386 / 485
381.裏方休務─6 sideイグニート
しおりを挟む「…ん、そうか。良かったな」
「え、ちょ…やめっ」
手が伸ばされたかと思うと、唐突にぐわしぐわしと雑に頭を撫でられた。
髪がボサボサになるから止めろと言おうとしたが、柔和に細められた瞳を目にして
出掛かった言葉は喉の奥へと引っ込んでしまった。
…ずるい。普段は飄々としていい加減なくせに、時々こうして年上の雰囲気を垣間見せる。
嫌でも自分との差を見せつけられている気がして、まだまだ子供なのだと思い知らされる。
自分より幾年も多く経てきた武骨な手。
実を言えば、こうされる事にそこまで不満がある訳じゃない。
いつかあの人がしてくれた遠い記憶を呼び起こす、この手の感覚を心地良いとさえ思う。
だけど…
「…子供扱いしないで下さい」
手を払い除け、すかさず残りの酒を一気に呷(あお)る。
チラリと横目で見ると、「残念」とお道化(どけ)たように掌をひけらかして
アズライトはカウンター内に入っていった。
「次は何飲みます?」
「……………」
「無いならアンタをイメージした奴を作ろうかなー」
「…俺を?」
いま物凄くベタな台詞を言われたような気がするのだが…
「ほい、完成」
早…!!
あっという間に完成し、出されたのは
タンブラータイプのグラスを満たす、淡いブラウンに透けるカクテルだった。
「…これは?」
「アプリコットフィズ。杏(あんず)の種をブランデーに漬け込んだアマレット(アーモンド風味の杏のリキュール)を使ってる。度数は低め」
…何というか、俺をイメージしたという割には不釣り合いなほど可愛らしい名前だな
「俺ってこんなイメージなんですか?」
こんな酒がまさか自分に出されるとは思ってもみなかった。
今まで仕事として、こういった酒を提供する店を訪れた事はある。
けれど、決まって出されるのは寒色系か瞳の色を模した赤い色合いのものや
度数の強いものばかりで
そういう意味も含めて、こういう酒を出されたのは意外で
これはあまりにも自分にはそぐわなさ過ぎると
思わず笑ってしまった。
0
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
Estrella
碧月 晶
BL
強面×色素薄い系
『Twinkle twinkle little star.How I wonder what you are?
────きらきらきらめく小さな星よ。君は一体何ものなの?』
それは、ある日の出来事
俺はそれを目撃した。
「ソレが大丈夫かって聞いてんだよ!」
「あー、…………多分?」
「いや絶対大丈夫じゃねぇだろソレ!!」
「アハハハ、大丈夫大丈夫~」
「笑い事じゃねぇから!」
ソイツは柔らかくて、黒くて、でも白々しくて
変な奴だった。
「お前の目的は、何だったんだよ」
お前の心はどこにあるんだ───。
───────────
※Estrella→読み:『エストレージャ』(スペイン語で『星』を意味する言葉)。
※『*』は(人物・時系列等の)視点が切り替わります。
※BLove様でも掲載中の作品です。
※最初の方は凄くふざけてますが、徐々に真面目にシリアス(?)にさせていきます。
※表紙絵は友人様作です。
※感想、質問大歓迎です!!
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる