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55 side雨月
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見る者を魅了し、ランウェイの上をモデルたちが次から次へと歩いていく。
その姿を収めようと手にしたカメラでシャッターを切る者たちの中で、おれは今か今かとその姿を待ち望む。
『Here he comes!(彼が来たぞ!)』
誰かの声。合図したかのように一斉に向けられるカメラの先には──
『He looks the coolest.(彼は最高に格好いいね)』
『Yeah. I think he is the best of the Japanese!(ええ。日本人の中で一番だと思うわ!)』
『Nothing beats Mikado!(やっぱり三門が最高だ!)』
賞賛の声を浴び、最先端のファッションに身を包み、こちらへと近付いてくる。
颯爽と、凛と、優雅に、セクシーに。その姿は、一言では言い表せないほど魅力的で。
おれは、この場にいる他の誰よりも彼の最高の姿をカメラに収めたくて、ただひたすらにシャッターを切った。
正面、右、左、斜め。ありとあらゆる角度から一瞬たりとも見逃さないように…そしてこの眼に記録する。
「───」
「…っ!」
刹那、彼と目が合う。1秒にも満たない時間。それが、3年ぶりに初めて視線を交わした瞬間だった。
*****
この3年の間におれは三門との約束を果たすため、風景だけではなく、人物撮影にも力を注ぐようになった。
始めの内は上手くいかない事も多かったが、努力の甲斐あって何度か受賞をされるようにまでなった。
…その間、三門と顔を合わせる事は一度もなかった。でも、週に一度届く彼からの手紙がおれを支えてくれた。
返事が返ってくる度、三門がどんどん成長していっているのが分かって、自分も負けていられないと鼓舞する事が出来た。
───そして、待ちに待った今日がやって来たのだ。
*****
コレクション最終日の夜、数多のモデルを撮り終えたカメラマンたちがそれぞれの帰路につく中、おれは一通の手紙を手に『とある場所』へと向かっていた。
差出人の名前は無く、中身は『とある場所』を示した地図と一言『待ってる』という一文だけ。
でも、誰からの手紙かすぐ分かった。見間違える訳ない。この3年、この文字をずっと見てきたのだから。
「…ここって」
はやる気持ちを抑え、辿り着いたその場所は───教会。
周囲を見回すも彼の姿はどこにもない。
「入れって事…?」
恐る恐る教会の重厚な造りの扉を開ける。けれど、教会の中は真っ暗で。
僅かに差し込む月明かりを頼りに歩を進めていき、背後でゆっくりと扉が閉まったその時──
「!!」
突然、灯りが点いた。
眩しさに目が眩む最中、見えた人影におれは───
その姿を収めようと手にしたカメラでシャッターを切る者たちの中で、おれは今か今かとその姿を待ち望む。
『Here he comes!(彼が来たぞ!)』
誰かの声。合図したかのように一斉に向けられるカメラの先には──
『He looks the coolest.(彼は最高に格好いいね)』
『Yeah. I think he is the best of the Japanese!(ええ。日本人の中で一番だと思うわ!)』
『Nothing beats Mikado!(やっぱり三門が最高だ!)』
賞賛の声を浴び、最先端のファッションに身を包み、こちらへと近付いてくる。
颯爽と、凛と、優雅に、セクシーに。その姿は、一言では言い表せないほど魅力的で。
おれは、この場にいる他の誰よりも彼の最高の姿をカメラに収めたくて、ただひたすらにシャッターを切った。
正面、右、左、斜め。ありとあらゆる角度から一瞬たりとも見逃さないように…そしてこの眼に記録する。
「───」
「…っ!」
刹那、彼と目が合う。1秒にも満たない時間。それが、3年ぶりに初めて視線を交わした瞬間だった。
*****
この3年の間におれは三門との約束を果たすため、風景だけではなく、人物撮影にも力を注ぐようになった。
始めの内は上手くいかない事も多かったが、努力の甲斐あって何度か受賞をされるようにまでなった。
…その間、三門と顔を合わせる事は一度もなかった。でも、週に一度届く彼からの手紙がおれを支えてくれた。
返事が返ってくる度、三門がどんどん成長していっているのが分かって、自分も負けていられないと鼓舞する事が出来た。
───そして、待ちに待った今日がやって来たのだ。
*****
コレクション最終日の夜、数多のモデルを撮り終えたカメラマンたちがそれぞれの帰路につく中、おれは一通の手紙を手に『とある場所』へと向かっていた。
差出人の名前は無く、中身は『とある場所』を示した地図と一言『待ってる』という一文だけ。
でも、誰からの手紙かすぐ分かった。見間違える訳ない。この3年、この文字をずっと見てきたのだから。
「…ここって」
はやる気持ちを抑え、辿り着いたその場所は───教会。
周囲を見回すも彼の姿はどこにもない。
「入れって事…?」
恐る恐る教会の重厚な造りの扉を開ける。けれど、教会の中は真っ暗で。
僅かに差し込む月明かりを頼りに歩を進めていき、背後でゆっくりと扉が閉まったその時──
「!!」
突然、灯りが点いた。
眩しさに目が眩む最中、見えた人影におれは───
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