炎のように

碧月 晶

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324.もう良いよ

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「ふはっ、何だよその反応」

「だっ、え、ええ?」


さっきとは違って自由な手がワタワタと動いてしまう。

俺のその行動が面白かったのか、アズライトはひとしきり肩を震わせた。


「……やっぱりお前は悪くないよ」


急に、真剣な声音になって言われた言葉に
今度は怒りを感じなかった。


「お前は何も知らなかったんだ。お前が責められる筋合いはない。
それに、友を大事にして何が悪い?自分を大事にして何がいけない?
何かを尊く思えるのは良い事だよ」

「でも、俺は…!」

「お前はお前だ、イグニート。
お前にはお前の権利がある、意思がある。
何をするも、何を選ぶも、それはお前の自由だ。
誰かに咎められるものじゃない」

「…!」

「誰にも、何も責められないのは辛いよな…誰にも苦しさを打ち明けられないのは悲しかったよな」

「っ、」

「だから、自分で自分を戒めるしかなかった。…そうだろ?
自責を軽くしたいがための自己満足だったとしても」

「っ…ぅ…」

「お前は十分自分を苦しめたよ…けど、もういい。いいんだよ。
もう兄貴の真似は止めろ。お前はもう楽になって良い、自分の道を作れ。
許されないというのなら、俺が許してやる。
誰に何と言われようと俺がお前の全てを肯定してやる」

「…っ、なん、だよ、それ…ぅっ…く…」

「俺は…友達想いで意外と口の悪いお前が好きなんだよ」




望んでいた事はただ一つ。



自分を必要としてほしかった。



優秀でなくとも
何も出来なくとも
理由を作らなくても



ただ一つの存在として、必要としてほしかった。


「大丈夫、お前はちゃんと必要とされてる。あとはお前が気付いて、信じてやるだけだ」


もう滲んでしまった眼は何も見えなかったけど
きっとまた飄々と、笑っているのだろう。





「俺も…いつかちゃんと話すから…」




イグニートがその呟きを知る事になるのは、もう少し後のお話。
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