炎のように

碧月 晶

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364.カレの後悔

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僅かな衝撃と、木が折れる音と木の葉が舞い散った音がした。


あれだけの火量だったにも関わらず、周囲の木々には一切の煤(すす)も付いていなかった。

後に残ったのは、深く亀裂が走っている地面だけ。


それを見て、やっぱり俺の力は何かを傷付ける事しか出来ないのだと思った。

だって、そうやって生きてきたんだ。
そんな事しかして来なかった。

何かを傷付けなければ身を守れなかった。



初めて自分自身以外で守りたいと思った。

でも、何も傷付けないで守る術など
それ以外のやり方など知らなくて


だから、どうしたら傷つけないで済むのか

方法が分からない。


今頃になって、こんな事で後悔するなんて……






「…ここで、お前を追い掛けたのは二度目だな…」


合わさったお互いの胸が上下して、一際長い溜め息が耳の直ぐ傍で吐き出され

「今度は捕まえた」と言って、きつく身体ごと抱き締められた。



「…なんで」


湧き上がる感情が抑えられなくて、下から滲んだ眼差しをぶつけた。


「なんで来るんですか!どうして…行かせてくれないんですか…っ、俺が、どんな思いで……!」


兎に角離れなければと思ったのに、離れれば良いと思ったのに

どうして上手くいかないの



…俺は、どうすれば良いんだ。どうしろと言うんだ。



ぼろぼろと零れていく涙が、酷く滑稽に思えて

隠したくて、その腕の中から逃れようともがいた。
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