Estrella

11

「はぁ…もうええわ。オレも暇やないねん。オレから言うたる、感謝せえよ」


誰が。


これ見よがしに溜め息を吐いて、あくまで上から目線はそのままの奴を

殴り飛ばしたくなったのを堪えた俺を誰か褒めてくれ。


「砂酉、砂酉 漁(すなとり いさり)や」
「ふーん…あっそ。那月瑠、これでいいだろ」
「那月、ねぇ。…じゃ聞くけど、お前ほんまに虹の事好きなんか？」


ブホッと啜(すす)っていた茶を噴きそうになったのを、寸でのところで堪えた。


「ｹﾞﾎ…お前には関係ねえだろ」
「アホか、虹はオレの大事な奴なんや。関係あるに決まっとるやろが」
「……は？」


大事な奴……？


それがどういう意味なのか、追求する間もなく砂酉は更に続けた。


「はっきり言うとく。俺はお前の事しょうみ信用してへん。…うさん臭いねん。何か隠しとるやろ、お前」
「………っ」


瞬間、心臓が嫌な音を立てた。

音が、どんどん遠くなっていくような感覚がする。


「ただいまー」
「……ﾁｯ、じゃあな」


俺にしか聞こえないように舌打ちすると、やっと戻ってきた祭月と入れ替わるように砂酉は席を立った。


「帰るわ」
「あ、そう？気をつけてね」
「ん、ほなな」


見送ろうとした祭月を手で制し、砂酉は帰って行った。