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義理仲の想い1
しおりを挟む『俺も…好きです』
震える声で、告げる。
『嬉しい』
笑って、抱き締めてくれた。
これ以上はないと思える程、温かかった。
『…ごめん』
でも、温もりは直ぐに俺のものではなくなった。
『他に好きな子ができた』
───ああ、やっぱり。
遠退いていく。伸ばしても伸ばしても、この手が届くことはない。
消えてしまった『 』。
頬を伝う涙の意味を、貴方が知ることはないのだろう。
*********
「やっほー」
片手をあげ、脳天気面で現れた相手に脊髄反射で告げる。
「お引き取り下さい」
「はーい、ストップストップ」
間髪入れずドアの隙間に足を入れられ、企みは呆気なく阻止された。
「何で、家を、知ってるんですか…っ」
それでも構わず俺はドアを閉めようと奮闘する。
が、そんな俺の必死な抵抗など意に介さず、相手───泉水先輩はドアに手をかけると余裕綽々な笑みを崩す事なく玄関への侵入を果たした。
「えー?山ちゃん先生が快く教えてくれたから?」
「は?何で山本先生…が…」
「おっと」
くらりと力が抜けかけた体を寸でのところで支えられる。
「ああほら、風邪引いてるんでしょ?無理しちゃダメだよ」
「だれのせい…だと」
「さあ、誰のせいだろーね。…ん、ちょっと高いね」
「! 何す…!」
「はいはい、直ぐだからじっとしててね。お邪魔しまーす」
額に手を当てられたかと思えば、次の瞬間、俺は軽々と先輩に横抱きにされていた。
そのままベッドまで運ばれ、あっという間に布団の中に入れられる。
「薬は?もう飲んだ?」
「まだ、ですけど…」
「食欲は?」
「あんまり……って、そうじゃなくて。何しに来たんですか。学校はどうし──ゲホッ、ゲホゲホッ!」
「説明はあと。ほらあったかくして寝て。台所借りるね」
咳き込む俺の背中を撫でながらそう言う先輩の声がどこか遠くに聞こえる。
どうやら熱が上がってきたようだ。
「寝るまで傍についててあげるから」
子供扱いするなと、言いたかったけれど
額に貼られた冷たい心地良さと、一定のリズムで刻まれる先輩の手の振動に
瞼はどんどん重くなっていったのだった。
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