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437.赤の泡沫
しおりを挟む「俺は命令されるままに、疑問を抱くことすらなく多くの人を殺めました。けれど、言い訳をするつもりはありません。どんな理由があったとしても、俺が貴方から大切なものを奪った事には変わりません」
「…っ、何だよそれ…後悔してるとでも言いたいのかよ」
「……はい」
悔やんでも悔やみきれない。この罪の意識は一生付き纏うだろう。
「…は?なに人間みたいな事言ってんだよ」
「………」
「あの時、虫けらでも見るみたいにあの方を切り捨てておいて」
「………」
「今はそれを後悔してる?ふざけんな!」
「ッ、」
「トール!」
頭の上に気配を感じたけれど、俺は避けなかった。
踏み付けられる俺にユアンさんの焦ったような声が聞こえた。でも、誰も止めに入らないから、きっとヴァンが汲んでくれたんだろう。
「なんでっ、何で人殺しが後悔なんかしてんだよ!」
ギリギリと足に力が込められる。擦れて痛い。でも彼の痛みに比べれば、こんなの痛みにすら入らない。
「言い訳はしない?謝るから許してくれってか?」
「…それは、貴方が決める事です」
「じゃあおれが死ねば許すって言えばそうするのかよ」
「それは出来ません」
「はあ?」
「俺は貴方の言う通り『人殺し』です。許されない罪をたくさん犯しました。…だからこそ、俺は『死』という簡単な道に進んではいけないんです」
「……」
「生きて、この罪を償い続けます。奪ってしまったものがどれだけ尊いものだったのかを、都度刻み続けて、悔いて、生きていきます」
以前の俺なら償いとして『死』を望まれれば迷わず従っていただろう。
でも…それではダメなのだと、それは楽な道を選んでただ逃げているだけに過ぎないと。気付かせてくれた人がいたから。
「…んだよ、それ」
踏み付けていた足がゆっくり離れる。
「どこまでも馬鹿にしやがって…」
「トールさ、」
「うるさい!」
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「待っ…!」
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