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416.これからも
しおりを挟む「あー…づっっかれたー!」
一仕事終えて次の目的地へと向かう道すがら、バキバキとなる肩と腰をほぐす。
若い頃よりも痛めやすくなった節々。
「オレも年かなー。…ん?」
東屋に誰かいる。あれは…
風が木々を強く揺らす中庭の東屋で、どこか遠くを眺めるように座っている様にいつかヴァン様が言っていた言葉をふと思い出した。
『絵の中から出てきたような人物』
ざわめく木々とは対照的に、彼の周囲だけまるで風たちが避けているかのような不思議な光景。芸術には疎い方だが、本当にその表現通りだと思った。
「…アズライトさん?」
不思議そうな声にはっと我に返る。柄にもなく見惚れていたらしい。
「あー…、よっ、久しぶり」
「お久しぶりです」
「もう調子は良いの?」
「はい」
「そっか。そりゃ良かった」
見つけた時の事もあるが、力を暴走させていたあの時の事も知っているだけにずっと気掛かりだった。
「あの…あの時は助けて頂いてありがとうございました」
「へ?」
あの時、というと街外れの森で発見した時の事だろうか。
「ちゃんとお礼を言っていなかったので、ずっと伝えなければと思っていたんです」
「あーここんとこオレちょっと用事で出てたからなぁ」
別に気にしなくて良いのに、そんな事。
あの時実際に彼の命を繋ぎ止めたのは先生の力のお陰だし、俺は純粋な『善意』だけで助けた訳じゃない。
万一死なれでもしたら、あの人が困る。あの瞬間、一番に過ぎったのはそんな考えだった。
良くも悪くも俺の世界はあの人を中心に回っている。
理由なんてそれ以外に有り得ないし、なり得なかった。
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