164 / 179
6
しおりを挟む「あ~腹減ったー…」
真琴の呟きを皮切りに、各々鳴り始める腹の虫。
「お腹空いたねぇ。もう日も暮れるし、そろそろお開きにしよっか。続きはまた明日って事で」
「さんせー!」
途端に元気よく手を挙げる真琴に「現金な奴…」と砂酉が呟く。
それに祭月が苦笑する。
「お疲れ様、マコちゃん。はいこれ、頑張ったマコちゃんにはご褒美をあげてしんぜよう~」
クッキーの小包を差し出され、真琴の目が輝く。
「おおーかたじけない!」
「どういたしまして」
「うんまぁあ!」
「はい、那月君も。コーヒー味だからあんまり甘くないと思うよ」
「え、ああ…」
受け取って、そういえば前に甘いものが得意ではないと言った事を思い出す。
…覚えてたのか
そんな些細な事を覚えていてくれた事に好意を感じると共に、さっき祭月に俺が何が好きなんだと聞いた時に嬉しそうに笑っていたのが唐突に思い出されて
ああ、こういう事かと思った。
言わなくても自分を知っていてくれる、理解していてくれる。
そして、そうあるために自分の事を聞いてくれる。
それはとても心地良くて、嬉しいと、感じた。
「じゃ、また明日なー」
「うん、バイバーイ」
黒田さんが運転する車の後部座席から手を振って遠ざかっていく真琴と、仏頂面ではあるが軽く手を挙げていた砂酉を
マンションの下で祭月と共に見送った。
車が角を曲がって見えなくなると、隣りからポソリと呟きが落とされる。
「…良かった」
何が、なんて聞かなくても
祭月がそういう風に思う奴なんて一人しかいなくて。
目が合って、祭月は「今日はありがとうね」と言って柔らかく笑った。
「…前から思ってたけど」
「ん?」
「お前、アイツの事よく知ってんだな」
この前の休日も、普段も、今日の事も。
思い返せば砂酉の言動をフォローするように、誤解がないように立ち回っている事が多かった。
「そうかな」
「そうだろ。今日だって真琴がアイツの事を嫌わないようにしてただろ」
「…イッちゃんはね、ほんとに優しいんだよ。だから誤解されちゃうのは悲しいし、勿体ないでしょ?」
「……………………、まあ」
「いま凄い長い間だったね」
仕方ないだろ。最初の頃がああだったんだから。
渋い顔をしていたのだろうか、祭月がくすくすと笑った。
「イッちゃんとは中学の時に初めて会ったんだけど、学校は一緒じゃないんだよ」
「え」
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
ヒースの傍らに
碧月 晶
BL
先輩(高校生)×後輩(高校生)
他人の『失うもの』が視える西条 月漉(さいじょう つずき)は、ある日の登校途中で泉水 千秋(いずみ ちあき)と少女漫画的出会いを果たす。
「これって運命の出会いだと思うんだ」
そう宣(のたま)った以降、何かと月漉に絡んでくるようになった千秋をあしらう(スルーする)日々がいつの間にか月漉の日常となっていた───。
※感想、いいね大歓迎です!!
秘める交線ー放り込まれた青年の日常と非日常ー
Ayari(橋本彩里)
BL
日本有数の御曹司が集まる男子校清蘭学園。
家柄、財力、知能、才能に恵まれた者たちばかり集まるこの学園に、突如外部入学することになったアオイ。
2年ぶりに会う幼馴染みはひどく素っ気なく、それに加え……。
──もう逃がさないから。
誰しも触れて欲しくないことはある。そして、それを暴きたい者も。
事件あり、過去あり、あらざるものあり、美形集団、曲者ほいほいです。
少し特殊(怪奇含むため)な学園ものとなります。今のところ、怪奇とシリアスは2割ほどの予定。
生徒会、風紀、爽やかに、不良、溶け込み腐男子など定番はそろいイベントもありますが王道学園ではないです。あくまで変人、奇怪、濃ゆいのほいほい主人公。誰がどこまで深みにはまるかはアオイ次第。
*****
青春、少し不思議なこと、萌えに興味がある方お付き合いいただけたら嬉しいです。
※不定期更新となりますのであらかじめご了承ください。
表紙は友人のkouma.作です♪
選択的ぼっちの俺たちは丁度いい距離を模索中!
きよひ
BL
ぼっち無愛想エリート×ぼっちファッションヤンキー
蓮は会話が苦手すぎて、不良のような格好で周りを牽制している高校生だ。
下校中におじいさんを助けたことをきっかけに、その孫でエリート高校生の大和と出会う。
蓮に負けず劣らず無表情で無愛想な大和とはもう関わることはないと思っていたが、一度認識してしまうと下校中に妙に目に入ってくるようになってしまう。
少しずつ接する内に、大和も蓮と同じく意図的に他人と距離をとっているんだと気づいていく。
ひょんなことから大和の服を着る羽目になったり、一緒にバイトすることになったり、大和の部屋で寝ることになったり。
一進一退を繰り返して、二人が少しずつ落ち着く距離を模索していく。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
シスルの花束を
碧月 晶
BL
年下俺様モデル×年上訳あり青年
~人物紹介~
○氷室 三門(ひむろ みかど)
・攻め(主人公)
・23才、身長178cm
・モデル
・俺様な性格、短気
・訳あって、雨月の所に転がり込んだ
○寒河江 雨月(さがえ うげつ)
・受け
・26才、身長170cm
・常に無表情で、人形のように顔が整っている
・童顔
※作中に英会話が出てきますが、翻訳アプリで訳したため正しいとは限りません。
※濡れ場があるシーンはタイトルに*マークが付きます。
※基本、三門視点で進みます。
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる