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しおりを挟む「写真って、撮る時にその人の癖みたいなものがでるんですよ」
そう言って、雨月は例の週刊誌が載せた写真を指差す。
「ここ、見て下さい」
雨月が見るように促したそこには、撮影者の名前があった。
「こいつが今更何だって言うんだよ」
大川 潮。
こいつがこの週刊誌を発行している□□会社のカメラマンである事はもう調査済みだ。
「この写真、この人が撮ったものではありません」
「あ?何でそんな事分かる──」
言いかけて、さっき雨月が言った言葉を思い出す。それを察したのか、雨月は一つ頷いてみせた。
「そうです。おれはこの撮り方をする人を知っています」
「誰だよ」
「名前は小林 優。俺が通っていた大学の留学生でした。同じ日本人という事もあって、彼とはよく話をする機会がありました」
「お前、まさか…」
「はい、会って来ました。幸いにも当時と連絡先は変わっていなかったので」
「…で、結果は」
「彼が撮ったもので間違いありませんでした」
「じゃあ──」
「でも、彼は犯人ではありません」
「は? どういう事だよ」
思わず、身を乗り出す。
「結論から言うと、彼は脅されてあの写真を撮ったそうです」
「脅された?」
「はい。彼の高校の先輩だそうです。その…あまり良い先輩ではなかったそうで、金銭をよく要求されていたと。今回の事も、従わなければカメラマンとしての道を絶つと脅されて逆らえなかったと、そう言っていました」
カメラマンとしての道を絶つと言える程の権力を持ち、今回の騒動の犯人である人間。
「………じゃあ、誰なんだよ。そいつを脅したって奴は」
…誰だ?少なくとも、オレに悪意を持つ人間のはずだ。じゃないとこんな事やらないだろう。
頭の中で思い当たる人物を思い浮かべながら、雨月の答えを待つ。
「───和泉 竜雅」
「!!」
それは、予想だにしていない名前だった。
…竜雅?竜雅だと?
「彼に言われた通りに写真を撮り、匿名で送ったそうです。…彼、君と同じ事務所の方ですよね」
「…ああ」
和泉 竜雅。オレと同じ事務所に所属しているモデル。年齢は一つ上で、芸歴もオレより長い。
「ちょっと待てよ。本当に竜雅なのか?」
オレとは違い、真面目で面倒見もよくて、スタッフからの受けも良い。あの嘘のニュースが流れた時だって、疑われる度にオレを庇ったりしていたあの竜雅が?
金銭を要求?脅迫?挙句の果てに、実はオレを嵌めようした犯人?
「……は、はは、ははははっ!」
「………」
「なるほどなぁ、どうりで分からねえ訳だ」
あいつ、猫被ってやがったのか。それも大きな大きな猫を。
「…よくもオレを騙しがったな」
という事は、女プロデューサーもこいつとグルだったに違いない。
いとも簡単に嵌められてしまった自分もそいつらも許せなくて、怒りが沸々と腹の底から湧き上がってくる。
「おい、雨月」
「はい」
「さっきの話、ちゃんと録音してんだろうな」
「勿論。ああ、小林くんはちゃんと買収しておきましたよ」
これでこちらの見方をしてくれるだろう、と。
「は、上等だ」
思わずニヤリと口角が上がってしまう。今、オレはモデルにあるまじき顔をしている事だろう。
───さあ、反撃の時間だ。
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