炎のように

26.仕事 sideヴィント

船に乗る前日。
俺は公務の一環としてアクア・フェリーの領主に会いに来ていた。

「ようこそおいでくださいました。私がアクア・フェリーの領主、フイ・フェリーです。」

気持ちの悪い笑みを浮かべ、こちらに手を差し出してくる。あまり(否、かなり)掴みたくはないが、仕方ない。これも仕事だ。

「初めまして。私はヴィーチェル王国　第一王子　ヴィント・アーヴェルです」

外面用の営業スマイルを作り、握手を交わす。

これが最後の仕事だ、これさえ終われば国に帰れる。そう思い笑顔を貼り付け続けた。

 

 

「………ではこれで今回の商談は終わりとさせていただきます」
「ええ、ありがとうございました」
「いえいえ、とんでもないです。こちらこそ、わざわざご足労頂きありがとうございました」
「では、我々はこれで失礼させていただきます」
「あ、お待ちください。もう少し寛がれて行かれては？私の娘も貴方様と話したがっておりまして…」
「いえ、結構ですよ。それに次の公務が有りますので」

そんな予定は無いが、しれっと笑顔で嘘をついた。

「そ、そうですか。これは差し出がましいことを申し上げました。では、またの機会に」
「ええ、では失礼します。」


そんな機会は二度と来ないと思うがな。

 

ニッコリと笑顔を作り、屋敷を出た。