炎のように

332.城にて

「……………」


夢から目覚めると、窓から差し込む光が眩しかった。







あれは、何の記憶だったのだろう？



あの子に触れた感触が、まだ手に残っている。



ただの夢か、現か。




けれど、覚えなどないはずなのに
そうは思えないとどこかで感じている自分もいる。




…何なんだ


俺は、一体────

















「…アル？」


目の端に人影が映った。



金髪に、紅い瞳。




「良かった、目が覚めたんだな…！」



俺をとても安堵したように見ているのは…






「ヴァン！？…ッ、あ、ぐ」


上体を起こした途端、全身に激痛が走った。

見ると、至る所に包帯と手当ての数々。
顔には左半分を覆う程の大きなガーゼ。


「まだ動かない方が良い」

「…なんで、ヴァンが」


痛みを堪えながら、なんとか吐き出せた問いかけに


「そりゃ、ここは俺の城だからな」

「…しろ？」


は？
なんでそんな所に？


そんなさも当然だろという顔をされても理解が追いつかない。


「は、え、なんで？」


混乱し過ぎて一瞬痛みを忘れてしまったじゃないか。


「お前、街外れの森で倒れていたんだ」

「森に…？」



なんで…



「あ…」



そうだ。


俺は、アイツらから逃げてきたんだった。


「うﾞっ…」


思い出すと、強烈な嫌悪感が込み上げてきて
咄嗟に口元を覆った。


喉の奥からせり上がってくるものを出すまいとしたが、とうとう堪えきれずそれを吐き出してしまった。


「アル！？」




気持ち悪い。



喉が焼け付く。



身体が震える。




誰か…











たすけて