炎のように

142.大切だから

その日からヴァンはほとんど毎日来るようになった。

「また来たんですか…」
「暫くは暇だからな」

じゃあ、俺なんかに構わずに他の事をすれば良いのに。
そう思うけれど、嬉しいとか思ってるから言わない。言いたくない。

 だけど、ヴァンが大切な存在だって気付いてからどうしようって迷ってる。
また誰かを大切だと、特別だと思える人が出来るなんて思いもしなかった。

失った時の苦しさを知ってるから、もうあんな思いはしたくなくて作らないようにしてた。

失いたくない。
でも、また俺のせいでヴァンが傷ついてしまったら？
ヴァンはああ言ってくれたけど、一度そう考え出したら止まらなくて、怖くてたまらない。

もっと彼と一緒にいたい。

傷つけたくないならもう関わっちゃダメだって、そんなの自分がよく分かってる。
分かってるけど、見たくない。
答えなんて解りきってるのに、そんな狭間でいつまでもジレンマしてる。


早く行かないと。
これ以上、彼が俺を埋めつくす前に。