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20「勘違い」
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皆さん覚えておいでだろうか。
ここはBLゲーム『運命のあなたと…』の世界であり、俺はそのゲームの主人公であると同時に、このままいけば待っているであろうBなL展開を回避すべく考え付いた作戦、その名も『攻略対象同士をくっつけてしまおう作戦』を。
え?久しぶりに聞いた気がする?
ま、まあ、それは気のせいという事にして横に置いておくとして。
とにかく、俺が言いたいのは、確かにBなL展開を回避するのも大事な事だが、『今』の俺はこの世界で生きている人間で聖カーニア学園に通う『学生』でもあるという事だ。
「こんな所で会うとはな、石留椿。そういえば、お前は俺と同じく主席で入学していたな。であれば、尚の事この俺に何か聞きたい事があるのではないか?」
………何か外野から聞こえたような気がするが気にしないでくれ。話を続けよう。
では、ここで一つ質問だ。皆さんは『学生の本分』とは何か知っているだろうか?
答えは、ご存知の通り『勉強する事』だ。
そして、当たり前だが『学生』は『学校』で『勉強』をする人間の事を指し、そして『学校』は『学生』に往々にして『試験』を受けさせるものだ。
「何を遠慮している?もしや恥ずかしがっているのか?なんだ、可愛いところもあるじゃないか」
………何か幻聴が聞こえたような気がしただろうが無視してくれ。
「良いだろう。黙って着いていってやろうではないか」
つまり、
「ははは、そうかそうか。そんなに急ぐほど俺と早く話がしたいか」
何が言いたいかというと、
「~~~~いい加減にして下さい、燈堂先輩!」
うるっさいわ!どこまで着いてくる気だよ!し、か、も!誰があんたと早く話したいって?ふざけんな!『中間試験』の日程が掲示板に貼り出されてたから見てた所に、あんたが性懲りもなく話しかけてきたから無視したのに、なぁにが「恥ずかしがってるのか?(ニヤリ)」だ!無視したんだよ分かれよ!早足だったのも、あんたから逃げてたからだよ!勝手にポジティブ脳内変換して追い掛け回される俺の身にもなれよ!超怖かったんですけど!?
「? 何がだ?」
「何がだ、じゃないですよ!一言も答えてないのに何自分の都合の良いように解釈してるんですか!」
「何を言っている。この俺が間違えるはずがないだろう。なんせ、俺は頭脳明晰だからな」
「………」
うわー…自分で頭脳明晰とか言っちゃうんだ…
呆れすぎて開いた口が塞がらないとはまさにこういう状況を言うのだろう。
「それで?この俺をこんな人気のない所に連れてきて、どんな話をする気だったんだ?」
「はい?」
人気のない所?
何を言ってるんだと周りを見る。
…あれ?何で周りに誰もいないんだ?ていうか、ここどこだ?
燈堂先輩から逃げる事に気を取られて、いつの間にか人気のない、しかも知らない所に来てしまっていた事に漸く気が付く。
「とぼける必要はないぞ?つれない素振りを見せていたのも、俺の気を引きたかったからだろう?」
ぐいっと腰を引き寄せられ、顔を近付けてくる相手に、全身が総毛立つ。
はあ!?何言ってるんだコイツは!あんたの気を引きたかったから冷たい態度を取ってた?気色悪い事を言うな!そんな訳ないだろ!俺は心の底から、現在進行形で嫌がってるんだよ!!
「ちょ、離れて下さい!」
密着寸前の距離に腕を突っ張って離れようとしたが、逆に両腕を掴まれ、背後の壁に縫い止められてしまった。
「ふむ、何をそんなに嫌がっているんだ?この俺が構ってやっているんだぞ?もっと素直に喜べば良いだろう」
「だから、素直に嫌がってるでしょうが!」
どこ見てんだよ!その目は節穴か!
「やれやれ、ここまで強情な人間は見た事が……いや、一人いたな」
そういえばという様に燈堂先輩がそう言った瞬間、
「燈堂!貴様、学園の風紀を乱すなと一体何度言えば分かる!」
聞き覚えのある声が燈堂先輩の背後から聞こえて。
この声は…
「噂をすればだな。相変わらず頭の固い奴だな、野分は。これのどこが風紀を乱していると言うんだ?」
の、野分先輩…!!
正に神がかったタイミングで現れた救世主に、思わず涙が出そうになった。
「前にも言っただろう、燈堂。ここは神聖な学び舎だ。不純な行為をこの私が見過ごす訳がないだろう」
その時、燈堂先輩の影に隠れていた俺と目が合うと、野分先輩はふっと安心させるようにその緑眼を細めた。
だが直ぐにキッと眼差しを鋭くすると、ツカツカと近寄り、燈堂先輩の肩を掴んで俺から引き剥がしてくれた。
「何をするんだ、野分」
「貴様こそ、嫌がっている相手に何をしているんだ」
「嫌がっている?お前こそ何を言ってるんだ。そもそも、俺をここに連れてきたのは石留椿だぞ」
イラッ。だーかーらー!それはあんたが勝手に勘違いして着いてきただけで──
「それは貴様の勘違いだ」
「…何だと?」
「聞こえなかったのか?それは貴様の勘違いだと言ったんだ」
野分先輩が溜め息を吐きながら、眼鏡の真ん中をくいっと人差し指で押し上げる。
「目撃した生徒たちに話は聞いた。貴様は嫌がり逃げる石留君を追いかけ回していたそうだな」
「は、何を言っているんだ。この俺がわざわざ話しかけてやったんだぞ?嫌がって逃げる理由がどこにあるんだ」
「はぁ…相変わらず御目出度い頭だな、貴様は。…なぜ貴様のような奴が毎回首位なんだ」
ぼそりと言った野分先輩の言葉に、燈堂先輩が「ほお?」と片眉を上げる。
「その御目出度い頭とやらの俺に毎回負けて万年二位の奴はどこの誰だったろうな?」
その言葉に、今度は野分先輩の片眉がピクリと上がる。
「はっ、やはり御目出度い頭だな。そんな低俗な事しか言えん人間を他にどう表現したら良いか、是非ご教授願いたいな」
「何だと?」
バチバチと散る火花が見えるかのような無言の睨み合いをすると、次の瞬間、
「やはり貴様は気に入らん!次の中間試験こそ貴様を完膚なきまでに叩きのめしてやる!」
「それは俺の台詞だ!せいぜい無駄な努力をするんだな!次も勝つのは俺だ!バーカ!」
「なっ、バカは貴様だろうが!この阿呆!」
ぎゃあぎゃあと始まった程度の低い言い合いに、俺は何とも言えずに唖然とする。
…助けてくれた野分先輩には悪いけど、今のうちに退散しようかな
*****
「………い、おい」
「え?」
横からした声に、はっと我に返って顔を向けると、紫色の鋭い目付きと目が合った。
持ち主の名は紫麻秋臣くん。初登校した日から、何だかんだで俺の隣の席に座り続けている。
クラスメイトたちはまだ遠巻きに見ているけれど、当の紫麻くんに暴れたりとか特に迷惑行為を起こす素振りはなく、好きな時に登校してきては俺の隣の席に座り、腕を枕にして先生の声を子守唄代わりに居眠りをし、好きな時に帰るというある意味不良らしく過ごしている。
紫麻くんと話したのもあの日だけで、今日に至るまで話しかける事も話しかけてくる事もなかった……のだが、
「あ、ごめん紫麻くん。考え事してて気付かなかった。どうかした?」
なぜ今日は話しかけてきたのだろう?
その事を不思議に思いながら聞き返すと、紫麻くんはじっと俺の眼を見ながら言った。
「……お前、あの生徒会長とできてんのか?」
「…は?」
今、何と?
あまりの予想外の質問過ぎて、目が点になってしまう。
そんな俺の反応をどう受け取ったのか、紫麻くんが苛立ったようにチッと舌打ちし「どうなんだよ」と聞いてきたので、俺は慌てて全力で否定した。
「いや、いやいやいや無い無い。無いから。あり得ないから」
あんな…って言ったらダメかもしれないけど、ゲームで見た時から俺とは合わない、苦手なタイプだと思っていただけに、天地がひっくり返っても絶対にあり得ない。
「…ならいい」
俺の拒絶っぷりが伝わったのか、紫麻くんはそう言うと、席を立った。
「どこ行くんだ?」
もう直ぐ授業始まるけど…
「サボる」
振り向きもせずにそう短く答えると、紫麻くんは教室を出ていった。
行っちゃった…。まあ、いいか。俺は次の授業の準備をしよう。
にしても、さっきは災難だったな俺。
お昼ご飯も珍しく友広に断られたから一人で食べたので、いつもより早く食べ終わってしまって。
余った時間をどう過ごそうか考えてる時に、通りかかった掲示板に『中間試験』の日程が貼り出されてる事に気を取られて、奴の接近に気付けなかったし。
ああ、でも野分先輩が助けてくれたのは幸運だったな。
正に救世主としか言い様のないタイミングだった。
…あれ?なのに、俺、野分先輩にお礼言ってなくない?それどころか奴と置き去りに………よ、よし。次会った時に絶対お礼言おう。そうしよう。
…あ、そういえば。次会った時といえば、友広だ。
今日の昼休みに、例の作戦のためにもう一度攻略対象の人物たちの情報を聞こうと思っていたのだが、生憎と断られてしまった。
急いでいないと言えば嘘になるが、友広にも予定というものがある。
いくらお助けキャラだとはいえ、頼りすぎてしまっては悪い気がする。
ここはやはり、
「自分で考えないとダメかぁ…」
問題は、まだ『誰と誰をどのタイミングでくっつけるか』を決めていない事だ。
…うーむ、俺の都合でくっついて貰うのだからせめてものお詫びとして相性は考慮しなければと思う。
だが、相性…相性か…。
俺としては真っ先に誰かとくっついて欲しいのは、燈堂先輩である。
何故かって? 単純に鬱陶し……これ以上勘違いで絡まれたくないからだ。
とは言え、俺は燈堂先輩の事は友広から聞いた事くらいしか知らない。
何が好きで、嫌いで、誰とよく話すのかという交遊関係も分からない。
どうしたものか…
ここはBLゲーム『運命のあなたと…』の世界であり、俺はそのゲームの主人公であると同時に、このままいけば待っているであろうBなL展開を回避すべく考え付いた作戦、その名も『攻略対象同士をくっつけてしまおう作戦』を。
え?久しぶりに聞いた気がする?
ま、まあ、それは気のせいという事にして横に置いておくとして。
とにかく、俺が言いたいのは、確かにBなL展開を回避するのも大事な事だが、『今』の俺はこの世界で生きている人間で聖カーニア学園に通う『学生』でもあるという事だ。
「こんな所で会うとはな、石留椿。そういえば、お前は俺と同じく主席で入学していたな。であれば、尚の事この俺に何か聞きたい事があるのではないか?」
………何か外野から聞こえたような気がするが気にしないでくれ。話を続けよう。
では、ここで一つ質問だ。皆さんは『学生の本分』とは何か知っているだろうか?
答えは、ご存知の通り『勉強する事』だ。
そして、当たり前だが『学生』は『学校』で『勉強』をする人間の事を指し、そして『学校』は『学生』に往々にして『試験』を受けさせるものだ。
「何を遠慮している?もしや恥ずかしがっているのか?なんだ、可愛いところもあるじゃないか」
………何か幻聴が聞こえたような気がしただろうが無視してくれ。
「良いだろう。黙って着いていってやろうではないか」
つまり、
「ははは、そうかそうか。そんなに急ぐほど俺と早く話がしたいか」
何が言いたいかというと、
「~~~~いい加減にして下さい、燈堂先輩!」
うるっさいわ!どこまで着いてくる気だよ!し、か、も!誰があんたと早く話したいって?ふざけんな!『中間試験』の日程が掲示板に貼り出されてたから見てた所に、あんたが性懲りもなく話しかけてきたから無視したのに、なぁにが「恥ずかしがってるのか?(ニヤリ)」だ!無視したんだよ分かれよ!早足だったのも、あんたから逃げてたからだよ!勝手にポジティブ脳内変換して追い掛け回される俺の身にもなれよ!超怖かったんですけど!?
「? 何がだ?」
「何がだ、じゃないですよ!一言も答えてないのに何自分の都合の良いように解釈してるんですか!」
「何を言っている。この俺が間違えるはずがないだろう。なんせ、俺は頭脳明晰だからな」
「………」
うわー…自分で頭脳明晰とか言っちゃうんだ…
呆れすぎて開いた口が塞がらないとはまさにこういう状況を言うのだろう。
「それで?この俺をこんな人気のない所に連れてきて、どんな話をする気だったんだ?」
「はい?」
人気のない所?
何を言ってるんだと周りを見る。
…あれ?何で周りに誰もいないんだ?ていうか、ここどこだ?
燈堂先輩から逃げる事に気を取られて、いつの間にか人気のない、しかも知らない所に来てしまっていた事に漸く気が付く。
「とぼける必要はないぞ?つれない素振りを見せていたのも、俺の気を引きたかったからだろう?」
ぐいっと腰を引き寄せられ、顔を近付けてくる相手に、全身が総毛立つ。
はあ!?何言ってるんだコイツは!あんたの気を引きたかったから冷たい態度を取ってた?気色悪い事を言うな!そんな訳ないだろ!俺は心の底から、現在進行形で嫌がってるんだよ!!
「ちょ、離れて下さい!」
密着寸前の距離に腕を突っ張って離れようとしたが、逆に両腕を掴まれ、背後の壁に縫い止められてしまった。
「ふむ、何をそんなに嫌がっているんだ?この俺が構ってやっているんだぞ?もっと素直に喜べば良いだろう」
「だから、素直に嫌がってるでしょうが!」
どこ見てんだよ!その目は節穴か!
「やれやれ、ここまで強情な人間は見た事が……いや、一人いたな」
そういえばという様に燈堂先輩がそう言った瞬間、
「燈堂!貴様、学園の風紀を乱すなと一体何度言えば分かる!」
聞き覚えのある声が燈堂先輩の背後から聞こえて。
この声は…
「噂をすればだな。相変わらず頭の固い奴だな、野分は。これのどこが風紀を乱していると言うんだ?」
の、野分先輩…!!
正に神がかったタイミングで現れた救世主に、思わず涙が出そうになった。
「前にも言っただろう、燈堂。ここは神聖な学び舎だ。不純な行為をこの私が見過ごす訳がないだろう」
その時、燈堂先輩の影に隠れていた俺と目が合うと、野分先輩はふっと安心させるようにその緑眼を細めた。
だが直ぐにキッと眼差しを鋭くすると、ツカツカと近寄り、燈堂先輩の肩を掴んで俺から引き剥がしてくれた。
「何をするんだ、野分」
「貴様こそ、嫌がっている相手に何をしているんだ」
「嫌がっている?お前こそ何を言ってるんだ。そもそも、俺をここに連れてきたのは石留椿だぞ」
イラッ。だーかーらー!それはあんたが勝手に勘違いして着いてきただけで──
「それは貴様の勘違いだ」
「…何だと?」
「聞こえなかったのか?それは貴様の勘違いだと言ったんだ」
野分先輩が溜め息を吐きながら、眼鏡の真ん中をくいっと人差し指で押し上げる。
「目撃した生徒たちに話は聞いた。貴様は嫌がり逃げる石留君を追いかけ回していたそうだな」
「は、何を言っているんだ。この俺がわざわざ話しかけてやったんだぞ?嫌がって逃げる理由がどこにあるんだ」
「はぁ…相変わらず御目出度い頭だな、貴様は。…なぜ貴様のような奴が毎回首位なんだ」
ぼそりと言った野分先輩の言葉に、燈堂先輩が「ほお?」と片眉を上げる。
「その御目出度い頭とやらの俺に毎回負けて万年二位の奴はどこの誰だったろうな?」
その言葉に、今度は野分先輩の片眉がピクリと上がる。
「はっ、やはり御目出度い頭だな。そんな低俗な事しか言えん人間を他にどう表現したら良いか、是非ご教授願いたいな」
「何だと?」
バチバチと散る火花が見えるかのような無言の睨み合いをすると、次の瞬間、
「やはり貴様は気に入らん!次の中間試験こそ貴様を完膚なきまでに叩きのめしてやる!」
「それは俺の台詞だ!せいぜい無駄な努力をするんだな!次も勝つのは俺だ!バーカ!」
「なっ、バカは貴様だろうが!この阿呆!」
ぎゃあぎゃあと始まった程度の低い言い合いに、俺は何とも言えずに唖然とする。
…助けてくれた野分先輩には悪いけど、今のうちに退散しようかな
*****
「………い、おい」
「え?」
横からした声に、はっと我に返って顔を向けると、紫色の鋭い目付きと目が合った。
持ち主の名は紫麻秋臣くん。初登校した日から、何だかんだで俺の隣の席に座り続けている。
クラスメイトたちはまだ遠巻きに見ているけれど、当の紫麻くんに暴れたりとか特に迷惑行為を起こす素振りはなく、好きな時に登校してきては俺の隣の席に座り、腕を枕にして先生の声を子守唄代わりに居眠りをし、好きな時に帰るというある意味不良らしく過ごしている。
紫麻くんと話したのもあの日だけで、今日に至るまで話しかける事も話しかけてくる事もなかった……のだが、
「あ、ごめん紫麻くん。考え事してて気付かなかった。どうかした?」
なぜ今日は話しかけてきたのだろう?
その事を不思議に思いながら聞き返すと、紫麻くんはじっと俺の眼を見ながら言った。
「……お前、あの生徒会長とできてんのか?」
「…は?」
今、何と?
あまりの予想外の質問過ぎて、目が点になってしまう。
そんな俺の反応をどう受け取ったのか、紫麻くんが苛立ったようにチッと舌打ちし「どうなんだよ」と聞いてきたので、俺は慌てて全力で否定した。
「いや、いやいやいや無い無い。無いから。あり得ないから」
あんな…って言ったらダメかもしれないけど、ゲームで見た時から俺とは合わない、苦手なタイプだと思っていただけに、天地がひっくり返っても絶対にあり得ない。
「…ならいい」
俺の拒絶っぷりが伝わったのか、紫麻くんはそう言うと、席を立った。
「どこ行くんだ?」
もう直ぐ授業始まるけど…
「サボる」
振り向きもせずにそう短く答えると、紫麻くんは教室を出ていった。
行っちゃった…。まあ、いいか。俺は次の授業の準備をしよう。
にしても、さっきは災難だったな俺。
お昼ご飯も珍しく友広に断られたから一人で食べたので、いつもより早く食べ終わってしまって。
余った時間をどう過ごそうか考えてる時に、通りかかった掲示板に『中間試験』の日程が貼り出されてる事に気を取られて、奴の接近に気付けなかったし。
ああ、でも野分先輩が助けてくれたのは幸運だったな。
正に救世主としか言い様のないタイミングだった。
…あれ?なのに、俺、野分先輩にお礼言ってなくない?それどころか奴と置き去りに………よ、よし。次会った時に絶対お礼言おう。そうしよう。
…あ、そういえば。次会った時といえば、友広だ。
今日の昼休みに、例の作戦のためにもう一度攻略対象の人物たちの情報を聞こうと思っていたのだが、生憎と断られてしまった。
急いでいないと言えば嘘になるが、友広にも予定というものがある。
いくらお助けキャラだとはいえ、頼りすぎてしまっては悪い気がする。
ここはやはり、
「自分で考えないとダメかぁ…」
問題は、まだ『誰と誰をどのタイミングでくっつけるか』を決めていない事だ。
…うーむ、俺の都合でくっついて貰うのだからせめてものお詫びとして相性は考慮しなければと思う。
だが、相性…相性か…。
俺としては真っ先に誰かとくっついて欲しいのは、燈堂先輩である。
何故かって? 単純に鬱陶し……これ以上勘違いで絡まれたくないからだ。
とは言え、俺は燈堂先輩の事は友広から聞いた事くらいしか知らない。
何が好きで、嫌いで、誰とよく話すのかという交遊関係も分からない。
どうしたものか…
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