炎のように

碧月 晶

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457.親心

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「それで、父上、一体何があったのですか?」

急いで戻って来た城の人払いを済ませた一室で、父上は漸く事の次第を話し始めた。

「うむ…実は道中で妙な噂を聞いてな」
「噂?」
「最近、各国でどこの国の造りか分からない怪しい武器や劇薬が出回り始めていると」
「! …父上もお聞きになったのですね」
「ああ、これらを大量に買い込んだ国があるとも。だから私はこれはいつどこで火がついてもおかしくはない状況だと考え、急いで帰国する事にしたのだ」

…さすが父上だ。たったそれだけの情報とわずかな情勢で国の危機だと察するとは…

「父上、ご報告しなければならない事があります」

俺は、集めた情報と証拠に基づき判明した事、そしてアイセの事を話した。

「……ふむ、リュミエール商会とオラージュ王国が」

俺から全てを聞き、考え込むように無言になった父上の次の言葉を、俺とイグは固唾を飲んで待つ。
そして、暫くの沈黙の後、漸く父上は口を開いた。

「…ヴィント」
「はい」
「今からお前はイグニート共々、原因不明の病にかかり、倒れた事とする」
「…え?」
「そして感染を防ぐため、これよりこの国は人や物の出入りを制限する」
「!」

父上が言わんとしている事が分かり、俺は頭を下げた。

「分かりました。父上、感謝致します」
「猶予は一ヶ月だ。それ以上は待てんぞ」
「はい。承知しております」

「では」と部屋を退出したヴィントとイグニートを、フランディアスとプラーミアは静かに見送った。

「…お父様ってば、相変わらずヴィントに甘いんですから」
「私はお前の事も可愛い我が子だと思っているよ」
「はいはい、分かっていますわよ。お父様の子煩悩ぶりは民にも有名ですもの。…それにしても、あの子に想い人が出来るなんて驚きましたわ」
「ああ、そうだな。私も驚いた」
「あの子があんなに必死になるなんて…一体どんな子なのかしら?是非お会いしたいですわ」

プラーミアの言葉にフランディアスは自分もだと肯定するように微笑む。

「さて…私たちもやるべき事を果たそうか」
「はぁい」

帰ってきたらまずは自己紹介しなくてはと思い、フランディアスは今からその時を心待ちにするのだった。
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