Estrella

碧月 晶

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「──分かっとるって。せやから謝っとるやんけ。…え。いや…そうやないけど…。今?こうの見舞いに来とる。…ん、分かった。ほな待っとるわ」

 

扉越しに聞こえてきた話声にまたしても飛んでいた意識が引き戻される。

 
「やっぱり怒られたんだな」
「まあ…いつもよりも小言は少なかったわ」
「電話にしておいて正解だったな」

 
ぐったりと椅子に座る砂酉。相当絞られたのだろう。

電話越しに怒られている様がありありと想像できて笑ってしまう。

 
「なに笑とんねん」
「いや?あんだけ泣いてたのに、今は違う意味で先輩に泣かされてんだなって思っただけだ」
「お前…また人の黒歴史を掘り返しよって。要らん事まで思い出さすなや」
「無理だろ」

 
何か言い返したいのだろうが、如何せんその通り過ぎてぐうの音も出ないといった様子にやっぱり笑ってしまう。

 
「で?先輩今から来んのか?」
「ああ…この近くで仕事しとったみたいで、終わったから直ぐ来る言うてたわ」
「そうか」

 
じゃあ、久しぶりに部活のメンバーが揃うのか。

 
「なら先輩待ってる間に昔話に花でも咲かせるか」
「却下や」
「それは聞けねえな。棄却させて貰う」
「…このヤクザもんが」
「褒めんなよ」
「褒めてへんわ」

 
お互いにまた笑い合って、視線をまた一箇所に戻す。

 
「そういえば、オレもいっこ思い出したわ」
「何だよ」
「お前ら、あん時イチャイチャしとったやろ」
「はあ?」

 
ああ、そういえばあの時コイツも居たんだった。それを聞くって事はそれを見てたって事で…

やべえ、今猛烈な後悔に襲われてる。

 
「言うとくけど、人が居んのにそういう事しとったそっちが悪いんやからな」
「………」
「人が落ち込んどる時にええ御身分やったなぁ?」
「…………」
「まあ、そこしか見てへんから安心し」

 
何が安心なんだよ…。



 
長い溜め息を吐き出して、砂酉の視線から逃げるように外を見る。

 

窓の外はさっきよりも黒い曇天が広がっていた───。
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