炎のように

397.そそくさと

────ﾁｭｯ



……へ？

 

予想していた所とは違う所に感触を感じて

恐る恐る、土壇場で閉じた目を開けて額に触れる。

 

…お、でこ？

 

ポカンとしていると、いつの間にかヴァンは立ち上がっていて

顔を上げるよりも先に、わしわしと頭を撫でられる。

 

「わ、ちょっと…何するんですか！」

 

ぺシッとヴァンの手を払い落とし、乱された髪を直す。

…が、そこでヴァンが無言である事が気になった。

 

「？　ヴァン？」
「…いや、何でもない」

 

見れば、ヴァンは顔を大きく背けて口元を手で覆い隠していた。

何をしているのか分からなくて、再度呼び掛けてみるも

返ってくるのは「何でもない」ばかりで
大丈夫だからと、手の平を見せてくる。
 



そしてヴァンはそのまま「じゃあ、また夜に」と言って
そそくさと部屋を出て行ってしまったのだった。