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※ * →区切り
<> →視点転換
チリッ
「んぅ~…――?」
耳辺りに痛みが走った。
目が覚めて右耳を触るが、特に何か異変はない。
しいて言うならば、アルデアの魔力を感じる。
そこで周りを見渡す。
「アルデア…?」
何だろう、彼がいない事は今までよくあったのに。少し寂しい。
久しぶりに子守歌で寝かしつけてくれたからかな?
もう子供じゃないと言いたいけど…。
自身の手を見る。小さくぷくぷくしている。
周りが成長していく中、自分だけ変化がない事に焦りはある。
でも、どうしたらいいのか分からない。
大人になりたいって願えばいいのかな。
安直すぎる考えだけど、試したことはなかった。魔法はあるんだし、ちょっとくらいなら――
“いつまでも6歳児は嫌です。少しでいいので成長させてください”
多分祈る相手はお母さんだった気がするけど、上手くいくかな。
ほんの数分待つ。
特に変化はないかな?
その時、また耳にピリッと痛みが走り、身体を眩い光が包む。
何か急に怖くなって叫んでしまう。
「ぁ…アルデアッ!!!」
足が竦んでその場に座り込み、自分の両腕を抱き込む。
眩い光の向こうに、アルデアの叫ぶ声が聞こえる。来てくれた。
しばらくして、光が収まり、光で眩んだ目も視界を取り戻してきた。
アルデアに駆け寄ろうとすると、アルデアの方が必死の形相で近づいてきて抱きしめてきた。一瞬思考が停止したけど、アルデアが私に彼の上着をかけてくれた。
彼の顔を覗き込むと、「せっかく鎮めてきたのに」とか何かブツブツと言っている。それより、何?詰め寄る彼に聞くと、真っ赤になって早口で説明してくれた。
「何でいきなり成長してんだよ!裸でうろつくな!俺だからよかったものの…俺でも良かったのか?――そうじゃなくてっ、服出してやるからすぐ着替えろっ…!」
はたと気付く。
私、何も着ていなかった。真っ裸。
アルデアの上着を羽織った状態で、自分の身体を眺める。
…成長している。というか成長しすぎ。視線が高くなってる…。
膨らんだ胸で足元が見えないって…、物凄い恥ずかしい!!
アルデアに見られたぁっっ!こんな…裸なんて生まれた頃以外誰にも見せてないのに!
自分が念じたのが悪いけど、八つ当たり気味にアルデアを睨む。
あ、そうだ。
「アルデア。さっきから何回か耳辺りに痛みが走るんだけど何でかな?」
アルデアの赤くなっていた顔が一気に血の気が引いたように青褪める。
ワケを知っているのかな?それも深刻そう…?
「お前、具体的にいつ痛みが走ったか覚えているか?」
「えっと、目が覚める瞬間と、成長したいって念じて光が出る前、かな…何か分かったの?」
詰め寄ろうとして手で制される。
あ、まだ裸……――ううぅぅ~、穴に入りたい。
前を隠すように上着の前のボタンを留めていく。上着がお尻に当たってくすぐったいけど隠れていることを考えれば大丈夫よね?
念のためアルデアの方を見れば、顔も耳も真っ赤にして固まっていた。
その場でくるっと一回転して大丈夫と聞けば、無言で何度も頷かれた。
女慣れしてそうなのに、そこまで恥ずかしいものかな?
向こう側から「俺の服を着てる…可愛い」という言葉を拾ってしまった。
「~~~~!」
アルデアの服をじかに来ていることに対する羞恥と、下着を身につけてない事で身体が熱くなってくる。うぅ~、下がムズムズしてきた。こういう時に同性の誰かがいてくれれば…――
そうだ!
「ダヴィード…!」
呼ぶと、一瞬にして何もない所から音もなく現れた。
アルデアと同じく私の監視役についた…男です。同性の監視役いません、ぐすん。
「お嬢、どうしたんですか?…――はっ!」
彼は私を見るなりアルデアの方を睨みつけた。
「貴様っ!お嬢に無体を働いたなっ…成敗してやる!」
アルデアに突進しながら、手裏剣を何度か放つと、何かを懐から取り出し…――ダイナマイト!?ヤバいって!!
アルデアは顔を引き締めて、攻撃態勢に入った。
彼は鞘から剣を抜くと、手裏剣を全て弾き、魔力を帯びた剣を構える。
アルデアの剣に向かってダイナマイトが飛んでくる。
だけど、当の本人は冷静そのもので、低く構えダイナマイトを見据えていた目を閉じる。
その直後、ダイナマイトは空中で爆ぜ、剣が交わる音がした。
アルデアが身体を反転した状態で、彼と剣を交わらせ睨み合っていた。
先に口を開いたのは、アルデアだった。
「―――、てんめぇ…話も聞かずにカウンター攻撃しかけてくんじゃねぇ」
睨まれ、距離を取ると、優雅にお辞儀をする。
「いやぁ~すまないね。アルデアが調子に乗っているようなのでお仕置きをと思いまして…」
執事のような佇まいや仕草なのに、アルデアを睨めつける目はヤクザ顔負けの眼光の鋭さだ。私に対して敬語の彼もアルデアにはタメ口で容赦ない。
でも――
「ダヴィ―ド、お願いがあって呼んだのだけど…」
「何ですかっ?何なりとお申し付けください!!」
こうやって目をキラキラさせて話を聞いてくれる彼を見るのが好きなのよね。
「女物の服が欲しくて、用意してほしいの。また魔力切れになるのは避けたいし…」
そう、まだ回復したばかりとはいえ、無理は禁物なのです。
今の身体に合うサイズの服持ってないし、作るのも流石にしんどい。
ダヴィ―ドは深く頷き、服を収納スペースから取り出しながら聞いてくる。
「お嬢、そこの男は女性への心遣いは皆無ですので、いつでも私を呼んでくださいね」
「なっ…てめぇも男だろうが!何をお、女物の下着とか平気で触っている!」
ダヴィ―ドは半目でアルデアを見ると、あからさまに大きなため息を吐いた。
「アルデア、お嬢は羞恥のあまり、君に恥ずかしいながらも服を催促したはずだが…?」
「それはっ…上着を着せた後に用意しようと…――」
「君の頭がショート寸前で、お嬢は私に救いを求めたではありませんか。」
最後に、君は世話係として失格ですね、と忠告する。
空気がピシッと音を立てた気がして、私は困惑したまま口を挟めない。
アルデアは顔を伏せて、すまないと言って立ち去った。
思わず駆け寄ろうとしたが、何と声を掛けたらいいか分からず、立ち止まる。
その姿を目で追っていると、ダヴィードが声を掛けてきた。
「お嬢、遮断魔法をかけたので、カーテンの向こうで着替えてください」
ダヴィードの指の先を目で追うと、試着室のようなものがあった。
そこで着替えればいいのね。
「ありがとう、着替えたら声かけるわね」
「はい、お待ちしております」
恭しくお辞儀をするダヴィードに背を向け、着替えに行く。
もう既に遮断フィールドの中に入っていて、その後の言葉を聞くことはなかった。
「お嬢、早く心に決めた人を作ってくださいね。私にはあいつが不憫に思えて仕方ないんですよ…」
*
ダヴィードが用意してくれた服は、裾がふわっと広がった、丸襟の所に白い花があしらってある白いAラインワンピだった。一緒に置かれていたのは、淡い藍色のショールとバレーシューズ。
それと、魔法で身体に合った形になる下着があった。…………スリーサイズ分かるわけないよね、ははは。
色々と気遣ってくれてるな。
いきなり体型も身長も変わって、靴もヒールがあると困るし、身体のラインが出る服は引ける。…これならいつか外出る時大丈夫かな。ダヴィードに聞いてみよう。
シャッ―――
「あ、お嬢。着替えましたか。――似合っていますよ」
ダヴィードがこちらを向き、賞賛の言葉をかけてくれる。
普段言われない歯の浮くような言葉の連続に恥ずかしくなるけど、ダヴィードはお世辞を言わないのを知っているため、自分の容姿も格好も自信が持てた気がする。
「…ありがとう、ダヴィード」
「いえ、どういたしまして。…お嬢、急に成長した訳ですが、心は追いついていますか」
「え?」
「お嬢は感情豊かで思いやりのある方だと十分理解しております。ですが、突然の変化に塞ぎこんでしまわないか、私は心配なのです」
労わるような目を向けられ、私は首を横に振った。
「あのね、自分でもびっくりしているんだけど、何かこう…しっくりきてるの。最近モヤモヤしていたのが急に晴れた感じ。今ね、心に心地のいい感情があるの。それを大事に育てたいなって…。」
漠然とした私の返答に、ダヴィードは目を細めて相槌を打つ。
「それは、大事な感情ですね。私はお嬢の味方でございます。何か相談があるんですよね?どうぞ、私にお聞かせください。」
ダヴィードの好意に甘えて、相談してみた。
一度しか会っていないけど、気になる人がいる事。
彼の元にこれからも訪ねてもいいか。そして、今日これから行ってきていいか。
「いいですよ。人間との極度の交流を忌み嫌う者はいますが、私はお嬢が信頼できる相手なら自由に会いに行ってもよろしいと思っています。」
私はダヴィードの客観的な意見にいつも助けられている。
今回も否定されるどころか、送り出されることにホッとした。
「じゃあ、行ってきます」
「あ、お待ちください」
ダヴィードは私に駆け寄ると、服一着を渡してくれた。
「これは?」
「お嬢がもし必要になった時に着てください。化粧などは私を呼んでくださればいつでも駆けつけますので!」
渡されたものは、上質な生地をふんだんに使ったドレスのようだ。
これは、人として使う事があるかもしれないって事ね。
「分かったわ。いつになるか分からないけど呼ぶわ。」
「ええ、私はその時を楽しみにしております。」
そのまま別れを告げ、寝起きと急成長で軋む身体を解し、ゲートに向かっていった。
<> →視点転換
チリッ
「んぅ~…――?」
耳辺りに痛みが走った。
目が覚めて右耳を触るが、特に何か異変はない。
しいて言うならば、アルデアの魔力を感じる。
そこで周りを見渡す。
「アルデア…?」
何だろう、彼がいない事は今までよくあったのに。少し寂しい。
久しぶりに子守歌で寝かしつけてくれたからかな?
もう子供じゃないと言いたいけど…。
自身の手を見る。小さくぷくぷくしている。
周りが成長していく中、自分だけ変化がない事に焦りはある。
でも、どうしたらいいのか分からない。
大人になりたいって願えばいいのかな。
安直すぎる考えだけど、試したことはなかった。魔法はあるんだし、ちょっとくらいなら――
“いつまでも6歳児は嫌です。少しでいいので成長させてください”
多分祈る相手はお母さんだった気がするけど、上手くいくかな。
ほんの数分待つ。
特に変化はないかな?
その時、また耳にピリッと痛みが走り、身体を眩い光が包む。
何か急に怖くなって叫んでしまう。
「ぁ…アルデアッ!!!」
足が竦んでその場に座り込み、自分の両腕を抱き込む。
眩い光の向こうに、アルデアの叫ぶ声が聞こえる。来てくれた。
しばらくして、光が収まり、光で眩んだ目も視界を取り戻してきた。
アルデアに駆け寄ろうとすると、アルデアの方が必死の形相で近づいてきて抱きしめてきた。一瞬思考が停止したけど、アルデアが私に彼の上着をかけてくれた。
彼の顔を覗き込むと、「せっかく鎮めてきたのに」とか何かブツブツと言っている。それより、何?詰め寄る彼に聞くと、真っ赤になって早口で説明してくれた。
「何でいきなり成長してんだよ!裸でうろつくな!俺だからよかったものの…俺でも良かったのか?――そうじゃなくてっ、服出してやるからすぐ着替えろっ…!」
はたと気付く。
私、何も着ていなかった。真っ裸。
アルデアの上着を羽織った状態で、自分の身体を眺める。
…成長している。というか成長しすぎ。視線が高くなってる…。
膨らんだ胸で足元が見えないって…、物凄い恥ずかしい!!
アルデアに見られたぁっっ!こんな…裸なんて生まれた頃以外誰にも見せてないのに!
自分が念じたのが悪いけど、八つ当たり気味にアルデアを睨む。
あ、そうだ。
「アルデア。さっきから何回か耳辺りに痛みが走るんだけど何でかな?」
アルデアの赤くなっていた顔が一気に血の気が引いたように青褪める。
ワケを知っているのかな?それも深刻そう…?
「お前、具体的にいつ痛みが走ったか覚えているか?」
「えっと、目が覚める瞬間と、成長したいって念じて光が出る前、かな…何か分かったの?」
詰め寄ろうとして手で制される。
あ、まだ裸……――ううぅぅ~、穴に入りたい。
前を隠すように上着の前のボタンを留めていく。上着がお尻に当たってくすぐったいけど隠れていることを考えれば大丈夫よね?
念のためアルデアの方を見れば、顔も耳も真っ赤にして固まっていた。
その場でくるっと一回転して大丈夫と聞けば、無言で何度も頷かれた。
女慣れしてそうなのに、そこまで恥ずかしいものかな?
向こう側から「俺の服を着てる…可愛い」という言葉を拾ってしまった。
「~~~~!」
アルデアの服をじかに来ていることに対する羞恥と、下着を身につけてない事で身体が熱くなってくる。うぅ~、下がムズムズしてきた。こういう時に同性の誰かがいてくれれば…――
そうだ!
「ダヴィード…!」
呼ぶと、一瞬にして何もない所から音もなく現れた。
アルデアと同じく私の監視役についた…男です。同性の監視役いません、ぐすん。
「お嬢、どうしたんですか?…――はっ!」
彼は私を見るなりアルデアの方を睨みつけた。
「貴様っ!お嬢に無体を働いたなっ…成敗してやる!」
アルデアに突進しながら、手裏剣を何度か放つと、何かを懐から取り出し…――ダイナマイト!?ヤバいって!!
アルデアは顔を引き締めて、攻撃態勢に入った。
彼は鞘から剣を抜くと、手裏剣を全て弾き、魔力を帯びた剣を構える。
アルデアの剣に向かってダイナマイトが飛んでくる。
だけど、当の本人は冷静そのもので、低く構えダイナマイトを見据えていた目を閉じる。
その直後、ダイナマイトは空中で爆ぜ、剣が交わる音がした。
アルデアが身体を反転した状態で、彼と剣を交わらせ睨み合っていた。
先に口を開いたのは、アルデアだった。
「―――、てんめぇ…話も聞かずにカウンター攻撃しかけてくんじゃねぇ」
睨まれ、距離を取ると、優雅にお辞儀をする。
「いやぁ~すまないね。アルデアが調子に乗っているようなのでお仕置きをと思いまして…」
執事のような佇まいや仕草なのに、アルデアを睨めつける目はヤクザ顔負けの眼光の鋭さだ。私に対して敬語の彼もアルデアにはタメ口で容赦ない。
でも――
「ダヴィ―ド、お願いがあって呼んだのだけど…」
「何ですかっ?何なりとお申し付けください!!」
こうやって目をキラキラさせて話を聞いてくれる彼を見るのが好きなのよね。
「女物の服が欲しくて、用意してほしいの。また魔力切れになるのは避けたいし…」
そう、まだ回復したばかりとはいえ、無理は禁物なのです。
今の身体に合うサイズの服持ってないし、作るのも流石にしんどい。
ダヴィ―ドは深く頷き、服を収納スペースから取り出しながら聞いてくる。
「お嬢、そこの男は女性への心遣いは皆無ですので、いつでも私を呼んでくださいね」
「なっ…てめぇも男だろうが!何をお、女物の下着とか平気で触っている!」
ダヴィ―ドは半目でアルデアを見ると、あからさまに大きなため息を吐いた。
「アルデア、お嬢は羞恥のあまり、君に恥ずかしいながらも服を催促したはずだが…?」
「それはっ…上着を着せた後に用意しようと…――」
「君の頭がショート寸前で、お嬢は私に救いを求めたではありませんか。」
最後に、君は世話係として失格ですね、と忠告する。
空気がピシッと音を立てた気がして、私は困惑したまま口を挟めない。
アルデアは顔を伏せて、すまないと言って立ち去った。
思わず駆け寄ろうとしたが、何と声を掛けたらいいか分からず、立ち止まる。
その姿を目で追っていると、ダヴィードが声を掛けてきた。
「お嬢、遮断魔法をかけたので、カーテンの向こうで着替えてください」
ダヴィードの指の先を目で追うと、試着室のようなものがあった。
そこで着替えればいいのね。
「ありがとう、着替えたら声かけるわね」
「はい、お待ちしております」
恭しくお辞儀をするダヴィードに背を向け、着替えに行く。
もう既に遮断フィールドの中に入っていて、その後の言葉を聞くことはなかった。
「お嬢、早く心に決めた人を作ってくださいね。私にはあいつが不憫に思えて仕方ないんですよ…」
*
ダヴィードが用意してくれた服は、裾がふわっと広がった、丸襟の所に白い花があしらってある白いAラインワンピだった。一緒に置かれていたのは、淡い藍色のショールとバレーシューズ。
それと、魔法で身体に合った形になる下着があった。…………スリーサイズ分かるわけないよね、ははは。
色々と気遣ってくれてるな。
いきなり体型も身長も変わって、靴もヒールがあると困るし、身体のラインが出る服は引ける。…これならいつか外出る時大丈夫かな。ダヴィードに聞いてみよう。
シャッ―――
「あ、お嬢。着替えましたか。――似合っていますよ」
ダヴィードがこちらを向き、賞賛の言葉をかけてくれる。
普段言われない歯の浮くような言葉の連続に恥ずかしくなるけど、ダヴィードはお世辞を言わないのを知っているため、自分の容姿も格好も自信が持てた気がする。
「…ありがとう、ダヴィード」
「いえ、どういたしまして。…お嬢、急に成長した訳ですが、心は追いついていますか」
「え?」
「お嬢は感情豊かで思いやりのある方だと十分理解しております。ですが、突然の変化に塞ぎこんでしまわないか、私は心配なのです」
労わるような目を向けられ、私は首を横に振った。
「あのね、自分でもびっくりしているんだけど、何かこう…しっくりきてるの。最近モヤモヤしていたのが急に晴れた感じ。今ね、心に心地のいい感情があるの。それを大事に育てたいなって…。」
漠然とした私の返答に、ダヴィードは目を細めて相槌を打つ。
「それは、大事な感情ですね。私はお嬢の味方でございます。何か相談があるんですよね?どうぞ、私にお聞かせください。」
ダヴィードの好意に甘えて、相談してみた。
一度しか会っていないけど、気になる人がいる事。
彼の元にこれからも訪ねてもいいか。そして、今日これから行ってきていいか。
「いいですよ。人間との極度の交流を忌み嫌う者はいますが、私はお嬢が信頼できる相手なら自由に会いに行ってもよろしいと思っています。」
私はダヴィードの客観的な意見にいつも助けられている。
今回も否定されるどころか、送り出されることにホッとした。
「じゃあ、行ってきます」
「あ、お待ちください」
ダヴィードは私に駆け寄ると、服一着を渡してくれた。
「これは?」
「お嬢がもし必要になった時に着てください。化粧などは私を呼んでくださればいつでも駆けつけますので!」
渡されたものは、上質な生地をふんだんに使ったドレスのようだ。
これは、人として使う事があるかもしれないって事ね。
「分かったわ。いつになるか分からないけど呼ぶわ。」
「ええ、私はその時を楽しみにしております。」
そのまま別れを告げ、寝起きと急成長で軋む身体を解し、ゲートに向かっていった。
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