炎のように

碧月 晶

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337.もう一人(?)の功労者 sideアイセ

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ここへ運び込まれてから既に4日も経過していると聞かされ、そんなに眠っていたのかと驚いた。


「いっ…」


ズキンと、頭痛がした。


思い返せば、ヴァンに街を連れ回されたあの日に唐突に襲われた頭痛が始まりだったのではないかと思う。

頭痛がする度に、覚えのない記憶が映し出された。


何がきっかけになったのかは分からないが、俺はそれらを思い出さなくちゃいけない気がする。


叔父のこと

父さんや母さん、ウルのこと


一体何を忘れてしまっているのか、どうして俺の記憶は欠落しているのか





何も定かではない、暗闇の中を手探りで一人、歩いているようだ───。








───コンコン




「アル?」



ノックの音に振り向くと、ヴァンが立っていた。


「どうしたんですか?何か忘れ物でもしましたか?」


先ほど出ていったばかりなのに、あまりに早く戻ってきた事を不思議に思い

直ぐに引き返してくるだけの価値がある理由を憶測で尋ねたが……




「理由がないとお前に会いたいと思ってはいけないか?」
「……………へ?」






返ってきた答えは、それとは全くのかすりもしない的外れなものだった。




あ、会いたい?




まさか戻ってきた理由が自分に会うためなどと言われるとは思いもよらず

何のリアクションも出来なかった。



「迷惑…だったか?」
「え?」


迷惑なんて思う訳ない。

けれど俺の反応をどう受け取ったのか、ヴァンは一瞬悲しそうに眉を下げた。


「……っ、そんな、事は……ない…です」
「そうか」


そんな顔してほしくなくて、途切れ途切れにどうにか紡ぎ出せた言葉に

途端にヴァンは嬉しそうに破顔した。


その変わりように、一際大きく跳ねた鼓動に首を傾げていると

ヴァンはそのまま歩み入ってきて、テラスへの扉を開けた。

そして、ピーと指笛を鳴らした。


「? 何をしているんですか?」
「お前に会わせたい奴がいてな」


会わせたい奴?


「それって、……あ」


誰だと問うよりも早くヴァンの腕に降り立ったのは

悠々と羽ばたく、青と緑の美しい………



「エテル!? わっ…」
「ピィーピィー!」


驚き呼ぶと瞬きする間に俺の肩へと移動し、ぐりぐりと痛い程にすり寄ってきた。

ぴったりと寄り添ってくれるその様子が可愛くて、知らず知らずのうちに笑みが零れていた。


…あれ?でもなんでエテルがここに?


ふと浮かんだ疑問に、まるで分かっていたというようにヴァンは言った。


「さっき言いそびれたが、アルが発見された時に、俺にお前の居場所を教えてくれたのがエテルだ」
「…エテルが?」


びっくりしてエテルを見る。

エテルは円らな黒眼をくりくりとさせていた。


「……そっか、ありがとうね。エテル」
「ピッ」


頭をそっと撫でると、エテルはどういたしましてと答えるように短く鳴いた。



その様子を、ヴィントは羨ましいような複雑な気持ちで見ていたが
滅多に見られない笑顔を拝めるのだし
まあ、嬉しそうだから良いかと思ったのだった。
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