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第一章 封印の書
【1.6】転生者の運命
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「ねぇレイモンド君。起きたばっかりで悪いんだけど、お姉さんの話を聞いてくれる?」
オレが危害を及ぼす相手出ないと分かったからだろうか、それともオレがまだ見た目六歳の少年だからだろうか。
パセリはお姉さんという部分を強調して、頭を撫でてくる。
完全に弟扱いをされている感じだ。
そんなパセリに対抗意識をメラメラと燃やすのが、黙っていれば美人のバジルだ。
「この金髪チンチクリン。サイ……レイモンド様はボクのレイモンド様だぞ。あげないんだぞ」
そう言いながら、オレの服の袖を引っ張ってくる。
「いや、オレはお前のものではないのだが」
「そんな、ひどいです。三千年間愛を確かめ合った仲じゃないですか」
「知らん。そんな妄想、オレは知らん」
そんなオレを目を細めて見ているのが、人語を操る黒猫だ。
「ずいぶんとモテモテじゃの」
いや、どこがだよ。オレは子ども扱いされるのも、愛をねつ造されるのもまっぴらなのだが。
でもパセリが改まって話をしたいというからには、何かわけがあるのだろう。
「パセリさん? 話って何ですか?」
「そうね。お父さんとお母さんを呼んでから、本題に映りましょう」
バタバタと音を立てながら、全員で階段を降りていく。
こうして、父ハリス、母マルサ、黒猫、パセリ、バジルと自分、六人の重要な会議が開かれることになった。
ーーーー
金貨がテーブルに山積みされていた。三人家族が一生遊んで暮らせるだけの額だ。
「レイモンドを連れていくですと!? それにこんな大金お受け取りできません」
「いくらA級魔術士パセリ様直々のお話とはいえ、魔術も剣術もないあの子を連れ出すなんて」
ハリスとマルサはヒステリックに反対する。
「レイモンド君は私が責任をもって、英才教育をします。彼には才能があるからです」
パセリは強い口調で言い切る。才能という言葉を聞いて、目をぱちくりさせるハリス。
「パセリ様と違って、息子には才能は一切ございません」
「それは本心ですか?」
パセリがギロリとハリスをにらむ。
「本当はもうお気付きなのではないですか? 息子さんが転生者であるということに」
急に何を言い出すのかとビックリしたハリスに対し、パセリは続ける。
「あなた方のお気持ちはよく分かります。これまでレイモンド君が転生者であることを隠してきたことも。そして、敢えて才能を目覚めさせないように、情報を与えなかったことも」
マルサはため息をつく。
「そこまでご存知なら、なおさらなぜこの子を連れて行こうとされるのですか? 拾った子供とはいえ、私たちにとっては大事な家族です。たとえ血がつながっていなくても、大事な家族なのです」
「どういうこと?」と聞くと、ハリスはいつになく真面目な顔をした。
「レイモンド。信じてほしいのだが、お前は転生者かもしれないが、オレたちの子供だ。誰よりも大切に思っている」そう言って、肩を強く引き寄せた。
「本当のことを言ってあげられなくて、ごめんなさい。でも、あなたを失いたくなくて……」
マルサも涙ながらに訴える。
いまだ話が掴めずにいると、黒猫が丁寧に説明してくれた。
「転生者はどこからともなく、乳児の状態で現れるのじゃ。その半数は数日以内に餓死する。運よく拾われても、十才まで大きくなれるのは稀じゃ。自分の魔力が暴走して自滅することが多いのじゃ」
「すると、オレもすぐ死ぬと?」
「お主は転生者の中でも例外じゃが、普通はそうじゃろな」
「それに人間に転生できるとも限らないのよ、ねぇパパ」
そう言ってパセリは黒猫を小突く。
「いや、わしも最初は人間として転生したのじゃがな……。まぁそれは置いておいても、転生者として無事成人できる者は限られているのじゃ」
「今生き残っている転生者は、あたしたちだけなの」
それを聞いて、オレはパセリが昔の仲間を語るとき、涙を浮かべていたことを思い出す。そうか、彼女の仲間――確か全員転生者――はもうこの世にいないのか。
「ハリスさん、マルサさん。レイモンド君はこの町に残ったところで無事とは限りません。むしろ、転生者の事情を知っている私たちだからこそ、力になれると考えられませんか?」
それを聞いて、ハリスもマルサも「なるほど一理ある」と頷いた。
「それに、白装束の連中に不穏な動きがあるといううわさもあります」
「転生者狩りを行っているあの集団ですか?」
「えぇ。最近は少しでも転生者の疑いのある子どもは殺されていると聞きます。既にこの近くの村までやつらは迫っています」
パセリの言葉に、ハリスとマルサは青ざめた。
「ですから、私たちにレイモンド君をお任せください」
それを聞いたオレの両親は、決心したのか「よろしくお願いします」と深々と頭を下げた。
ーーーー
あとがき:コメント等お気軽に頂けると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
レベル表示が欲しい等、バトルをもっと深く、逆にあっさりに等、リクエストがあればできるだけ反映いたします。
オレが危害を及ぼす相手出ないと分かったからだろうか、それともオレがまだ見た目六歳の少年だからだろうか。
パセリはお姉さんという部分を強調して、頭を撫でてくる。
完全に弟扱いをされている感じだ。
そんなパセリに対抗意識をメラメラと燃やすのが、黙っていれば美人のバジルだ。
「この金髪チンチクリン。サイ……レイモンド様はボクのレイモンド様だぞ。あげないんだぞ」
そう言いながら、オレの服の袖を引っ張ってくる。
「いや、オレはお前のものではないのだが」
「そんな、ひどいです。三千年間愛を確かめ合った仲じゃないですか」
「知らん。そんな妄想、オレは知らん」
そんなオレを目を細めて見ているのが、人語を操る黒猫だ。
「ずいぶんとモテモテじゃの」
いや、どこがだよ。オレは子ども扱いされるのも、愛をねつ造されるのもまっぴらなのだが。
でもパセリが改まって話をしたいというからには、何かわけがあるのだろう。
「パセリさん? 話って何ですか?」
「そうね。お父さんとお母さんを呼んでから、本題に映りましょう」
バタバタと音を立てながら、全員で階段を降りていく。
こうして、父ハリス、母マルサ、黒猫、パセリ、バジルと自分、六人の重要な会議が開かれることになった。
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金貨がテーブルに山積みされていた。三人家族が一生遊んで暮らせるだけの額だ。
「レイモンドを連れていくですと!? それにこんな大金お受け取りできません」
「いくらA級魔術士パセリ様直々のお話とはいえ、魔術も剣術もないあの子を連れ出すなんて」
ハリスとマルサはヒステリックに反対する。
「レイモンド君は私が責任をもって、英才教育をします。彼には才能があるからです」
パセリは強い口調で言い切る。才能という言葉を聞いて、目をぱちくりさせるハリス。
「パセリ様と違って、息子には才能は一切ございません」
「それは本心ですか?」
パセリがギロリとハリスをにらむ。
「本当はもうお気付きなのではないですか? 息子さんが転生者であるということに」
急に何を言い出すのかとビックリしたハリスに対し、パセリは続ける。
「あなた方のお気持ちはよく分かります。これまでレイモンド君が転生者であることを隠してきたことも。そして、敢えて才能を目覚めさせないように、情報を与えなかったことも」
マルサはため息をつく。
「そこまでご存知なら、なおさらなぜこの子を連れて行こうとされるのですか? 拾った子供とはいえ、私たちにとっては大事な家族です。たとえ血がつながっていなくても、大事な家族なのです」
「どういうこと?」と聞くと、ハリスはいつになく真面目な顔をした。
「レイモンド。信じてほしいのだが、お前は転生者かもしれないが、オレたちの子供だ。誰よりも大切に思っている」そう言って、肩を強く引き寄せた。
「本当のことを言ってあげられなくて、ごめんなさい。でも、あなたを失いたくなくて……」
マルサも涙ながらに訴える。
いまだ話が掴めずにいると、黒猫が丁寧に説明してくれた。
「転生者はどこからともなく、乳児の状態で現れるのじゃ。その半数は数日以内に餓死する。運よく拾われても、十才まで大きくなれるのは稀じゃ。自分の魔力が暴走して自滅することが多いのじゃ」
「すると、オレもすぐ死ぬと?」
「お主は転生者の中でも例外じゃが、普通はそうじゃろな」
「それに人間に転生できるとも限らないのよ、ねぇパパ」
そう言ってパセリは黒猫を小突く。
「いや、わしも最初は人間として転生したのじゃがな……。まぁそれは置いておいても、転生者として無事成人できる者は限られているのじゃ」
「今生き残っている転生者は、あたしたちだけなの」
それを聞いて、オレはパセリが昔の仲間を語るとき、涙を浮かべていたことを思い出す。そうか、彼女の仲間――確か全員転生者――はもうこの世にいないのか。
「ハリスさん、マルサさん。レイモンド君はこの町に残ったところで無事とは限りません。むしろ、転生者の事情を知っている私たちだからこそ、力になれると考えられませんか?」
それを聞いて、ハリスもマルサも「なるほど一理ある」と頷いた。
「それに、白装束の連中に不穏な動きがあるといううわさもあります」
「転生者狩りを行っているあの集団ですか?」
「えぇ。最近は少しでも転生者の疑いのある子どもは殺されていると聞きます。既にこの近くの村までやつらは迫っています」
パセリの言葉に、ハリスとマルサは青ざめた。
「ですから、私たちにレイモンド君をお任せください」
それを聞いたオレの両親は、決心したのか「よろしくお願いします」と深々と頭を下げた。
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