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第三章 美少女学園一年目 芽吹き根付く乙女心
【第56話】 再教育(56)つばさ
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■末舛つばさサイド(19)過去
長くなった髪を乾かして、パジャマに着替えてからベッドに入る。
今日もプリンセスドレス風のパジャマなの。
袖口全てにお花のフリルが付いていて、可愛らしいのよ。
スカートタイプのパジャマは経験なかったけど、着てみると本当のお姫様になったようで嬉しくなる。
つばさの枕元にはママがいる。
ラベンダーのコロンの匂いが、髪から漂ってくる。
ママは大きな絵本を広げて、ゆっくりとした口調で、お話を聞かせてくれる。
暖色のベッドランプに照らされた本の背表紙を見ていると、眠気がやってくる。
だけど、物語が面白いから、つばさはまだ寝ないの。
「……そして、白雪姫は王子様と幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
白雪姫、シンデレラ、眠りの森の美女、美女と野獣……、赤ずきんちゃん。
ママが持ってきてくれる絵本は、みんなお姫様や美少女が主人公。
聞いたことのないお話ばかりで、ドキドキしちゃう。
「ねぇ、ママ。もう一回読んで」
「いいわよ。つばさが満足するまで何回でも読んであげるわ」
ママはどこまでも何度でも付き合ってくれる。
ママの優しい声は、ピアノのレッスンで疲れたつばさの耳に、心地よく響いてくる。
でも、読み方はちょっと変わっているの。
何が変わっているかって?
ママは、主人公を必ず「つばさ」に置き換えて読んでくれるの。
それを聞いていると、なんだかつばさが本当にその主人公になった気分になっちゃうの。
特にシンデレラなんて、最初すごく悲しくて辛かったわ。
だって王子様と結ばれるまでは、ずっとつばさは灰まみれで、貧しい生活を送るのよ。
でも最後、王子様と結婚したときは、つばさもなんだか嬉しくなっちゃった。
やっぱり素敵な男性と一緒になって、いつかつばさ自身がママになるのが夢なんだもん。
つばさが赤ずきんちゃんの時は、オオカミさんが襲ってくるのがとっても怖かった。
でも泣きそうになっていると、ママが「大丈夫よ。つばさがいい娘にしていたら、きっと幸せになれるから」って言って、頭を撫でてくれる。
だから、つばさはね、いい娘にしているんだ。
ママの言いつけはちゃんと守るし、言葉遣いにも気を付けているの。
この前、つばさが間違えて自分のことを「僕」って言ったら、ママにすごく怒られたの。
すごい勢いで、お尻をペンペンぶたれたわ。
「そんなに男の子になりたいの? だったら、男の子の服でも着ればいいじゃない」
そう言って、ママは汚らしい男の子の服をつばさに投げつけてきたの。
「ご、ごめんなさい。ちがうの。つばさは男の子になんて、なりたくないの。でも口が勝手に動いちゃうの」
つばさが言っているのは本当のことよ。
どうしてか分からないけど、男言葉が出てきちゃうときがあるの。
ママはその後、必ずつばさに確認する。
「つばさは、汚くて野蛮な男の子になりたいの? それとも可愛くて優しい女の子になりたいの?」
なんで疑問形で聞いてくるのか分からないけど、いつも正直に答える。
「つばさは女の子。これまでも、これからも。可愛くて優しい女の子になりたいの」
それはつばさの本心よ。
でも、どうしてかな。
それを言うたびに、心の奥できしむような音がする気がするの。
ねぇ、どうして。
ママはつばさの言葉を聞くと、安心したような笑顔に戻る。
「そうよ。つばさちゃんは、自分が女の子になりたいから、好きで女の子の格好しているのよね」
ママの言葉につばさは頷く。
色々考えてようやく分かったの。
ママはつばさのふわふわ病を心配しているのね。
大丈夫よ、ママ。
だって、つばさは生まれながらの女の子だもん。
もう二度と自分が男の子だなんて勘違いはしないわ。
----
つばさは今日も疲れてぐったりしている。
だって、女の子になるって想像した以上に大変なのよ。
家庭教師の先生が何人も来て、つばさにピアノやバレエ、生け花とかを教えてくれるんだけど、とっても厳しいの。
「つばさちゃん。もっと優しく弾きなさい。流れるような美しいメロディーをイメージするの」
「もっと足を高く上げて。あなたは森の妖精なの。それを意識して緩やかに踊りなさい」
「お花を活かすのも殺すのも、あなた次第よ。もっと女の子として心が成長すれば、お花にもそれが表れるわ。頑張りなさい」
ピアノの先生、バレエの先生、お花の先生。
みんなつばさがレディーになるために、教えてくれるんだけど、求めてくるものが高すぎて、付いていくのも大変なの。
でもね。一つ頑張れる理由があるの。
それは、おじさまが今度あたしの家に遊びに来てくれることよ。
いつも会ってはいるけれど、おじさまはプリンセスドレスを着た本当のあたしのことは知らないの。
だから、今度頑張るの。
おじさまに、「女」として見てもらうために。
もうお子ちゃまなんて言わせないわ。
だから、つばさ、頑張るの。
長くなった髪を乾かして、パジャマに着替えてからベッドに入る。
今日もプリンセスドレス風のパジャマなの。
袖口全てにお花のフリルが付いていて、可愛らしいのよ。
スカートタイプのパジャマは経験なかったけど、着てみると本当のお姫様になったようで嬉しくなる。
つばさの枕元にはママがいる。
ラベンダーのコロンの匂いが、髪から漂ってくる。
ママは大きな絵本を広げて、ゆっくりとした口調で、お話を聞かせてくれる。
暖色のベッドランプに照らされた本の背表紙を見ていると、眠気がやってくる。
だけど、物語が面白いから、つばさはまだ寝ないの。
「……そして、白雪姫は王子様と幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
白雪姫、シンデレラ、眠りの森の美女、美女と野獣……、赤ずきんちゃん。
ママが持ってきてくれる絵本は、みんなお姫様や美少女が主人公。
聞いたことのないお話ばかりで、ドキドキしちゃう。
「ねぇ、ママ。もう一回読んで」
「いいわよ。つばさが満足するまで何回でも読んであげるわ」
ママはどこまでも何度でも付き合ってくれる。
ママの優しい声は、ピアノのレッスンで疲れたつばさの耳に、心地よく響いてくる。
でも、読み方はちょっと変わっているの。
何が変わっているかって?
ママは、主人公を必ず「つばさ」に置き換えて読んでくれるの。
それを聞いていると、なんだかつばさが本当にその主人公になった気分になっちゃうの。
特にシンデレラなんて、最初すごく悲しくて辛かったわ。
だって王子様と結ばれるまでは、ずっとつばさは灰まみれで、貧しい生活を送るのよ。
でも最後、王子様と結婚したときは、つばさもなんだか嬉しくなっちゃった。
やっぱり素敵な男性と一緒になって、いつかつばさ自身がママになるのが夢なんだもん。
つばさが赤ずきんちゃんの時は、オオカミさんが襲ってくるのがとっても怖かった。
でも泣きそうになっていると、ママが「大丈夫よ。つばさがいい娘にしていたら、きっと幸せになれるから」って言って、頭を撫でてくれる。
だから、つばさはね、いい娘にしているんだ。
ママの言いつけはちゃんと守るし、言葉遣いにも気を付けているの。
この前、つばさが間違えて自分のことを「僕」って言ったら、ママにすごく怒られたの。
すごい勢いで、お尻をペンペンぶたれたわ。
「そんなに男の子になりたいの? だったら、男の子の服でも着ればいいじゃない」
そう言って、ママは汚らしい男の子の服をつばさに投げつけてきたの。
「ご、ごめんなさい。ちがうの。つばさは男の子になんて、なりたくないの。でも口が勝手に動いちゃうの」
つばさが言っているのは本当のことよ。
どうしてか分からないけど、男言葉が出てきちゃうときがあるの。
ママはその後、必ずつばさに確認する。
「つばさは、汚くて野蛮な男の子になりたいの? それとも可愛くて優しい女の子になりたいの?」
なんで疑問形で聞いてくるのか分からないけど、いつも正直に答える。
「つばさは女の子。これまでも、これからも。可愛くて優しい女の子になりたいの」
それはつばさの本心よ。
でも、どうしてかな。
それを言うたびに、心の奥できしむような音がする気がするの。
ねぇ、どうして。
ママはつばさの言葉を聞くと、安心したような笑顔に戻る。
「そうよ。つばさちゃんは、自分が女の子になりたいから、好きで女の子の格好しているのよね」
ママの言葉につばさは頷く。
色々考えてようやく分かったの。
ママはつばさのふわふわ病を心配しているのね。
大丈夫よ、ママ。
だって、つばさは生まれながらの女の子だもん。
もう二度と自分が男の子だなんて勘違いはしないわ。
----
つばさは今日も疲れてぐったりしている。
だって、女の子になるって想像した以上に大変なのよ。
家庭教師の先生が何人も来て、つばさにピアノやバレエ、生け花とかを教えてくれるんだけど、とっても厳しいの。
「つばさちゃん。もっと優しく弾きなさい。流れるような美しいメロディーをイメージするの」
「もっと足を高く上げて。あなたは森の妖精なの。それを意識して緩やかに踊りなさい」
「お花を活かすのも殺すのも、あなた次第よ。もっと女の子として心が成長すれば、お花にもそれが表れるわ。頑張りなさい」
ピアノの先生、バレエの先生、お花の先生。
みんなつばさがレディーになるために、教えてくれるんだけど、求めてくるものが高すぎて、付いていくのも大変なの。
でもね。一つ頑張れる理由があるの。
それは、おじさまが今度あたしの家に遊びに来てくれることよ。
いつも会ってはいるけれど、おじさまはプリンセスドレスを着た本当のあたしのことは知らないの。
だから、今度頑張るの。
おじさまに、「女」として見てもらうために。
もうお子ちゃまなんて言わせないわ。
だから、つばさ、頑張るの。
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