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しおりを挟む「……はあぁ」
思わず深い溜め息を零す。
「何をうじうじ悩んでんのかと思えば、そんな事かよ」
「な、そんな事って…!おれは真剣に、」
「真剣に、オレとの未来を考えたんだろ?」
考えた上で、オレのためを想って身を引こうと決めた。
正直、そんないじらしい事を言われて嬉しく思わない奴はいないと思う。
だってそうだろう?それほどまでに自分との未来を真剣に考えてくれたという事なのだから。
「確かにオレは今の地位に甘んじる気はねぇ。…だがな、お前を手放す気も毛頭ねぇんだよ」
「…っ、でもおれは──」
「3年だ」
「え…?」
「3年後、オレはこの世界で大成してみせる。だからお前も、オレに釣り合う人間になって待ってろ」
雨月の不安は分からなくもない。だが、そんなのオレが誰にも文句のつけようがないくらいの人間になれば良いだけの話だ。
「…それでも、誰も認めてくれなかったら?」
「んなもん、鼻で笑い飛ばしてやりゃいいだろ」
時代遅れだってな。
「雨月、オレはお前が好きだ。この先どんな事が起きても、お前だけは一生手放さねぇって誓ってやるよ」
「…っ」
雨月の左手を取って、その薬指に口付ける。
「必ず迎えに行く。『ここ』はそれまであけとけ」
今はまだ何も贈れやしないが、その時が来たら必ずオレの想いを。
「約束だ」
そう言って顔を上げると、雨月はくしゃっと顔を歪めて泣いていた。
「…本当に?」
「ああ」
「…おれは、期待しても…良いんですか?」
「っ、当たり前だろ」
「ん、」
その切なげな声に、オレは噛み付くように唇を重ねた。
「み、かど…三門…っ」
キスの合間に縋るようにオレの名を繰り返し呼ぶ声は、まるで子供が母親を呼んでいるようで。
絶え間なく流れる雨月の涙を唇で拭いながら、言い聞かせるように囁く。
「…期待しろ、雨月」
────オレとお前の、未来に。
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