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二十三
しおりを挟む「……良い?」
「うん。そうすれば誰も傷付かないんでしょ?なら、それが一番だよ」
「………に………」
「? 八代く──」
顔色が変わったと思った次の瞬間、身体に衝撃を感じた。背中に走った衝撃に声を上げる間もなく、腹部に重みが乗る。見ると、仰向けに倒れた俺の上に八代君が跨っていた。
え、え? これどういう状況!?
まるで押し倒されているような状況に困惑する。
「…本当に、そう思っておるのか」
「…へ?」
グッと襟を掴まれ、近づいた八代君の眼は冷たく、けれど怒りを孕んでいるように強い眼差しをしていた。
「何故怒らん。お主の自己犠牲を誰かが手放しで喜んでくれるとでも思うておるのか。誰も知らんのじゃぞ…知ろうともせんのじゃぞ」
「や、つしろ君…?」
「なぜ理不尽をそうも容易く受け入れられる。望んだものではないのに、どうしてそこまで妥協できる。人間は感情の生き物じゃろうが。もっと…怒るなり悲しむなり、ワシに逆上するなりすれば良いじゃろう!」
どうしてだろう。
底冷えするような、凄く怖い顔で怒ってるのに、貶す言葉をいっぱい言われているのに
「綺麗事をほざくでない! この、阿呆…っ」
俺には、まるで泣いているように見えたんだ。
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