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呼び鈴が鳴ったのは、晩ご飯を食べ終わって後片付けをしている時だった。
時刻は19時半過ぎ。こんな時間に一体誰だろう。大家さんだろうか。
そう思って玄関に向かおうとすると、先輩に止められた。
「待って、俺が行くよ。つずきくんは休んでて」
「え、でも」
「良いから良いから」
止める間もなく先輩は玄関に向かうと、のぞき穴を覗き込んだ。
「眼鏡をかけた男の人だね。年は20代前半ってとこかな。暗いからよく見えないけど美人系だね」
眼鏡をかけた20代前半の綺麗な男の人……あ、もしかして
「知り合い?」
「あ、はい。多分──」
「月漉、居るのか?」
淡々とした、冷たささえ感じる声が扉の向こうから聞こえてくる。
「あの、大丈夫です。開けて下さい…兄さんなので」
「そっか。…はいはーい、今出まーす」
ガチャリと扉が開く。
「………誰だ君は」
「こんばんは、つずきくんのお兄さん」
そこには、ビニール袋を持ってギロリと先輩を睨む兄さんが立っていた。
********
「…………」
「…………」
「…………」
どうして、こんな事になっているんだろう。
取り敢えず中に入って貰ったけれど…
ローテーブルに向かい合って座る先輩と兄さんを見守るようにベッドに座る俺。そんな状況だけど、ひとまずそれぞれを紹介する事にした。
「あの…に──穂鷹さん、紹介します。この人は俺の学校の先輩で、今日は看病しに来てくれたんです」
「泉水千秋です。つずきくんとはいつも仲良くさせて貰ってます」
「先輩、この人は──」
「西条穂鷹、月漉の義兄だ」
「…!ちょ、」
「何を驚いている。別に隠し立てするような事でもないだろう」
「だからって初対面の人にいきなり話すような事じゃないと思います」
「僕は気にしない」
「俺は気にするんで──ゲホゲホッ!」
声を荒げたはずみに、また激しく咳き込む。
「大丈夫?」
「すみ、ませ…」
背中をさすられ、少し落ち着く。
「…熱は高いのか」
「昼は結構高かったですけど、今は下がってきてますよ」
「昼?学校はどうしたんだ」
「つずきくんが心配で早退しました」
「それが何か?」と笑顔で問う先輩の質問に、兄さんは眉をキツく寄せたけれどそれに対して何かを言う事はなかった。
「…それで、月漉。僕に用事とは何だったんだ」
「え…」
あれ、そういえばどうして兄さんはここに来たのだろう。
電話した時、てっきり俺が来られないと分かったから日を改めようという意味で「また連絡する」と言ったのだと思っていたのだけれど…
そういえばその連絡がきたような覚えもない。
「あ、あの渡したいものがあって…」
ベッドから立ち上がってクローゼットを開ける。そこから取り出したラッピングされた紙袋を兄さんに渡した。
「…これは?」
「誕生日、プレゼントです」
あの日、先輩と一緒に選んで貰ったシックな色合いのマフラー。
本当はもう少し先なのだけれどその時期は兄さんは忙しくなるし、これからの季節に役立つ物を贈ったらどうだろうという先輩の提案で決めたものだった。
途切れ途切れにそう説明する俺の話を、兄さんは何の感情も読み取れない表情で静かに聞いていた。
時刻は19時半過ぎ。こんな時間に一体誰だろう。大家さんだろうか。
そう思って玄関に向かおうとすると、先輩に止められた。
「待って、俺が行くよ。つずきくんは休んでて」
「え、でも」
「良いから良いから」
止める間もなく先輩は玄関に向かうと、のぞき穴を覗き込んだ。
「眼鏡をかけた男の人だね。年は20代前半ってとこかな。暗いからよく見えないけど美人系だね」
眼鏡をかけた20代前半の綺麗な男の人……あ、もしかして
「知り合い?」
「あ、はい。多分──」
「月漉、居るのか?」
淡々とした、冷たささえ感じる声が扉の向こうから聞こえてくる。
「あの、大丈夫です。開けて下さい…兄さんなので」
「そっか。…はいはーい、今出まーす」
ガチャリと扉が開く。
「………誰だ君は」
「こんばんは、つずきくんのお兄さん」
そこには、ビニール袋を持ってギロリと先輩を睨む兄さんが立っていた。
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「…………」
「…………」
「…………」
どうして、こんな事になっているんだろう。
取り敢えず中に入って貰ったけれど…
ローテーブルに向かい合って座る先輩と兄さんを見守るようにベッドに座る俺。そんな状況だけど、ひとまずそれぞれを紹介する事にした。
「あの…に──穂鷹さん、紹介します。この人は俺の学校の先輩で、今日は看病しに来てくれたんです」
「泉水千秋です。つずきくんとはいつも仲良くさせて貰ってます」
「先輩、この人は──」
「西条穂鷹、月漉の義兄だ」
「…!ちょ、」
「何を驚いている。別に隠し立てするような事でもないだろう」
「だからって初対面の人にいきなり話すような事じゃないと思います」
「僕は気にしない」
「俺は気にするんで──ゲホゲホッ!」
声を荒げたはずみに、また激しく咳き込む。
「大丈夫?」
「すみ、ませ…」
背中をさすられ、少し落ち着く。
「…熱は高いのか」
「昼は結構高かったですけど、今は下がってきてますよ」
「昼?学校はどうしたんだ」
「つずきくんが心配で早退しました」
「それが何か?」と笑顔で問う先輩の質問に、兄さんは眉をキツく寄せたけれどそれに対して何かを言う事はなかった。
「…それで、月漉。僕に用事とは何だったんだ」
「え…」
あれ、そういえばどうして兄さんはここに来たのだろう。
電話した時、てっきり俺が来られないと分かったから日を改めようという意味で「また連絡する」と言ったのだと思っていたのだけれど…
そういえばその連絡がきたような覚えもない。
「あ、あの渡したいものがあって…」
ベッドから立ち上がってクローゼットを開ける。そこから取り出したラッピングされた紙袋を兄さんに渡した。
「…これは?」
「誕生日、プレゼントです」
あの日、先輩と一緒に選んで貰ったシックな色合いのマフラー。
本当はもう少し先なのだけれどその時期は兄さんは忙しくなるし、これからの季節に役立つ物を贈ったらどうだろうという先輩の提案で決めたものだった。
途切れ途切れにそう説明する俺の話を、兄さんは何の感情も読み取れない表情で静かに聞いていた。
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