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しおりを挟む「すみません、お待たせしました」
「いーよ、大丈夫。ていうかまだ時間前だし。じゃ、行こっか」
並んで駅前へと歩き出す。
「お兄さんの誕生日プレゼントだっけ?」
「あ、はい」
「どんなのにするか決めてる?」
「いえ、まだです。色々見てから決めようと思って」
「そっか」
休日、待ち合わせ、一緒に出かける、などという如何にもな単語が揃っている状況だが、これは断じてそういう感じのものではない。
先日、何気なく兄の誕生日プレゼントに悩んでいると零したらこうなったのだ。
「何かあれだね。これってデート──」
「じゃないですから」
「ええー…」
「ほら、着きましたよ」
項垂れる背中を無視して、モールの案内図を見る。
無難なところだと服、アクセサリー、小物、手帳といったところだろうか。
「お兄さんって社会人なの?」
「大学生です。5つ離れてるので」
「んー…取り敢えず近い所から順に回ってみようか」
「そうですね…」
チラリと時計を確認する。
約束の時間まで、あと二時間。
******
「どう?何かしっくりくるもの有った?」
あれから二時間経って、アクセサリーと雑貨屋を見て回ったがこれといった物は未だに見つかっていなかった。
連れ回して申し訳なく思いつつも、時計に目をやるとそろそろ時間だという事に気が付く。
「あ、あの」
「ん?何か気になるのあった?」
「そうじゃないんですけど…あの、何か食べませんか。今日付き合って貰ったお礼に奢るので」
「それは別に気にしなくて良いけど…そうだね、ちょっと早いけど何か食べよっか」
ここのモールのフードコートは地下にある。エスカレーターで下れば食欲を刺激する食べ物の匂いが鼻孔に広がる。
「何にす──」
「あれっ、千秋くん?」
「…藤原?」
「わ、偶然!千秋くんも来てたんだ」
「まあね。藤原は…デート?」
「え、やだっ、違うよ。この子は弟」
「初めてまして先輩、愛生の弟の琉生です」
その声に、俺はそこにもう一人いた事に漸く気が付いた。
「こんなとこで会うなんて偶然だね、西条」
「知り合い?」
「あ…はい、同じクラスの」
藤原琉生。爽やかな見た目と人当たりの良い性格で、クラス内でも何かと目立つ存在。
常に誰かに話し掛けられているし、教師たちからの受けも良い絵に描いたような優等生だ。
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