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第二章 開かれる女の子への道(クリスティーナ編)
【第3話】 クリスティーナの過去(1/9)
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「ふぅ、やっと終わった」
豪華絢爛な入学式が終わり、クリスティーナは自室に戻ってほっと一息をついた。
「どうもああいう場所は落ち着かないんだよね」
誰もいない空間で安心したせいか、思わず本音が漏れる。
セーラー服を着させられていることに加えて、そもそもセレモニーの類が苦手なのだ。
育ってきた環境を考えると、そう思うのも当然と言える。
比較的裕福な育ちの葵と違って、クリスティーナは貧しい出だ。
乗り越えてきた修羅場の数も葵の比ではない。
思えば騙され続けた人生だ。騙さなければ、騙される。絶対に誰も信用してはいけない。
(でも、仕方ないよ。だって、僕に選択肢なんて最初からなかったんだから)
そう心で呟いて、彼女は青く澄んだ空を見上げる。
この空は、きっと彼女の故郷のイギリスまで続いている。
(そうだ。あの日までは僕だって男の子として、大人になると思っていたんだ。今だって、諦めてはいないんだけど)
クリスティーナは少年時代を思い出す。
まだ、苦しくも自由のあったあの頃のことを。
それが全て、あの日を境に変わってしまった。
昔の自分が、今の自分を見たらどう反応するだろう。
クリスティーナの頭に、懐かしい田園風景が浮かんできた。
「ねぇジェニー……。僕はどうすればよかったのかな」
独り言を言う彼女の目には、決壊寸前まで涙が貯め込まれていた。
ーーーーー
クリスティーナの思い出の場所は、広い野原の真ん中にポツンとある孤児院だ。
時代錯誤の古びたレンガ造りの建物は、夏は暑く、冬は寒い。
引き取り手のない不幸な四十九名の孤児達が、寝食を共にしている。
そこに年上だろうと誰だろうと食って掛かる金髪の少年がいた。
一度キレたら手が付けられない。暴走機関車のように相手を殴り倒す。
同い年だったら、三人同時に相手にしても負けないくらい強い。
まわりは皆、彼のことを「狂犬」のクリスと呼んだ。
もっとも、見た目は狂犬とは程遠い。
確かに性格は荒々しいのだが、顔は驚くほど可愛らしいのだ。
「可愛い」、「女の子みたい」と言われるのが嫌で、髪は奇抜なモヒカンに刈り上げているが、美少女のような容姿は隠しきれていない。
双子の妹のジェニーも美少女だったが、狂犬の可愛らしさには敵わない。
美少年はその際立つ容姿のために、その後数多のトラブルに巻き込まれていくことになる。
「おい、アレックス。ジェニーはどこだ! あいつに指一本触れたら、ゆるさねーぞ」
狂犬の怒号が孤児院の地下室に響く。
凄まじい剣幕の彼を見て、五歳上の不良リーダーは、ゲズな笑みを浮かべた。
「おっと、それ以上近づくな。妹を傷物にしたくなければな」
「どこまでも、卑怯な奴め。正々堂々と戦いやがれ!」
「あぁ、卑怯で結構だ」
涼しい顔で、アレックスは返す。部屋の奥のテレビスクリーンには彼の妹、ジェニーの姿が写っている。手足をタオルで拘束されて、猿ぐつわをはめられている。服は捲り上げられて、いつ犯されてもおかしくない無防備な姿をさらしていた。
「ジェニーを返せ。オレに何の恨みがあるって言うんだ」
「恨み? そんなものはない。だって、可愛い女の子がいるんだ。どんな手を使っても手に入れたいと思うのが、男の性じゃないか」
アレックスのいやらしい視線が、狂犬を舐めまわす。
「そんなの通らねーよ。とにかくジェニーはオレが守るんだ。その為だったらなんだってする」
「なんだってする? ふふふ」
アレックスは黒い笑みを浮かべる。まるでその言葉をずっと待っていたかのように。
「ああ。妹を解放しろ。オレはなんだってするから、妹にだけは指一本触れるな」
「せっかくの人質を解放かぁ。まぁ、してやらないこともないな。交換条件はあるが」
あまりに簡単に解放を言い出したアレックスに、狂犬は警戒する。
「交換条件? どうせろくでもないんだろ?」
「さすが、狂犬クリス。察しがいいな。それで、受けるのか。受けないのか。オレとしては、お前の妹を慰み者にするくらい訳ないんだぜ。オレはやる男だ。お前も知っているだろう」
クリスは奥歯をかみしめる。アレックスは孤児院で一番危ない男だ。どういうわけか分からないが、孤児院の院長も彼の言いなりで、やりたい放題なのだ。
喧嘩では勝てる自信がある。でも、人質を取られていてはどうしようもない。
しかも拘束されているのは、彼の唯一の家族のジェニーなのだ。
「分かった。受ける。妹を解放するなら、お前のくそったれな条件を全て受けてやるよ」
背に腹は代えられない。どんなハンデの喧嘩でも、何とか切り抜けてみせる。
骨の一本や二本は折られるかもしれないが、殺されることはないだろう。
決意に満ちたクリスの言葉を聞いて、アレックスは勝ち誇ったようにのけぞった。
「へへっ。ようやく穢れを知らない最高の獲物が手に入ったぜ。初めて見た時から、ずっと目を付けていたんだぜ。強引にねじ伏せて、エッチな女に変えてやろうと決めていたんだ。チンポを入れられてよがり狂う最高の女にな」
「てめぇ。約束が違うじゃねーか。ジェニーには何もしないって」
「勘違いするな。オレは極上の女にしか興味がない。お前の妹程度に欲情するわけないだろう」
「お前、何を言って……」
混乱するクリスに、アレックスは舌なめずりしながら近づいていく。
そして、ぞっとするほど低い声で、クリスの耳元にささやいた。
「女になるのは、ジェニーじゃない。お前だよ。女の悦びを骨の髄に染み渡るまで教え込んでやる。これから時間をかけてたっぷりとな」
豪華絢爛な入学式が終わり、クリスティーナは自室に戻ってほっと一息をついた。
「どうもああいう場所は落ち着かないんだよね」
誰もいない空間で安心したせいか、思わず本音が漏れる。
セーラー服を着させられていることに加えて、そもそもセレモニーの類が苦手なのだ。
育ってきた環境を考えると、そう思うのも当然と言える。
比較的裕福な育ちの葵と違って、クリスティーナは貧しい出だ。
乗り越えてきた修羅場の数も葵の比ではない。
思えば騙され続けた人生だ。騙さなければ、騙される。絶対に誰も信用してはいけない。
(でも、仕方ないよ。だって、僕に選択肢なんて最初からなかったんだから)
そう心で呟いて、彼女は青く澄んだ空を見上げる。
この空は、きっと彼女の故郷のイギリスまで続いている。
(そうだ。あの日までは僕だって男の子として、大人になると思っていたんだ。今だって、諦めてはいないんだけど)
クリスティーナは少年時代を思い出す。
まだ、苦しくも自由のあったあの頃のことを。
それが全て、あの日を境に変わってしまった。
昔の自分が、今の自分を見たらどう反応するだろう。
クリスティーナの頭に、懐かしい田園風景が浮かんできた。
「ねぇジェニー……。僕はどうすればよかったのかな」
独り言を言う彼女の目には、決壊寸前まで涙が貯め込まれていた。
ーーーーー
クリスティーナの思い出の場所は、広い野原の真ん中にポツンとある孤児院だ。
時代錯誤の古びたレンガ造りの建物は、夏は暑く、冬は寒い。
引き取り手のない不幸な四十九名の孤児達が、寝食を共にしている。
そこに年上だろうと誰だろうと食って掛かる金髪の少年がいた。
一度キレたら手が付けられない。暴走機関車のように相手を殴り倒す。
同い年だったら、三人同時に相手にしても負けないくらい強い。
まわりは皆、彼のことを「狂犬」のクリスと呼んだ。
もっとも、見た目は狂犬とは程遠い。
確かに性格は荒々しいのだが、顔は驚くほど可愛らしいのだ。
「可愛い」、「女の子みたい」と言われるのが嫌で、髪は奇抜なモヒカンに刈り上げているが、美少女のような容姿は隠しきれていない。
双子の妹のジェニーも美少女だったが、狂犬の可愛らしさには敵わない。
美少年はその際立つ容姿のために、その後数多のトラブルに巻き込まれていくことになる。
「おい、アレックス。ジェニーはどこだ! あいつに指一本触れたら、ゆるさねーぞ」
狂犬の怒号が孤児院の地下室に響く。
凄まじい剣幕の彼を見て、五歳上の不良リーダーは、ゲズな笑みを浮かべた。
「おっと、それ以上近づくな。妹を傷物にしたくなければな」
「どこまでも、卑怯な奴め。正々堂々と戦いやがれ!」
「あぁ、卑怯で結構だ」
涼しい顔で、アレックスは返す。部屋の奥のテレビスクリーンには彼の妹、ジェニーの姿が写っている。手足をタオルで拘束されて、猿ぐつわをはめられている。服は捲り上げられて、いつ犯されてもおかしくない無防備な姿をさらしていた。
「ジェニーを返せ。オレに何の恨みがあるって言うんだ」
「恨み? そんなものはない。だって、可愛い女の子がいるんだ。どんな手を使っても手に入れたいと思うのが、男の性じゃないか」
アレックスのいやらしい視線が、狂犬を舐めまわす。
「そんなの通らねーよ。とにかくジェニーはオレが守るんだ。その為だったらなんだってする」
「なんだってする? ふふふ」
アレックスは黒い笑みを浮かべる。まるでその言葉をずっと待っていたかのように。
「ああ。妹を解放しろ。オレはなんだってするから、妹にだけは指一本触れるな」
「せっかくの人質を解放かぁ。まぁ、してやらないこともないな。交換条件はあるが」
あまりに簡単に解放を言い出したアレックスに、狂犬は警戒する。
「交換条件? どうせろくでもないんだろ?」
「さすが、狂犬クリス。察しがいいな。それで、受けるのか。受けないのか。オレとしては、お前の妹を慰み者にするくらい訳ないんだぜ。オレはやる男だ。お前も知っているだろう」
クリスは奥歯をかみしめる。アレックスは孤児院で一番危ない男だ。どういうわけか分からないが、孤児院の院長も彼の言いなりで、やりたい放題なのだ。
喧嘩では勝てる自信がある。でも、人質を取られていてはどうしようもない。
しかも拘束されているのは、彼の唯一の家族のジェニーなのだ。
「分かった。受ける。妹を解放するなら、お前のくそったれな条件を全て受けてやるよ」
背に腹は代えられない。どんなハンデの喧嘩でも、何とか切り抜けてみせる。
骨の一本や二本は折られるかもしれないが、殺されることはないだろう。
決意に満ちたクリスの言葉を聞いて、アレックスは勝ち誇ったようにのけぞった。
「へへっ。ようやく穢れを知らない最高の獲物が手に入ったぜ。初めて見た時から、ずっと目を付けていたんだぜ。強引にねじ伏せて、エッチな女に変えてやろうと決めていたんだ。チンポを入れられてよがり狂う最高の女にな」
「てめぇ。約束が違うじゃねーか。ジェニーには何もしないって」
「勘違いするな。オレは極上の女にしか興味がない。お前の妹程度に欲情するわけないだろう」
「お前、何を言って……」
混乱するクリスに、アレックスは舌なめずりしながら近づいていく。
そして、ぞっとするほど低い声で、クリスの耳元にささやいた。
「女になるのは、ジェニーじゃない。お前だよ。女の悦びを骨の髄に染み渡るまで教え込んでやる。これから時間をかけてたっぷりとな」
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