炎のように

440.左右非対称

「「「！？」」」

ヴァン以外のその場にいた全員の人の目が見開かれ、言葉を忘れて左眼を凝視する。

「ご存知の通り、異種能力者間に生まれた子は普通能力を持っていません。ですが俺は…いえ俺達は能力を持っていました」
「…俺達？」

隣りにいるヴァンが小さく疑問を呟く。
当然だろう。ここから先はヴァンも知らない事なのだから。

「さっきの話ですが、一つ補足しなければならない事があります。俺には…ウルという双子の弟がいました」

過去形で告げた事で、皆の表情が僅かに曇った。

「ウルは体が弱くて、俺と違って水の力だけを受け継いでいました。…ですが、俺がウルの事を、両親の事を思い出したのはごく最近の事です」

そう言った途端、流れていた空気が戸惑いのそれへと変わった。

「父の家に奴隷として引き取られ、毎日のように両親の事を聞かされました。でも、両親の名前は一切教えられませんでした」
「え、でもさっき…」

アズライトさんの疑問に、深呼吸して息を整える。

俺は記憶が欠落している事、きっかけとなった叔父の存在や思い出す兆候として頭痛がする事を話した。