ヒースの傍らに

碧月 晶

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秋模様になってきた空を見ながら、ぼんやりと物思いにふける。

「何を哀愁漂わせてるんだ」
「秋だからねぇ」
「そういうものか?」
「そういうもんだよ」
「…西条君と何かあったのか?」
「何で?」
「何となくそう思っただけだ。深い理由はない」

そう言うと「さあ話せ」と言わんばかりに逞は前の席のイスを陣取った。
こういうところは一年の頃から全然変わってないな。

「何を笑ってるんだ」
「んーん、別に。逞は良いお父さんになるだろうなって思ってただけ」
「ほめ言葉と受け取って良いのか、それは」
「うん」
「それで、喧嘩でもしたのか」
「いや、それはないよ。ただ…」
「ただ?」

うーむ…どう言ったものか。

「ねえ、逞はさ。誰にも会いたくないって思うのはどんな時だと思う?」
「何だいきなり」
「いいからいいから」
「…そうだな。言い争ったりして顔を会わせづらい時じゃないか?」

まあ、考えられるのはそんなところか。

「後は…」
「後は?」
「…一人になりたい時に、そう思うかもしれないな」

一人になりたい時…

「で、これが何か関係あるのか」
「あると言えばあるし、無いと言えばないかな」
「どっちだ」
「俺にもよく分かんないんだよねー」

ごめんね。せっかく相談に乗ってくれようとしてくれたのに。

「分かったらまた相談するから、その時はまた宜しくね。おとーさん」
「お前の親父になった覚えはないぞ」
「頼りにしてるって事だよー」
「なら最初からそう言えば良いだろ」

だって。

こんな照れくさい事、冗談でも挟まないと言えないよ。


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