炎のように

35.逃走

あまりのしつこさに堪え切れえず叫んだ。
が、怒って睨み付ける俺とは対照に何故か彼は嬉しそうに笑っていて。

「やっと、俺を見たな」
「！！」

しまった。
出来るだけ視線を合わせないようにしていたのに。

乗せられてしまった事に気付いた羞恥と更に相まって騒ぎ出す心をどうにか抑えて周りを見ると、船はもう数メートルで船着場に着こうとしているところだった。

この距離なら十分に届く。
そう判断し、男から逃れるように見張り台から飛び降りた。

「あ！おい！アル！！」

後ろから呼び声が聞こえたけれど無視した。そのまま甲板まで走り、船首から思いっ切り陸へ飛び移った。
着地と同時に、急いでその場を離れようと全力で走った。

 
顔が熱い…