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467.セラフィリノの真実 sideトール
しおりを挟む「おい、こっから出せ!」
ドンドンと扉を叩いたり、体当たりを繰り返すも、向こう側から鍵がかけられているのか扉はビクともしない。
「くそ、こんなとこに閉じ込めやがって…」
高い塔のような建物の一番上にある部屋に、リヒタイールに放り込まれてから一体どれほどの時間が経ったのだろう。
おれが逃げられないと分かっているのか、窓には鉄格子も何もなくて、思いっきり開けられる。
それが腹立たしいが、今は『あいつ』がどこにいるのか探す方が先決だ。
最後に見た、何かの薬を打たれて倒れたあいつの姿が脳裏に蘇る。
あいつは最後までおれの事を守ろうとしてくれていた。
「…おれのせい、だよな」
城から攫われた時も、おれがあの場にいなければあいつは逃げられただろう。
今だって、おれのせいであいつは満足に力を使えなくて酷い目にあっている。
「…っ、くそ!」
おれに力があれば…!
自分の無力さに苛立ちが込み上げてくる。
「おやおや、そんなに苛立って…どうかしたんですか?」
「!!」
こちらを小馬鹿にしたような気に食わない喋り方をするその男は、いつの間にか扉を開けて立っていて
「お前…!」
無意識に睨む眼に力が入る。そんなおれを見て、男──リヒタイールは愉快そうに口角を上げてみせた。
「ふふ、そんなに睨まれると虐めたくなっちゃいますね」
「…あいつはどこだ」
「あいつ?さて?誰の事を言っているのですか?」
「とぼけんな!あいつは無事なんだろうな!」
「おや、意外ですね。君はあの忌み子の事を憎んでいるのではなかったのですか?」
「…お前には関係ないだろ」
「まあ、確かにありませんね。ですが、面白いなとは思います」
「…何がだ」
「君、あの忌み子がいなければとっくの昔に殺されていましたよ」
「…んなこと、お前に言われてなくても分かって──」
「いえ、そういう意味ではなく。君がまだ奴隷だった時の話ですよ」
「……え?」
「おや?その顔は…もしかして知らなかったんですか?」
「な、何をだよ」
おれの返答にリヒタイールの口元がにんまりと歪められる。
「いいでしょう、教えて差し上げます。君が昔いた家…確かセラフィリノでしたか?あの家は無能力の子供を売買する事を生業としていた家だったのですよ」
無能力の子供を、売買…?
「ですが、ある時、彼はその資金で暴動を起こしていた民を援助し、賤しくもエーアガイツ様を屠って風の一族の頂点に立とうと画策したのです。勿論、エーアガイツ様はいち早く察知され、あの忌み子に痴れ者共を始末するように命じたという訳です。良かったですね、あのままあそこにいれば、君に待っていたのは実験材料として売られる未来だけだったんですから」
「………」
う、そだ
「ああ、あまりのショックで声も出ませんか」
だって、あの方はおれを初めて人間として扱ってくれて
「そういえば、セラフィリノの商品は健康的でモルモットにするも良し、鑑賞用に飾るも良しという高品質で裏では有名でしたねぇ。君も最後に人間らしい扱いを受けられて良かったですね」
「………ぅ」
「? う?」
「うあああああ!!」
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!
「あらら、壊れちゃいましたか?おーい?だいじょーぶですかぁ?」
ケタケタと嘲笑う声が頭に響く。
「まあ、壊れたら壊れたで有効活用させてもらいますがねぇ」
それが現実なのか、幻聴なのか、もうおれには分からなかった。
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