちで、繰り返し聞いてくる。
つばさは女の子。今は股間に変なものが付いているけど、正真正銘の女の子。
だから、迷いなんてない。なのに、胸のドキドキを抑えられない。どうしてだろう。
「つ、つばさは女の子……です。だから、おちんちんなんて、変なものいらないの」
つばさの声は震えている。これで「はい」と言ってしまったら、全てが変わってしまう。
それが本能的に分かるからなのだろう。
「つばさの心は女の子です。男だなんて思ったこと一度もないわ。だから」
全てが変わったとしても、関係ない。
もう一度、落ち着いた声で、しっかりと早紀をみつめながら、つばさは自分の言葉でお願いをした。
「先生のお薬で、つばさの体も女の子にしてください。本当の女性に」
「いいわ。それが聞きたかったの。ちゃんと男性と愛し合える体にしてあげる。ちょっとだけチクっとするから我慢してね」
その言葉と共に、極細の針がつばさの睾丸へと挿入される。
そして、男を殺すための悪魔の薬がゆっくりと体内に入っていった。
白くて透けたカーテンに囲まれている。ここは保健室だろうか。
直前のことが思い出せず、頭がもやもやする。
清潔なベッドで、明るい方に寝返りをうつ。
つばさの瞼に、光を遮る一人の影が浮かび上がる。
「目が覚めたようね。つばさちゃん」
大人の女性の声がする。理知的で、冷静で、魅力的で、それなのにどこか得体の知れない不思議な声だ。
「あれ? つばさ、どうしてこんなところに」
小さな手をお口に当てて、つばさは上品にあくびをする。
女医の姿に気が付くと、恥ずかしそうにシーツに顔を隠した。
「可愛らしいお顔ね。あなた、食べちゃいたいくらい魅力的よ」
そう言って女医は、ゆっくりと舌なめずりをした。
美しくも冷たい顔を見ていると、全身がむず痒くなっていく。
小さな心臓がトクトクと速く動いている。
「お姉さん、誰?」
つばさは無垢な表情を保ったまま、小首をかしげた。
母の女優の血がそうさせるのか、少し大人びた女らしい仕草が自然と湧いてくる。
だが、体の芯はブルブルと震えたままだった。
「申し遅れたわね。あたしは速水早紀。ここで非常勤で働いているの」
早紀の妖艶な唇が妖しく光った。
穏やかなのに射抜くような目で、つばさを見つめてくる。
(あれ……この人見たことがある?)
得体の知れない違和感が湧いてくる。
(翔。危険だ。早く逃げないと、取り返しのつかないことに……)
(翔って誰? 取り返しのつかないことってどういうこと?)
頭の声がぐるぐると渦を巻く。
だが翔だったころの本能から警告は、つばさにとってはただの雑音にしか聞こえない。
つばさの長くさらさらの髪を、早紀は指を絡めながらゆっくりと撫でていく。
どこまでも心地よく、優しい撫で方だ。
手のぬくもりに癒されて、警戒心が解けていく。
「大丈夫よ。つばさちゃんはいい娘。とってもいい娘」
優しい言葉に、気持ちが和らいでいく。
つばさはゆっくりと目を閉じる。
頭から伝わる暖かさに、もやが次第に晴れていく。
「あれっ、あっ、つばさ……」
スッキリしていくにつれて、教室で起きた衝撃も蘇っていく。
そうだ。さっきものすごく大変なことが。
思い出した瞬間、頭をぶたれたようなショックで目の奥がチカチカする。
『つばさちゃん、なんでおちんちんがついているの?』
瞳ちゃんの声が頭の中で再生され、リアルに焼き付いて離れない。
突き付けられた衝撃の事実。親友から告げられた、拒絶の言葉が頭をこだまする。
自分が男の子なんてあるわけないのに、みんなが自分の股間をまじまじと見つめてきて……。
「ち、ちがうの」
誰に向かってでもなく、つばさは恥ずかしそうに独り言を絞り出し、内股に股間を隠した。
友達全員のスッキリした股間に対し、たしかに自分には違うものがついていた。
女の子にあるはずのないものが。男の子にしかないものが、女の自分についていた。
それがすごくいけないことのような気がしてならない。
しかも、綺麗な大人の女性に見られるのはさらに気まずかった。
自分がどうしようもない悪い子になった気がして、体を縮こませた。
早紀は相変わらずつばさの頭を撫でながら、耳元で囁く。
全てお見通しと言わんばかりに、落ち着いた声で同じ言葉を繰り返す。
「大丈夫よ。リラックスしていいの。あなたのことは知っているわ」
「知ってるってどういうこと」
つばさは震え声で返す。そして、つばさに告げられたのは、聞きたくない事実だった。
「つばさちゃんの体は立派な男の子ってことよ」
そう言うがはやいか、早紀はシーツをがっしり掴むと、そのまま上へと引っ張り上げた。
「あっ、だ、だめっ」
いともたやすくシーツを剥ぎ取られると、そこに剥き出しの下半身が現れた。
つばさはとっさに、子供おちんちんを両手で隠す。
「こんなに可愛らしいお顔をしているのに、ついてるのよね。不思議だわ」
つばさは顔を真っ赤にして、いやいやと首を振る。
これまで意識したことのなかった股間の突起が、どうしようもなく恥ずかしくなっていく。
「い、言わないで。お願い」
シーツに顔を押し当てながら、つばさは声を絞り出す。
「ふふっ。可愛い。あなた、本当に可愛いわ」
生暖かい声が、つばさの鼓動を高め、胸の奥をじんわりと貫く。
「……」
何も言えなく固くなっているつばさに、早紀は諭すように声をかけ続ける。
「このまま食べちゃいたいくらい」
股間を内側から優しく撫でる。細い指でつばさの緊張を、取り除くように。
ゆっくりと時間を掛けながら、体の強張りを取り除いていく。
つばさの目は次第にとろけ、体から力感が失われていく。
心地よさからか、背中に電流が走り、つばさは太ももをびくつかせた。
「ふふっ。気持ちよさそうね。でも、ダメよ。それはね男の子の反応よ」
男の子と言う言葉が、つばさの心をえぐる。
(違う。つばさは男の子なんかじゃないの。女の子なの。だって……)
悔しさからか顔が熱くなっていく。自分を否定されている気がして、涙腺が緩んでいく。
つばさの心の声を読んだかのように、早紀は言葉を重ねる。
「大丈夫。知っているわ。あなたはとっても可愛い女の子。おちんちんが付いているけど、あなたの心は女の子なのよね」
つばさの頭を、自分のおっぱいに押し当てながら早紀は続けた。
声を低くして、恐怖心を煽るように、ゆっくりとつばさに語り掛ける。
「でも、知ってる? いくら心が女の子でも、おちんちんが付いていると、体は男の子になってしまうの。声も低くなって、筋肉質な体になって、お髭も生えてくるかしら」
早紀はつばさの顎を細い指で撫でながら、目の奥を覗き込む。
つばさは首を振る。
(そんなことない。つばさは、可愛いお嫁さんになるの。そのために毎日厳しいレッスンにも耐えているの。だって、いつかつばさは、おじさまに……。おじさまに……)
聞きたくない言葉を浴びせられて、余裕がなくなっていく。
「そ、そんなこと……ない」
つばさの声は弱弱しい。突き付けられた言葉の暴力を、否定することでしか自我を保てない。
「残念よね。せっかく、こんなに今は可愛いのに。ドレスもこんなに似合うのに。おちんちんが付いているばかりに、つばさちゃんは男の子になってしまうの」
つばさの頭に、自分が男になった映像が浮かび、喉元が苦しくなる。
吐き気が湧いてくる。自分自身のイメージを泥で塗りたくられた。
そんな嫌悪感と拒絶感が頭を充血させていく。
「な、ならない……なりたくない。うぐっ」
シーツが熱い涙で濡れていく。嗚咽が止まらない。
そんなつばさの背中を何度も撫でながら、早紀はさらに心の傷を広げていく。
「気持ちじゃどうにもならないわ。これからあなたは黒いランドセルを背負って、半ズボンを穿いて、他の男の子と一緒に登校するの。体は男の子だもんね。しょうがないわ」
本来、翔のままであれば、何の変哲もないことだっただろう。
だが、何も気が付かないままに、女性として洗脳しつくされたつばさの脳と心は、男になることを拒絶する。
男性として大きくなるという想像が、最悪のトラウマとなっていく。
純粋な恐怖が、幼いつばさの心を蝕んでいく。
「い、いやーーー」
想像に耐え切れず、甲高い声でつばさは叫ぶ。
男なんて、なりたくない。
筋肉質な体なんて、欲しくない。
髭なんて、絶対に無理。いやよ。ありえないわ。
つばさは恐怖と不安で癇癪を起しつつあった。
目の前には絶望しか見えていない。
頃合いと見たのだろうか。早紀は、つばさと向き合うと、今まで以上にゆっくりと、優しい声で語り掛けた。
「大丈夫よ。わたしはあなたの味方だから。だから今日はとってもいいものを持ってきたの」
「ぐすん。い……いいもの?」
すがるような声のつばさは、早紀の手の中にあるガラスの筒を不思議そうな目で見つめていた。
「そう。いいもの」
早紀が取り出したのは、一本の注射だ。ピンク色の液体が満たされた注射器から、一、二滴、水滴の雫が零れ落ちる。早紀はまた、つばさの内股を撫で始める。ゆっくりと、その注射器を近づけながら。
「これにはね、あなたの体が男の子にならないよう、いいえ、女の子になれるようなお薬が入っているの」
「お、お薬?」
つばさの声は震えている。未知のものへの恐怖? 期待? それともその両方だろうか。
「そうよ。女性ホルモンリセプター増幅剤っていうの」
「じょせ……リセプ……ぞーふく?」
「名前は覚えなくていいわ。女の子になるためのとってもいいお薬ってこと。これをあなたの体に入れれば、将来女性ホルモンを取るとき、より効果が高まるの。その年齢になった時に、お肌もスベスベになるし、おっぱいも大きくなるし、きれいなくびれもできるし、成熟した本当の女性になれるの」
「……」
全ては理解できないのだろう。つばさはまた、首をかしげながら聞いていた。
だが、より女らしい体になれる。その部分だけは理解ができた。
絶望の先に現れた光に、つばさの心は吸い寄せられていく。
「そう。本当は男の子になってしまうあなた。それが、他の娘も羨むぐらい立派な女の体になれるの。副作用はおちんちんが大きめになってしまうことだけど、どうせ切り取るのだから問題ないわ」
事も無げにそう言うと、早紀は針をつばさの睾丸にさらに近づけていく。
「どう? つばさちゃんは、本当に女の子になりたい? このお注射をすると、もう戻れないわよ。二度と男の子になれないわよ。それでもいい?」
質問の意味がつばさには分からない。
早紀は真剣な面持ちで、繰り返し聞いてくる。
つばさは女の子。今は股間に変なものが付いているけど、正真正銘の女の子。
だから、迷いなんてない。なのに、胸のドキドキを抑えられない。どうしてだろう。
「つ、つばさは女の子……です。だから、おちんちんなんて、変なものいらないの」
つばさの声は震えている。これで「はい」と言ってしまったら、全てが変わってしまう。
それが本能的に分かるからなのだろう。
「つばさの心は女の子です。男だなんて思ったこと一度もないわ。だから」
全てが変わったとしても、関係ない。
もう一度、落ち着いた声で、しっかりと早紀をみつめながら、つばさは自分の言葉でお願いをした。
「先生のお薬で、つばさの体も女の子にしてください。本当の女性に」
「いいわ。それが聞きたかったの。ちゃんと男性と愛し合える体にしてあげる。ちょっとだけチクっとするから我慢してね」
その言葉と共に、極細の針がつばさの睾丸へと挿入される。
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