炎のように

碧月 晶

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88.解消

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無言で歩き続ける。
どこかに向かっているらしいが、聞けない俺には分からない。

もう何分歩いているのだろう。
そんなに経っていないはずなのに、やけに時間が長く感じる。

気まずい空気のまま歩き続けて、不意にやっとヴァンが足を止めた。
突然止まるものだから、勢い余って背中にぶつかってしまった。

「うわっ!」
「ん?大丈夫か?」
「止まるなら止まると…って、ここは?」
「街の高台だ。ここから見える夕日が一番綺麗なんだ」
「夕日?」

海へと目を向け、一瞬、眩しさに目を細めた。
そして、段々と慣れて見えてきた光景に息を飲んだ。
上手く説明は出来ないけれど、

「……綺麗」

確かにそう感じたんだ。

 今まで幾度と夕日は見てきた。
でもそれは、あくまで只の現象の一つで。大して気にもしなかった。
だけど、彼と見るこの夕日には何故かそう思えた。


どうして今までそう思わなかったのが不思議なくらいで
急にセカイに色が付いたような、そんな感覚がした。

 
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