131 / 179
8
しおりを挟む「───虹!」
その声は、もう直ぐで祭月の家に到着するという所で
俺達の何とはなしな会話を遮った。
「あれ?イッちゃんだ」
マンションの灯りをバックに立っているシルエット。
そいつに向かって祭月は駆け寄って行つた。
俺は別段走る訳でもなく、そのまま自分の歩調を保つ。
「え、イッちゃん何でいるの?さっき別れたばっかだよ?」
「お前に用があるからやろ。一応電話したで?」
「え、嘘。…あ、ほんとだ。ごめん気付いてなかった」
「まぁええけどな、お前が電話に出んのはいつもの事やし」
「たっ…!」
「ほれ、忘れもん」
そう言って祭月の額を指で弾くと、平べったいプラスチック製の容器を手渡した。
「今日やったばっかで早速忘れるか?普通」
「ごめんごめん、うっかりしてた」
「お前の場合、そういうのが多過ぎるから言うとんねん」
「そかな?」
「ほんま…しゃーないやっちゃな」
逆光に邪魔されずに顔が判別できる距離にまで近付くと
その『イッちゃん』とやらの印象が今朝とは大分変わっている事に気が付いた。
朝見た時はウチの組の奴らとどっこいどっこいな人相だと思ったが
キツく釣り上げられていた目尻は今は柔らかく下げられ、笑う顔は年相応な感じがした。
「……あ゙?誰やお前」
…と、思ったが
俺の存在を漸く捉えたといった顔をすると、それは瞬く間に元通りと相成った。
警戒心剥き出しの獣を連想させる威嚇ぶりは、さっき見たものが幻覚だったのではないかと思える程に差が有りすぎて
きっと狐に化かされた気分とはこういう事を言うのだろうと冷静に考えた。
「那月君、俺の彼氏だよ」
「………は?」
只でさえ友好性など皆無に等しいというのに、祭月がにこやかに発した一言によって
それは更に宜しくないものへと変貌を遂げる事になったのは
お分かり頂けるだろう。
いや、頼む。分かってくれ。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
アダルトショップでオナホになった俺
ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。
覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。
バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
病んでる僕は、
蒼紫
BL
『特に理由もなく、
この世界が嫌になった。
愛されたい
でも、縛られたくない
寂しいのも
めんどくさいのも
全部嫌なんだ。』
特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。
そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。
彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初のみ三人称 その後は基本一人称です。
お知らせをお読みください。
エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。
(エブリスタには改訂前のものしか載せてません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる