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あれから、3年が経った。
向けられる幾多のカメラ、視線。その中でオレだけに向けられているたった一つのカメラに向けて、オレは魅せる。
刹那の再会。今すぐ傍へ行きたい衝動を抑え込んだ。
───そして、最終日。
全てを終えたオレはあいつに一通の手紙を送った。差出人は敢えて書かなかった。
「…はぁ」
心なしか早い自分の心音に、柄にもなく緊張しているのが分かる。
「───…」
扉の開く音に、あいつが来たのだと悟る。
恐る恐るというように、暗闇の中をこちらにやってくる足音。開いていた扉が閉まった瞬間、合図と共に灯りが点く。
一気に明るくなった空間で、漸く目が合った。
久しぶりに見るその真っ黒な眼は驚きに見開かれていて、この場にいる人間全てを映す。
「な、何でみんなが…?」
裕太郎を始め、理一郎、宗一郎、竜雅、ゆりえさんが何故この場にいるのか。心底不思議そうにしている雨月に、オレは不敵な笑みを浮かべ手を差し出す。
「来い、雨月」
名前を呼ぶと、雨月はゆっくりと赤い絨毯の上を歩き始めた。まるでバージンロードを歩く花嫁のように…
「あの…これは一体──」
オレがいる祭壇の前に辿り着き、そっとオレの手を取った雨月の口を指で塞ぎ、己の隣りへと立つように誘う。
そして、戸惑う雨月を前に、オレ恭しく跪いてみせた。
「雨月、お前はオレにとって最愛の存在だ。この先、お前と二人で一緒に年を取っていきたい」
「…!」
懐から取り出したベルベットの箱を見て、雨月の表情が驚きに見開かれる。
口元を手で押さえ、感涙して肩を震わせる雨月の前で、開けたその中には───ダイヤのリング。
「オレと結婚してくれ」
「…っ、はい…っ」
迷うことなく頷いてくれたこの時の笑顔をオレは一生忘れないだろう。
祝福の拍手が鳴り響く中、オレたちは誓いの口付けを交わした───。
ーendー
─────────────
↓後日談へ続きます。
向けられる幾多のカメラ、視線。その中でオレだけに向けられているたった一つのカメラに向けて、オレは魅せる。
刹那の再会。今すぐ傍へ行きたい衝動を抑え込んだ。
───そして、最終日。
全てを終えたオレはあいつに一通の手紙を送った。差出人は敢えて書かなかった。
「…はぁ」
心なしか早い自分の心音に、柄にもなく緊張しているのが分かる。
「───…」
扉の開く音に、あいつが来たのだと悟る。
恐る恐るというように、暗闇の中をこちらにやってくる足音。開いていた扉が閉まった瞬間、合図と共に灯りが点く。
一気に明るくなった空間で、漸く目が合った。
久しぶりに見るその真っ黒な眼は驚きに見開かれていて、この場にいる人間全てを映す。
「な、何でみんなが…?」
裕太郎を始め、理一郎、宗一郎、竜雅、ゆりえさんが何故この場にいるのか。心底不思議そうにしている雨月に、オレは不敵な笑みを浮かべ手を差し出す。
「来い、雨月」
名前を呼ぶと、雨月はゆっくりと赤い絨毯の上を歩き始めた。まるでバージンロードを歩く花嫁のように…
「あの…これは一体──」
オレがいる祭壇の前に辿り着き、そっとオレの手を取った雨月の口を指で塞ぎ、己の隣りへと立つように誘う。
そして、戸惑う雨月を前に、オレ恭しく跪いてみせた。
「雨月、お前はオレにとって最愛の存在だ。この先、お前と二人で一緒に年を取っていきたい」
「…!」
懐から取り出したベルベットの箱を見て、雨月の表情が驚きに見開かれる。
口元を手で押さえ、感涙して肩を震わせる雨月の前で、開けたその中には───ダイヤのリング。
「オレと結婚してくれ」
「…っ、はい…っ」
迷うことなく頷いてくれたこの時の笑顔をオレは一生忘れないだろう。
祝福の拍手が鳴り響く中、オレたちは誓いの口付けを交わした───。
ーendー
─────────────
↓後日談へ続きます。
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