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(二十)
しおりを挟む「山田さん!? どうし…」
戻ってきた俺の目にまず飛び込んできたのは、ぐったりと背中を預けるように座っている吉田さんと、体重差がある山田さんの体躯を不釣り合いな程に細身の若い男が片手で首を締め上げている姿だった。
その見覚えがある背格好に、ドクンッと心臓が鳴って。指先が震え出す。
「ん? あ~この前のお兄さん見ぃっけー」
恐ろしい程に綺麗な赤い瞳が、俺に向けられる。
まるで作り物のようなそれは、どこまでも吸い込まれてしまいそうで恐ろしかった。
「なん、で」
呼吸が早い。口の中が急激に乾いていく。
「もーどこ行ってたのー? 折角会いに来たのにいないんだもん。暇だからこのおじさん達と遊んでたんだー」
「…なせ」
「えー?」
「その人を、今すぐ離すんだ!」
「えーどうしよっかなー? ぼくまだ遊び足りないんだよねぇ」
「き、君の狙いは俺なんだろ? なら、その人は関係ないはずだ」
震えそうになる声を必死に絞り出す。
男の手の中にある山田さんは口から泡を吹いている。吉田さんの容態も分からないが、今は少しでも男の意識を二人から逸らさなければ。
その思いで慎重に説得を試みると、予想に反して男はあっさりと要求を受け入れた。
「んー…確かに、それもそっかー。このおじさん美味しくなさそうだし…いいよー離してあげる」
「! じゃあ…」
「じゃあ、もうコレ、要らないよね」
「…え?」
直後、俺のすぐ横を何かが勢いよく通り過ぎて行った。
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