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第三章 美少女学園一年目 芽吹き根付く乙女心
【第50話】 再教育(50)つばさ
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末舛つばさサイド(17)(過去)
自分はつばさ。
つばさは女の子なの。
大好きなワンピースを着た自分を見て、よく分かったの。
いいえ。心では、ずっと分かってたのかも。
つばさは女の子なんだって。
バカだよね。
どうして忘れてしまったのかな。こんなに大切なことを。
こんなに可愛いのに。
スカートがこんなに似合うのに。
男の子のはずないよ。
自分のことなのに、なんでバカな勘違いしてたのかな。
しっかりしないとダメだよね。
今、あらためて分かったの。
フリルのついたお洒落なお洋服を着ているだけで、幸せな気分になれるんだって。
すべすべのおパンツを穿いていると、ぽかぽかした気持ちでいっぱいになるの。
おじさまも、パパもママも、みんな教えてくれる。
思い出させてくれるの。
自分はつばさだって。女の子だってことを。
(だめだ、翔。お前は男の子の翔だ。忘れちゃだめだ)
つばさね、実を言うとね、あまり頭が良くないの。
優しいおじさまは、「そんなことないよ」って言ってくれるけど。
他の人よりずっと忘れっぽいのは確か。
(いいえ。あなたはつばさよ。女の子のつばさになっちゃったの)
しょうがないの。
だって、頭がふわふわしてくると、ついさっきのことすら頭から消えてしまうんだもん。
自分がちょっと前まで、どこにいたかも思い出せなくなっちゃうの。
こんなに可愛らしいワンピースをプレゼントしてもらったのに、いつ着替えたかすら覚えていないの。
ダメだよね。こんなんじゃ。
(がんばれ翔。思い出せ、自分のことを。男の子だってことを)
最悪なのは、自分が女の子だってことすら忘れていたことなの。
あー、もう頭にくるー。
今もね、変な空耳が聞こえてきて、つばさが男だって言うんだよ。
おかしいよね。だからそんなときは自分に言い聞かせるように唱えるんだ。
「変なこと言わないで。つばさは女の子。可愛い女の子なの」って。
口に出して言うと、心が洗われるようにすっきりするの。
心の中のゴミ? みたいなものが取れて、気持ちが楽になるの。
頭の中のおかしな声が小さくなるの。
だからこれからも、自分に向かって毎日語り掛けるんだ。
つばさは女の子なんだって。
ーーーー
今日はね、パパとママが来てくれたの。
つばさは忘れっぽいから、パパとママのことすら忘れていた。
二人には言わないでね。傷つくだろうから。
でもママがギュッとしてくれたとき、ママの柔らかい感触が伝わってきて。
ママの懐かしい甘い匂いがしてきて、思い出した。
この人たちが、つばさのパパとママなんだって。
ずっと恋しいと思ってたパパとママなんだって。
二人は、泣きながら謝ってくれたの。
ずっと来られなくてごめんなさいねって。
つばさはおじさまと一緒だったから、寂しくはなかったけど、でも嬉しかった。
パパとママに捨てられたわけではなかったんだって。
それからね、パパとママは教えてくれたの。
疑問に思っていたことを。
どうしてつばさが、おじさまのところで過ごすことになったかを。
どうしてずっと会えなかったかを。
一言で言うと、やっぱり「ふわふわ病」が原因だったみたい。
すぐ前のことを忘れてしまう「ふわふわ病」を治すことができるのが、おじさまだったらしいの。
あの気持ちいい帽子――ヘッドギアっていうんだっけ――をかぶることで治すことができるんだって。
いつ「ふわふわ」がくるか分からなくて危険だから、おじさまの病院に入院してたんだって。
おじさまは優しいから、病気だなんて一言も言ったことなかったけど、パパとママの言葉に頷いてた。
やっぱりおじさまは偉いお医者様なんだね。
おじさまのおかげで、ふわふわ病はだいぶ良くなってきたらしいの。
もうパパとママの家から毎日通うだけで大丈夫だって。
気持ちよくなる帽子をかぶりに来るだけで、十分なんだって。
ということは、もう忘れっぽくなくなるのかしら。
ふわふわ病もそのうち治るのかな。
だったらいいな。
だって、二度と忘れたくないから。
自分が女の子だってことを。
でも、ふわふわ病だったからいいことだってあるの。
それは、とっても素敵なおじさまと出会えたこと。
誰よりも好きな男の人を見つけられたことなの。
この病気にならなかったら、きっと会うことはなかったから。
子供だからって笑わないでね。
もうすぐ四歳だし、乙女心だってちゃんとあるんだから。
そのうちもっと可愛くなって、ちゃんと大人の女の子になってからおじさまにお願いするの。
お嫁さんにしてくださいって。
ぜったいなるの。
おじさまのお嫁さんに。
この気持ちだけは、絶対に忘れない。
それでね、ふわふわ病が治ったらおじさまに会えなくなるのって聞いたら、まだまだ治るまで時間がかかるって言われたの。ちょっとホッとしたかも。
治らないのは嫌だけど、おじさまと会える時間が増えるのは嬉しいから。
すぐこんなことを考えちゃう。
つばさはダメな娘だよね。
でも、おじさまのこと大好きなんだもん。ずっと一緒にいたいんだもん。
これから久しぶりにおうちに帰るの。
何も覚えていないのは不安だけど、きっと大丈夫。
おじさまが大丈夫って言ってくれたから、心配はしてないよ。
ママは「つばさちゃんが本物のお嬢様になれるように、みっちり教育してあげるわ」って張り切っていたけど、何をするのかな。
レディーとしての躾けってどういうことかな。
本当の女の子になるためって言うけど、つばさは女の子だよ。
パパとママはつばさと手をつないでくれる。
るんるんるん。
なんだか楽しいな。
どんなお家なんだろう。
思い出せないけど、わくわくするの。
自分はつばさ。
つばさは女の子なの。
大好きなワンピースを着た自分を見て、よく分かったの。
いいえ。心では、ずっと分かってたのかも。
つばさは女の子なんだって。
バカだよね。
どうして忘れてしまったのかな。こんなに大切なことを。
こんなに可愛いのに。
スカートがこんなに似合うのに。
男の子のはずないよ。
自分のことなのに、なんでバカな勘違いしてたのかな。
しっかりしないとダメだよね。
今、あらためて分かったの。
フリルのついたお洒落なお洋服を着ているだけで、幸せな気分になれるんだって。
すべすべのおパンツを穿いていると、ぽかぽかした気持ちでいっぱいになるの。
おじさまも、パパもママも、みんな教えてくれる。
思い出させてくれるの。
自分はつばさだって。女の子だってことを。
(だめだ、翔。お前は男の子の翔だ。忘れちゃだめだ)
つばさね、実を言うとね、あまり頭が良くないの。
優しいおじさまは、「そんなことないよ」って言ってくれるけど。
他の人よりずっと忘れっぽいのは確か。
(いいえ。あなたはつばさよ。女の子のつばさになっちゃったの)
しょうがないの。
だって、頭がふわふわしてくると、ついさっきのことすら頭から消えてしまうんだもん。
自分がちょっと前まで、どこにいたかも思い出せなくなっちゃうの。
こんなに可愛らしいワンピースをプレゼントしてもらったのに、いつ着替えたかすら覚えていないの。
ダメだよね。こんなんじゃ。
(がんばれ翔。思い出せ、自分のことを。男の子だってことを)
最悪なのは、自分が女の子だってことすら忘れていたことなの。
あー、もう頭にくるー。
今もね、変な空耳が聞こえてきて、つばさが男だって言うんだよ。
おかしいよね。だからそんなときは自分に言い聞かせるように唱えるんだ。
「変なこと言わないで。つばさは女の子。可愛い女の子なの」って。
口に出して言うと、心が洗われるようにすっきりするの。
心の中のゴミ? みたいなものが取れて、気持ちが楽になるの。
頭の中のおかしな声が小さくなるの。
だからこれからも、自分に向かって毎日語り掛けるんだ。
つばさは女の子なんだって。
ーーーー
今日はね、パパとママが来てくれたの。
つばさは忘れっぽいから、パパとママのことすら忘れていた。
二人には言わないでね。傷つくだろうから。
でもママがギュッとしてくれたとき、ママの柔らかい感触が伝わってきて。
ママの懐かしい甘い匂いがしてきて、思い出した。
この人たちが、つばさのパパとママなんだって。
ずっと恋しいと思ってたパパとママなんだって。
二人は、泣きながら謝ってくれたの。
ずっと来られなくてごめんなさいねって。
つばさはおじさまと一緒だったから、寂しくはなかったけど、でも嬉しかった。
パパとママに捨てられたわけではなかったんだって。
それからね、パパとママは教えてくれたの。
疑問に思っていたことを。
どうしてつばさが、おじさまのところで過ごすことになったかを。
どうしてずっと会えなかったかを。
一言で言うと、やっぱり「ふわふわ病」が原因だったみたい。
すぐ前のことを忘れてしまう「ふわふわ病」を治すことができるのが、おじさまだったらしいの。
あの気持ちいい帽子――ヘッドギアっていうんだっけ――をかぶることで治すことができるんだって。
いつ「ふわふわ」がくるか分からなくて危険だから、おじさまの病院に入院してたんだって。
おじさまは優しいから、病気だなんて一言も言ったことなかったけど、パパとママの言葉に頷いてた。
やっぱりおじさまは偉いお医者様なんだね。
おじさまのおかげで、ふわふわ病はだいぶ良くなってきたらしいの。
もうパパとママの家から毎日通うだけで大丈夫だって。
気持ちよくなる帽子をかぶりに来るだけで、十分なんだって。
ということは、もう忘れっぽくなくなるのかしら。
ふわふわ病もそのうち治るのかな。
だったらいいな。
だって、二度と忘れたくないから。
自分が女の子だってことを。
でも、ふわふわ病だったからいいことだってあるの。
それは、とっても素敵なおじさまと出会えたこと。
誰よりも好きな男の人を見つけられたことなの。
この病気にならなかったら、きっと会うことはなかったから。
子供だからって笑わないでね。
もうすぐ四歳だし、乙女心だってちゃんとあるんだから。
そのうちもっと可愛くなって、ちゃんと大人の女の子になってからおじさまにお願いするの。
お嫁さんにしてくださいって。
ぜったいなるの。
おじさまのお嫁さんに。
この気持ちだけは、絶対に忘れない。
それでね、ふわふわ病が治ったらおじさまに会えなくなるのって聞いたら、まだまだ治るまで時間がかかるって言われたの。ちょっとホッとしたかも。
治らないのは嫌だけど、おじさまと会える時間が増えるのは嬉しいから。
すぐこんなことを考えちゃう。
つばさはダメな娘だよね。
でも、おじさまのこと大好きなんだもん。ずっと一緒にいたいんだもん。
これから久しぶりにおうちに帰るの。
何も覚えていないのは不安だけど、きっと大丈夫。
おじさまが大丈夫って言ってくれたから、心配はしてないよ。
ママは「つばさちゃんが本物のお嬢様になれるように、みっちり教育してあげるわ」って張り切っていたけど、何をするのかな。
レディーとしての躾けってどういうことかな。
本当の女の子になるためって言うけど、つばさは女の子だよ。
パパとママはつばさと手をつないでくれる。
るんるんるん。
なんだか楽しいな。
どんなお家なんだろう。
思い出せないけど、わくわくするの。
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