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【プロローグ】解脱と転生
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このお話はバトルがあるため、若干の暴力描写を含みます。
R15設定になっておりますので、あらかじめご了承ください。
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ねぇ、そこの君。
そこでスマホかパソコンの画面を見つめている、そこのお兄さんとお姉さん。
異世界転生ものを探しているんだろ?
ちょうどいい。せっかく来たんだ。オレの話を聞いてくれよ。
実はさ、今さっきトラックに轢かれて死んだんだよ。
「はっ」て顔されても困るけど。
死んだのは五分前くらいかな。
言わば、出来立てほやほやの死人ってわけ。
死んだら冷たいんじゃないかって、野暮な突っ込みはなしね。
いや、話としてはかっこ悪くてね。
子供を助けようとして飛び込んだとか、真っ当な理由があったわけじゃないんだ。
横断歩道を渡っているときに、轢かれて死んだ。ただ、それだけ。
一応青信号だったとは思うけど。ドラマも何もない。
ダサい? オレだってそう思うよ。
できれば、タイタニックみたいなヒーロー的な死に方をしたかった。
ま、今となってしまえばどうでもいい話だけど。
よい子の皆さんは、オレみたいにバカな死に方、くれぐれもしないでくれよ。
それで、今はどうしているかって?
予想通りと言うべきか、当然というべきか、天国って場所にいるらしい。
真っ白で何もないだだっ広い空間が、ここが異界の地であることを教えてくれる。
昔の人の言っていた天国は雲の上にあるって話も、あながち間違いではないんだね。
別に感傷的になっているわけではない。これでも太っ腹人間を自負しているからね。
死なんて些細なことは気にしない。
うん、少なくとも死んでみたら、実際大したことなかったし。
痛みも一瞬だったから記憶にない。
全てがスローモーションになって、バンと体の中から大きな音がして、それで事切れた。
ただそれだけのこと。
なんで、こんなにあっさりしているかって?
理由は簡単。目の前にもっと大きな問題があるからだ。
天国と思って向かった先で待っていたのは、メイド少女だった。
頭にカチューシャを付けた、黒髪の美少女だ。
天国にいるってだけでただ者ではないんだろうけど、何者なんだ?
「お帰りなさい、ご主人様。輪廻からの解脱、お祝い申し上げます」
キョトンとするオレに向かって、なおも上目遣いで話しかけてくる。
「どうかなさいましたか、ご主人様? 善行をお積みになって、三千年ぶりにお戻りになられたから、お忘れになってしまわれたのですか?」
三千年ぶり? オレのモットーは太く短くだ。人生だって駆け足で終わらせてきた。
いや、終わらせようとして終わらせたわけではないけれども。
だいたい三千年なんて、人間の寿命じゃない。
混乱するオレに矢継ぎ早に話しかけてくるメイド。なぜメイドなのだ。しかも丁寧語なのだ。
疑問は沢山浮かぶが、基本的な質問をした。
「あなたが神様? なぜオレのことをご主人様と?」
「大昔のことですから、覚えていらっしゃらなくても仕方ありませんね。はい、私は神、ゼウスでございます。そして同時に、ご主人様の下僕、卑しいメイドでございます」
「……要するに、オレは神よりも偉いのか?」
「その通りでございます。お声をおかけするのもおこがましいと申しますか、とにかく、とても、とーっても偉いのでございます」
両手を上げて大きな円を描くと、なぜかエッヘンと誇らしげに咳払いをする。オレのメイドであることに、誇りを覚えている、という感じだ。いや、誇られても困るのだが。
「オレはただの人間だぞ」
「なんと、そこまでお忘れに……。ですが、あいにく説明をする時間はございません。盗聴防止魔法をかけてございますが、万が一我々の接触を察知されたら、刺客に殺されてしまうのです。魂――アストラス体そのもの――を破壊されてしまうのです。特に力を封印された、ご主人様の御身のままでは」
「刺客? 殺される? 封印?」
そう言いかけたところで、申し訳なさそうにメイドは言葉を挟む。焦っているようだ。
「急ぎなのです。ご主人様が、我ら最後の希望です。ユフラテスという異世界に転生していただきたいのです」
「異世界に? 今すぐ?」
「はい。この世の危機なのです」
切羽詰まった顔を見て、決断する。何事かよく分からないが、重要なのだろう。オレはメイドに向かって微笑み、うなずいた。
「よく分からないが、承知した。」
神様は胸をなでおろすと、微かにほほ笑んだ。
「ありがとうございます。すべきことは、いずれお分かりになるはずです。私としては、ご主人様の力の一部を開放し、乳児として転生させることくらいです」
「そうか、ではよろしく頼む」
「ありがとうございます。またご無事でお会いできるのを楽しみにしております。行ってらっしゃいませ、ご主人様」
そう言ってメイドが杖を振り上げると、意識が遠のいた。
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あとがき:コメント等お気軽に頂けると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
R15設定になっておりますので、あらかじめご了承ください。
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ねぇ、そこの君。
そこでスマホかパソコンの画面を見つめている、そこのお兄さんとお姉さん。
異世界転生ものを探しているんだろ?
ちょうどいい。せっかく来たんだ。オレの話を聞いてくれよ。
実はさ、今さっきトラックに轢かれて死んだんだよ。
「はっ」て顔されても困るけど。
死んだのは五分前くらいかな。
言わば、出来立てほやほやの死人ってわけ。
死んだら冷たいんじゃないかって、野暮な突っ込みはなしね。
いや、話としてはかっこ悪くてね。
子供を助けようとして飛び込んだとか、真っ当な理由があったわけじゃないんだ。
横断歩道を渡っているときに、轢かれて死んだ。ただ、それだけ。
一応青信号だったとは思うけど。ドラマも何もない。
ダサい? オレだってそう思うよ。
できれば、タイタニックみたいなヒーロー的な死に方をしたかった。
ま、今となってしまえばどうでもいい話だけど。
よい子の皆さんは、オレみたいにバカな死に方、くれぐれもしないでくれよ。
それで、今はどうしているかって?
予想通りと言うべきか、当然というべきか、天国って場所にいるらしい。
真っ白で何もないだだっ広い空間が、ここが異界の地であることを教えてくれる。
昔の人の言っていた天国は雲の上にあるって話も、あながち間違いではないんだね。
別に感傷的になっているわけではない。これでも太っ腹人間を自負しているからね。
死なんて些細なことは気にしない。
うん、少なくとも死んでみたら、実際大したことなかったし。
痛みも一瞬だったから記憶にない。
全てがスローモーションになって、バンと体の中から大きな音がして、それで事切れた。
ただそれだけのこと。
なんで、こんなにあっさりしているかって?
理由は簡単。目の前にもっと大きな問題があるからだ。
天国と思って向かった先で待っていたのは、メイド少女だった。
頭にカチューシャを付けた、黒髪の美少女だ。
天国にいるってだけでただ者ではないんだろうけど、何者なんだ?
「お帰りなさい、ご主人様。輪廻からの解脱、お祝い申し上げます」
キョトンとするオレに向かって、なおも上目遣いで話しかけてくる。
「どうかなさいましたか、ご主人様? 善行をお積みになって、三千年ぶりにお戻りになられたから、お忘れになってしまわれたのですか?」
三千年ぶり? オレのモットーは太く短くだ。人生だって駆け足で終わらせてきた。
いや、終わらせようとして終わらせたわけではないけれども。
だいたい三千年なんて、人間の寿命じゃない。
混乱するオレに矢継ぎ早に話しかけてくるメイド。なぜメイドなのだ。しかも丁寧語なのだ。
疑問は沢山浮かぶが、基本的な質問をした。
「あなたが神様? なぜオレのことをご主人様と?」
「大昔のことですから、覚えていらっしゃらなくても仕方ありませんね。はい、私は神、ゼウスでございます。そして同時に、ご主人様の下僕、卑しいメイドでございます」
「……要するに、オレは神よりも偉いのか?」
「その通りでございます。お声をおかけするのもおこがましいと申しますか、とにかく、とても、とーっても偉いのでございます」
両手を上げて大きな円を描くと、なぜかエッヘンと誇らしげに咳払いをする。オレのメイドであることに、誇りを覚えている、という感じだ。いや、誇られても困るのだが。
「オレはただの人間だぞ」
「なんと、そこまでお忘れに……。ですが、あいにく説明をする時間はございません。盗聴防止魔法をかけてございますが、万が一我々の接触を察知されたら、刺客に殺されてしまうのです。魂――アストラス体そのもの――を破壊されてしまうのです。特に力を封印された、ご主人様の御身のままでは」
「刺客? 殺される? 封印?」
そう言いかけたところで、申し訳なさそうにメイドは言葉を挟む。焦っているようだ。
「急ぎなのです。ご主人様が、我ら最後の希望です。ユフラテスという異世界に転生していただきたいのです」
「異世界に? 今すぐ?」
「はい。この世の危機なのです」
切羽詰まった顔を見て、決断する。何事かよく分からないが、重要なのだろう。オレはメイドに向かって微笑み、うなずいた。
「よく分からないが、承知した。」
神様は胸をなでおろすと、微かにほほ笑んだ。
「ありがとうございます。すべきことは、いずれお分かりになるはずです。私としては、ご主人様の力の一部を開放し、乳児として転生させることくらいです」
「そうか、ではよろしく頼む」
「ありがとうございます。またご無事でお会いできるのを楽しみにしております。行ってらっしゃいませ、ご主人様」
そう言ってメイドが杖を振り上げると、意識が遠のいた。
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あとがき:コメント等お気軽に頂けると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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