終の九生

碧月 晶

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十九

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ガコンとペットボトルが落ちる。

それを拾い上げて、俺は深く溜め息を吐いた。


「だめだなー…こんな事で泣いちゃうとか…」


嬉し泣きだけど、出来るだけ俺は泣かない事にしている。嬉しいなら笑えば良いのだから。


「俺にもやっと運が回ってきたのかな」


少しずつではあるが確実に良くなってきていると思う。


「もしかして、八代君のお陰だったりするのかな?」


つい一ヶ月前に八代君と話した時の事を思い出す。

正直、彼の話を(完璧ではないが…)信じてしまっている自分に気付いた時は驚いた。

自分でもどうしてこんなにあっさりと受け入れられているのか甚だ疑問で仕方がない。

彼の話を聞いて、今度図書館にでも行って少し調べてみようかと思っているくらいだ。


こんな事、あの二人にだって言えない。勿論、彼らを信用していない訳ではない。

…ないが、相談しようものなら、きっと馬鹿にされている、揶揄われている、作り話だと

人の良い彼らは俺の身を案じてくれるだろう。


でも、俺の脳裏に、常に記憶の新しい所であの眼がチラつくのだ。

あの神秘的な薄紫色の瞳が。


あの瞳に見つめられると、何故だか信じられると思ってしまう。

理由は分からない。ただ、途轍とてつもなく惹きつけられた。


「──ぎゃああああ!!」
「!?」


この声は…山田さん!?

 
突然の闇をつんざく悲鳴に、俺は急いで元来た道を戻った。
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