67 / 87
二十一
しおりを挟む「己だけしか浄化しないはずのお主の魂が何故こやつも浄化したのか…ワシにも分からん。ただ、あの時には既にもう一度顕現させられる程には浄化されておった」
「じゃあ、なんでその時俺に『やる』なんて言ったの?」
使い捨てなくても良い程の状態だったのならば、尚更どうしてそう言ったのかが分からない。
だけど、返ってきた理由は意外なものだった。
「…そやつが言ったのじゃ。今しばらくお主の傍にいたいと」
「え?」
「ワシが使役しておる猫達は、元はこの世に生きておった者達じゃ。して、どうやらそやつは生前お主に恩があったようじゃな」
恩? 何かしたっけ…?
「猫には魔を払う──つまり厄除けの力がある。ワシが顕現させずとも、雑魚霊を退けるくらいの力はある。お主の傍にいて、恩返ししたいとそやつが望んだのじゃ」
だから俺に「やる」と言ったのだと八代君は言った。
今日、久しぶりに、やたらと不運に見舞われたのはこの仔を持っていなかったからだと今更ながらに気が付いた。
「そっか…。君のお陰だったんだね。ありがとう」
スリスリと顔を俺の膝に擦り付ける猫の頭を撫でると、嬉しそうに鳴いた。
「宗介」
「何?」
不意に呼ばれた名に、猫に向けていた視線を戻すと
八代君は真剣な表情をしていた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
生まれ変わったら、彼氏の息子でした
さくら怜音/黒桜
BL
貧乏アパートで恋人と幸せな日々を送っていた矢先、不慮の事故で死んでしまった良一は、サラリーマン風の天使に「転生希望調査」をされる。生まれ変わっても恋人の元に戻りたいと願うも、「代わりに二度と恋は実らない」と忠告されたその世界は、確かに元恋人・享幸の腕の中から始まったが――。
平成→令和へ。輪廻転生・やりなおし恋愛譚。
2021年1月に限定配信された「天上アンソロジー 〜From misery to happiness」収録作品です。
※単話配信に伴い、タイトルを変更しました。表紙絵:咲伯梅壱様
愛恋の呪縛
サラ
BL
── 少年は愛された、己の全てを引き換えに ──
世は、人と妖魔が拮抗する時代。
不思議な力を持つ少年「七瀬 日向」は、幼なじみから1000年前に封印された「鬼の王」の伝説を聞く。
だが、謎が多いその伝説を、日向はひとつも信じなかった。
そんなある日、日向は森の奥で不思議な祠を見つける。
何かに導かれるようにして日向が手を伸ばした途端、彼の前に現れたのは、封印から目覚めた鬼の王だった。
それが、全ての始まりだった……。
「気に入った、小僧……我のものになれ」
1000年止まっていた地獄が、再び歯車を動かす。
封印を解く鍵となった日向は、鬼の王に強力な呪縛をかけられ、彼の所有物となってしまう。
なぜ日向は、王の封印を解くことができたのか。
命を握られた少年と、愛を知らない史上最強の鬼の王。
全ての謎は、この地に眠っている………………。
※こちら、大変長い作品となっております。
主役以外のキャラ同士の、NL模様も少しありますので、苦手な方はお控えください。
詳しくは、近況ボードでお確かめ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる