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3「世界観」
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荷物を置いて、久しぶりに帰ってきた自分の部屋を見回す。
目が覚めたあの後、一週間かけて色々な検査を受けた結果『問題無し』という診断結果が下されたので、めでたく本日無事退院を果たし、こうして家に帰ってくる事ができたのだ。
ちなみに今世の自分の家は豪邸と呼ばれる類いのもので、それを見た瞬間、そういえばゲームでの『俺』は有名企業の社長を父親に持つ次男坊であるという設定だったなと思い出した。
「さてと…」
ベッドに腰かけ、一つ息を吐きだす。
改めて、状況を整理しようと思う。
まず、この世界はBLゲーム『運命のあなたと…』であり、俺はゲームの主人公の『石留椿』に転生してしまったらしい。
…そう『BL』ゲームの世界に、だ。
「しかもよりにもよって主人公とか…」
思わず、大きなため息が落とされる。
別にこの世界がBLゲームでも乙女ゲームでもギャルゲームでも構わない。だが、問題は『俺』が『主人公』であるというこの一点だけだ。
前世を思い出した今、俺の性格は正直な所そちらに引っ張られている。そして、前世の俺はどちらかというと消極的な性格で、前に出るよりは進んで後ろに下がって出来ればそのまま背景に溶け込みたいと思うほどのものだった。
だから、『主人公』なんていう嫌でもスポットライトが当たる役なんて御免被りたいのが本音だ。
「ていうか、確かこのゲームって…」
前世では姉がこのゲームにいたくご執心だったので、無理矢理攻略に付き合わされた記憶が蘇る。
このゲームは乙女ゲームやギャルゲームと同じく、全寮制の男子校に通う主人公が攻略対象たちを攻略していくというストーリーだったはずだ。
残念な事に俺はBLゲームなんてものには興味が無かったので攻略対象たちの名前までは覚えていないが、大まかな容姿は覚えている。
…と、そうだ。ここで一旦このゲームの設定…というかこの世界の世界観をおさらいしておこうと思う。
この世界は現代魔法社会で、前世でいうところの『科学』の代わりに『魔法』が進歩して、ありとあらゆる物が『魔力』で動く現代社会だ。
だから、この世界で生きる人々は皆総じて『魔力』を持っており、その属性は『水』『火』『風』『光』『闇』の5つに分類される。
数の傾向としては、『水』属性が一番多く、二番目に『火』属性、三番目に『風』属性、四番目に『光』属性、五番目に『闇』属性といった具合である。
…え?俺はどの属性を持っているのかって?それは…
ちらりと姿見に映る今世の自分を見やる。前世と変わらない真っ黒な髪に、真っ黒な瞳。
先程も言ったように、魔力は五属性に分けられる。
そして、誰が何の属性を持っているのかは髪と眼の色を見れば一目瞭然なのがこの世界での常識だ。
髪と眼の色が青系統であれば『水』属性である。というように『火』ならば赤系統、『風』ならば緑系統、『光』ならば黄系統、『闇』ならば紫系統となるのだ。
…そんな中で、一つ、例外の色がある。それは『黒』の系統色。
通常、一人につき一属性の魔力を持つ。だが、稀に複数の魔力を持って生まれてくる者がいる。
二属性の魔力を持って生まれたならば『灰色』、三属性ならば『濃灰色』、四属性ならば『黒灰色』、五属性ならば『黒色』。
ここまで言えばもう分かるだろう。そう、俺は全ての属性の魔力を有しているのだ。
「これだけ見たらすっごいチートなんだけどなぁ…」
恐ろしいほどのイケメンで、高身長(前世は160センチ後半だった)で、イケボで、おまけに人類史上三人目となるらしい全属性持ち。
BLゲームの主人公という点を除けば、優良物件だろう。
だが、ここはBLゲームの世界。そして、俺はそのゲームの主人公。
ついでに言えば、サラッと前述した全寮制の男子校の入学式が明後日に迫っている。
そして、俺は前世、姉に付き合わされたおかげでこのゲームがどんなストーリーで進むのかを大まかにだが知っている。
だからだろうか。正直言って、不安だ。不安しかない。
どれくらいかというと、まだレベル1なのに問答無用でボス戦が始まってしまった時くらいに。要するに準備不足なのである。
いっそ今からでも入学を辞めようかと思ったが、ゲームの舞台となる全寮制の男子校は国内屈指の名門難関校であるらしく、合格が決まった時両親が手放しで喜んでくれた事を思うとどうしても言い出せなかった。
…よって、最早決定事項である高校への入学の事実は受け入れた上で、どうにか待ち受けているであろうBなL展開を回避するというミッションをこなさなければならない。
「はぁ…前途多難だ」
…果たして、俺はこの世界でやっていけるのだろうか?
目が覚めたあの後、一週間かけて色々な検査を受けた結果『問題無し』という診断結果が下されたので、めでたく本日無事退院を果たし、こうして家に帰ってくる事ができたのだ。
ちなみに今世の自分の家は豪邸と呼ばれる類いのもので、それを見た瞬間、そういえばゲームでの『俺』は有名企業の社長を父親に持つ次男坊であるという設定だったなと思い出した。
「さてと…」
ベッドに腰かけ、一つ息を吐きだす。
改めて、状況を整理しようと思う。
まず、この世界はBLゲーム『運命のあなたと…』であり、俺はゲームの主人公の『石留椿』に転生してしまったらしい。
…そう『BL』ゲームの世界に、だ。
「しかもよりにもよって主人公とか…」
思わず、大きなため息が落とされる。
別にこの世界がBLゲームでも乙女ゲームでもギャルゲームでも構わない。だが、問題は『俺』が『主人公』であるというこの一点だけだ。
前世を思い出した今、俺の性格は正直な所そちらに引っ張られている。そして、前世の俺はどちらかというと消極的な性格で、前に出るよりは進んで後ろに下がって出来ればそのまま背景に溶け込みたいと思うほどのものだった。
だから、『主人公』なんていう嫌でもスポットライトが当たる役なんて御免被りたいのが本音だ。
「ていうか、確かこのゲームって…」
前世では姉がこのゲームにいたくご執心だったので、無理矢理攻略に付き合わされた記憶が蘇る。
このゲームは乙女ゲームやギャルゲームと同じく、全寮制の男子校に通う主人公が攻略対象たちを攻略していくというストーリーだったはずだ。
残念な事に俺はBLゲームなんてものには興味が無かったので攻略対象たちの名前までは覚えていないが、大まかな容姿は覚えている。
…と、そうだ。ここで一旦このゲームの設定…というかこの世界の世界観をおさらいしておこうと思う。
この世界は現代魔法社会で、前世でいうところの『科学』の代わりに『魔法』が進歩して、ありとあらゆる物が『魔力』で動く現代社会だ。
だから、この世界で生きる人々は皆総じて『魔力』を持っており、その属性は『水』『火』『風』『光』『闇』の5つに分類される。
数の傾向としては、『水』属性が一番多く、二番目に『火』属性、三番目に『風』属性、四番目に『光』属性、五番目に『闇』属性といった具合である。
…え?俺はどの属性を持っているのかって?それは…
ちらりと姿見に映る今世の自分を見やる。前世と変わらない真っ黒な髪に、真っ黒な瞳。
先程も言ったように、魔力は五属性に分けられる。
そして、誰が何の属性を持っているのかは髪と眼の色を見れば一目瞭然なのがこの世界での常識だ。
髪と眼の色が青系統であれば『水』属性である。というように『火』ならば赤系統、『風』ならば緑系統、『光』ならば黄系統、『闇』ならば紫系統となるのだ。
…そんな中で、一つ、例外の色がある。それは『黒』の系統色。
通常、一人につき一属性の魔力を持つ。だが、稀に複数の魔力を持って生まれてくる者がいる。
二属性の魔力を持って生まれたならば『灰色』、三属性ならば『濃灰色』、四属性ならば『黒灰色』、五属性ならば『黒色』。
ここまで言えばもう分かるだろう。そう、俺は全ての属性の魔力を有しているのだ。
「これだけ見たらすっごいチートなんだけどなぁ…」
恐ろしいほどのイケメンで、高身長(前世は160センチ後半だった)で、イケボで、おまけに人類史上三人目となるらしい全属性持ち。
BLゲームの主人公という点を除けば、優良物件だろう。
だが、ここはBLゲームの世界。そして、俺はそのゲームの主人公。
ついでに言えば、サラッと前述した全寮制の男子校の入学式が明後日に迫っている。
そして、俺は前世、姉に付き合わされたおかげでこのゲームがどんなストーリーで進むのかを大まかにだが知っている。
だからだろうか。正直言って、不安だ。不安しかない。
どれくらいかというと、まだレベル1なのに問答無用でボス戦が始まってしまった時くらいに。要するに準備不足なのである。
いっそ今からでも入学を辞めようかと思ったが、ゲームの舞台となる全寮制の男子校は国内屈指の名門難関校であるらしく、合格が決まった時両親が手放しで喜んでくれた事を思うとどうしても言い出せなかった。
…よって、最早決定事項である高校への入学の事実は受け入れた上で、どうにか待ち受けているであろうBなL展開を回避するというミッションをこなさなければならない。
「はぁ…前途多難だ」
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