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301.戒めの記憶─20
しおりを挟む「!? …っ」
「───ッ、ゲホッ、ゲホッ…」
だが、寸でのところでリガイェンの動きは止まった。
否、中断された。
刃先が皮膚に到達する直前、脱力しきっていたはずの手がピクリと動いたと思った次の瞬間には
リガイェンの顔前に火の玉が迫っていたのだ。
リガイェンがそれを回避したはずみで、宙に浮いていた彼の身体は地面へ解放された。
「───……イグニート様ー!…」
「…チッ」
近付いてくる大勢の足音。
恐らく、さっきの奉公人が呼んできたのだろう。
床に倒れる弟を横目に、リガイェンは分が悪いと判断したのか
足早に立ち去ろうとする。
「…にい…さ…」
「………………」
弱々しい声に
一瞬足を止めたが、リガイェンが振り返る事はなかった。
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