炎のように

405.些か遠い

「い、いつからそこに…」
「今さっきだが…それで？何に悩んでいるんだ？」
「え、いや、それは…気のせいと言うか何と言うか…」

 

言った傍から徐々に視線が逸れていってしまう。

 

そもそも、逃げた手前少し気まずいというのに…（逃げたと言っても、遠目に目が合って、咄嗟に隠れただけなのだが）

因みに、その時この謎の症状が発動した。

 

「そ、それより仕事はいいんですか？イグニートさんが待ってるんじゃ…「さっき、見てたよな？」」

 

目が合った、というには些か遠い距離だったと思うのだが…

 

「！？」

 

だからそんなはずはないと、俺が一方的に目が合ったような気がして、勝手に逸らしてしまったものだから

直接顔を見た訳じゃないのにどうして逸らしてしまったんだと、余計に分からなくなって、一人で悶々としていたのだ。

 

…だと思っていたのに、え？本当に目が合ってたのか？

 

どれだけ目が良いんだと言いたかったが、今はそれよりも見ていた事に気付かれていたという事が問題だった。