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2「異世界転生」
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石留椿とは、前世で俺の姉がプレイしていたBLゲーム『運命のあなたと…』に出てくる主人公の名前であり、今世での俺の名前である。
「まじかよ…」
思わず、頭を抱える。
そうだ。確か前世の俺は大学受験を数日後に控えたあの日、コンビニへ行こうと家を出て横断歩道を渡ろうとしたところで信号無視して突っ込んできた車に轢かれたのだ。
そして、今世でも同じく車に轢かれ、そのショックでこうして前世の記憶が蘇ったらしい。
…事故に遭ってからどれくらい経ったのかは分からないが、病院にいる理由は分かった。だが、いま俺がこうして前世を思い出したという事は…
「俺、死んだのか…」
改めて自分の死を認識しても、不思議と気分は落ち着いていた。
「それにしても、BLゲームの主人公かぁ」
ここがゲームの世界だという事にも驚きだが、よりにもよってBLゲームとは…
「姉ちゃん、このゲームめっちゃハマってたなぁ」
確か、姉の推し?とやらが主人公で、「主人公の照れ顔がすごく可愛いのー!」とか言って俺に熱く語ってきたっけ。
その様を思い出して、思わずクスッと笑みが零れる。
それと同時に扉が開く音がして、看護師さんが来たのかと思って咄嗟にそちらに目を向けると、そこには赤い髪を肩まで伸ばした綺麗な女性が髪と同色の目をまん丸にして俺を見ていた。
「………」
「えっと、おはよう?母さ──」
「椿!!!」
俺が言い終わるよりも早く女性──今世での母さんが、手に持っていた荷物を投げ捨てて勢いよく俺に抱き着いた。
「ちょっ、苦しいって母さんっ」
「椿…ああ椿…良かった、目が覚めたのね…っ」
ぐすぐすと耳元で嗚咽を漏らしながら涙を流す母さんの姿に、どれだけ心配してくれていたのか分かって、今世でも親不孝者にならなくて良かったと思った。
「良かった、本当に良かった…!あなた三日も眠っていたのよ?」
「え、そんなに?」
「そうよ!もうっ、本当に心配したんだから!」
「…ごめん、母さん」
俺を抱きしめる母さんにおずおずとそう言うと、母さんは驚いたように俺を見た。
それもそうだろう。何せ、事故に遭う前の俺は両親とはあまり話していないどころか顔もあまり合わせていなかった。
前世を思い出した今なら思春期特有のものだったのだろうと分かるが、今思い返してみても俺の態度は悪かったと思う。
でも、それでも、こうして心配をしてくれていて、目が覚めた事を喜んでくれている。そんな母さんに今までのような態度はもう取りたくなかった。
「心配かけてごめん、母さん。それから、ありがとう」
「椿…」
呆気にとられたように呆然と俺を見つめる母さん。
まあ、数日前までツンケンして真っ盛りだった息子の思春期が目が覚めたら終わっていたのだから、戸惑わない方がおかしいよな。
でも「前世を思い出したからなんです」なんて言える訳ないし…
取り敢えず、誤魔化すように笑って見せたのだった。
「まじかよ…」
思わず、頭を抱える。
そうだ。確か前世の俺は大学受験を数日後に控えたあの日、コンビニへ行こうと家を出て横断歩道を渡ろうとしたところで信号無視して突っ込んできた車に轢かれたのだ。
そして、今世でも同じく車に轢かれ、そのショックでこうして前世の記憶が蘇ったらしい。
…事故に遭ってからどれくらい経ったのかは分からないが、病院にいる理由は分かった。だが、いま俺がこうして前世を思い出したという事は…
「俺、死んだのか…」
改めて自分の死を認識しても、不思議と気分は落ち着いていた。
「それにしても、BLゲームの主人公かぁ」
ここがゲームの世界だという事にも驚きだが、よりにもよってBLゲームとは…
「姉ちゃん、このゲームめっちゃハマってたなぁ」
確か、姉の推し?とやらが主人公で、「主人公の照れ顔がすごく可愛いのー!」とか言って俺に熱く語ってきたっけ。
その様を思い出して、思わずクスッと笑みが零れる。
それと同時に扉が開く音がして、看護師さんが来たのかと思って咄嗟にそちらに目を向けると、そこには赤い髪を肩まで伸ばした綺麗な女性が髪と同色の目をまん丸にして俺を見ていた。
「………」
「えっと、おはよう?母さ──」
「椿!!!」
俺が言い終わるよりも早く女性──今世での母さんが、手に持っていた荷物を投げ捨てて勢いよく俺に抱き着いた。
「ちょっ、苦しいって母さんっ」
「椿…ああ椿…良かった、目が覚めたのね…っ」
ぐすぐすと耳元で嗚咽を漏らしながら涙を流す母さんの姿に、どれだけ心配してくれていたのか分かって、今世でも親不孝者にならなくて良かったと思った。
「良かった、本当に良かった…!あなた三日も眠っていたのよ?」
「え、そんなに?」
「そうよ!もうっ、本当に心配したんだから!」
「…ごめん、母さん」
俺を抱きしめる母さんにおずおずとそう言うと、母さんは驚いたように俺を見た。
それもそうだろう。何せ、事故に遭う前の俺は両親とはあまり話していないどころか顔もあまり合わせていなかった。
前世を思い出した今なら思春期特有のものだったのだろうと分かるが、今思い返してみても俺の態度は悪かったと思う。
でも、それでも、こうして心配をしてくれていて、目が覚めた事を喜んでくれている。そんな母さんに今までのような態度はもう取りたくなかった。
「心配かけてごめん、母さん。それから、ありがとう」
「椿…」
呆気にとられたように呆然と俺を見つめる母さん。
まあ、数日前までツンケンして真っ盛りだった息子の思春期が目が覚めたら終わっていたのだから、戸惑わない方がおかしいよな。
でも「前世を思い出したからなんです」なんて言える訳ないし…
取り敢えず、誤魔化すように笑って見せたのだった。
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