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334.初対面
しおりを挟む「気分はどうだ?」
「…もう、平気です。…あの、片付けさせてしまって…すみません…」
「気にするな」
ヴァンは俺が吐いてしまったものを嫌な顔一つせずに始末してくれた。
自分ですると言ったけれど、「傷に障るから駄目だ」の一点張りだった。
自由に動かせない身体で出来る抵抗なんてささやかなもので
汚れた服もあっという間に脱がされ
今はベッドの縁に座らせられて、新しいシャツのボタンを留めて貰っている最中だ。
…何故だか楽しそうにしているのが謎だが
眼下でチラつく金色は、今にも鼻歌でも歌い出しそうにしている。
野郎の着替えなんて手伝って、一体全体何がそんなに楽しいのやら…
やっぱりヴァンは変わっている。
しかも仮にも一国の王子ともあろう者が、膝をついて俺みたいな奴の世話を嬉々としてしている図なんてシュール過ぎるだろ。
それに、何故かさっきから催(もよお)している訳でもないのに、そわそわとして落ち着かない。
単に服を着せてもらっているだけの単純作業のはずなのに、どうしてこうも気恥ずかしく感じるんだ?
でもこんな身体では動けないし、かと言ってじろじろ見る訳にもいかない。
正直言って、目のやり場に困っている。
「よし、終わったぞ」
前をはせていたヴァンがパッと顔を上げた。
「! お、お手数をお掛けしました…」
紅い視線から、つい目を逸らしてしまった。
…しまった。
今のはわざとらし過ぎただろうか。
視線が刺さる。
「なあ、アル」
「何…「ヴィント様、失礼します」…!?」
入ってきたのは、穏やかな空気を纏った
アサギ色の髪の男性だった。
身長は俺と同じくらいだろうか。
「…あ、目覚められたんですね!初めまして、アルさん。僕はこの城で医師をしているユアン・クラールといいます。どうぞお見知りおきを」
丁寧なあいさつにどう返したものかと、答えあぐねているとノック音がした。
「ヴァン?入るぞ」
「ああ」
声がして姿を現したのは、イグニートさんだった。
そして、その後ろに焦げ茶色の髪の男性が続けて入ってきた。
誰だと見ているのが分かったのか
「どーも。俺はアズライト・アンバー。宜しく」
男性は俺と目が合うと、直ぐにそう名乗った。
飄々とした雰囲気の、不思議な人だった。
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