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454.襲撃者 sideイグニート
しおりを挟む「───くそ!!」
こんなにも怒りを露わにしているヴァンを見るのは、一体いつぶりだろう。
───アイセとトールが攫われた
それが分かったのは、今から約3時間程前の事だ。
俺たちは急にやって来た俺の父──オリュトロス公を警戒しながらも対応した。
そして、ヴァンとの一芝居の末に漸く尻尾を出したところを捕まえた……までは良かったが。
問題はこの後だ。この城に侵入者が入り込んだのだ。
普段なら別段そこまで驚くような出来事ではない。この国が大国になるまでもなってからも侵入者は絶えないため、城の警備は厳重なものになっている。
しかし、侵入者たちはその警備をいとも容易く抜け、侵入を果たした。
…一体どこから入り込んだんだ?
それに驚くべき点はもう一つある。侵入者の逃げ足の早さだ。
あの火柱が上がってから、現場に駆け付けるまで通常時で約3分。足止めを食らわされたとしてもヴァンならばその時間は変われども大幅に上回る事はなかっただろう。
つまり、侵入者は俺たちが駆け付けるまでの数分で手練れでもあるあの子を打ち負かした実力を持っている事になる。
しかも、直ぐに警戒命令を出し、国外へと繋がる陸路・海路に伝令をやり封鎖したが、そのどこからも侵入者たちと思しき奴らが通った形跡の報告は上がって来なかった。
「…もう国外に逃げおおせたと考えて良いだろうな」
「………」
用意周到に、それも恐らくは俺たちが把握していない所を予め撤退経路として確保していた抜け目のない奴らだ。
これ以上待ってもきっと望む報告は来ないだろう。
ならば…
「いい加減シャキッとしろ!」
「痛っ!」
バシッとヴァンの背中を叩き、カツを入れる。
「動揺するなとは言わないが、そろそろ頭を切り換えろ」
「……そう、だな。その通りだ。悪い、イグ」
怒りを抑え込むようにヴァンは長い息を吐く。
「…侵入経路はそのまま調べさせろ。それから、ヨハンを牢から出せ」
冷静さを取り戻した紅い瞳にもう動揺の色は見受けられなかった。
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