107 / 485
103.策略
しおりを挟む
離せと言っても離してくれないヴァンと笑顔で見ているだけのイグニートさんに連行されている道すがら、話はまた報酬の件に戻っていた。
「本当にいいのですか?」
「…はい」
「ですが…」
と、まあこんな調子でずっと同じ所をグルグルと繰り返している。そろそろこのやり取りにもうんざりしてきた。
「はぁ…。ですから、何度も言っている通り、本当にお金は要りませんから」
「なら、金以外ならどうだ?」
そう提案してきたのはヴァンだった。
正直なところお金以外でも別に欲しくはなかったのだが、イグニートさんとのこの無限回廊から抜け出せるのならと思って、話にのってやる事にした。
「例えばなんですか?」
「そうだな…あ、裏通りのあの店なんてどうだ?」
どうだと言われても俺はその店を知らないのだが。
「ダメですよ。あそこは十九才以下は入れません」
「ん? そうだったか?」
どうやら年齢制限がある店だったようだ。
…どこに連れて行こうとしてたんだ。
「そうなんですか。じゃあ、俺は入れませんね」
「いくつなんだ?」
「十六ですね」
そうだ、だから俺は行けない。諦めろ。
「へぇ…十六なのか」
「それは残念ですねぇ」
そう言った時、二人の目が僅かに光った事に俺は気付かなかった。
「本当にいいのですか?」
「…はい」
「ですが…」
と、まあこんな調子でずっと同じ所をグルグルと繰り返している。そろそろこのやり取りにもうんざりしてきた。
「はぁ…。ですから、何度も言っている通り、本当にお金は要りませんから」
「なら、金以外ならどうだ?」
そう提案してきたのはヴァンだった。
正直なところお金以外でも別に欲しくはなかったのだが、イグニートさんとのこの無限回廊から抜け出せるのならと思って、話にのってやる事にした。
「例えばなんですか?」
「そうだな…あ、裏通りのあの店なんてどうだ?」
どうだと言われても俺はその店を知らないのだが。
「ダメですよ。あそこは十九才以下は入れません」
「ん? そうだったか?」
どうやら年齢制限がある店だったようだ。
…どこに連れて行こうとしてたんだ。
「そうなんですか。じゃあ、俺は入れませんね」
「いくつなんだ?」
「十六ですね」
そうだ、だから俺は行けない。諦めろ。
「へぇ…十六なのか」
「それは残念ですねぇ」
そう言った時、二人の目が僅かに光った事に俺は気付かなかった。
11
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
Estrella
碧月 晶
BL
強面×色素薄い系
『Twinkle twinkle little star.How I wonder what you are?
────きらきらきらめく小さな星よ。君は一体何ものなの?』
それは、ある日の出来事
俺はそれを目撃した。
「ソレが大丈夫かって聞いてんだよ!」
「あー、…………多分?」
「いや絶対大丈夫じゃねぇだろソレ!!」
「アハハハ、大丈夫大丈夫~」
「笑い事じゃねぇから!」
ソイツは柔らかくて、黒くて、でも白々しくて
変な奴だった。
「お前の目的は、何だったんだよ」
お前の心はどこにあるんだ───。
───────────
※Estrella→読み:『エストレージャ』(スペイン語で『星』を意味する言葉)。
※『*』は(人物・時系列等の)視点が切り替わります。
※BLove様でも掲載中の作品です。
※最初の方は凄くふざけてますが、徐々に真面目にシリアス(?)にさせていきます。
※表紙絵は友人様作です。
※感想、質問大歓迎です!!
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
倫理的恋愛未満
雨水林檎
BL
少し変わった留年生と病弱摂食障害(拒食)の男子高校生の創作一次日常ブロマンス(BL寄り)小説。
体調不良描写を含みます、ご注意ください。
基本各話完結なので単体でお楽しみいただけます。全年齢向け。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる