6 / 20
第一章 ぶつかり合う感情
憂鬱。でも律儀な少女
しおりを挟む
一週間前、私の婚約者であるヴァーミリアン様からいただいた手紙は何時ものそれと違った内容だった。
私、ナーロレイ・キュランダは王家主催のお茶会に招かれたのだ。
勿論王家からのお誘いを断れるはずもなく、今日を迎えてしまった。
(…仕方ないわね。この時期に急遽お茶会を開いた理由は分かるけど…)
今日のお茶会は王妃様が提案したもので、彼女が国一のお茶会好きだという理由もあるけれど…。ここ一年間で婚約が決まった者たちへの祝いを兼ねている。
そろそろ出発しなくてはいけない時間になっていて、時間ギリギリまで図書館にいたところ呼ばれてしまいましたの。
・・・。
ボイコットはしてないわ!事前に余所行きの格好に着替えていますわ!
玄関まで行くと、機嫌のいい婚約者様が出迎えてくれました。
彼が終始ニコニコと緩み切った顔をしているのは何故でしょうか?
私にはまだヴァーミリアン様の事がよく分からないのよね…。
――まあ、私達は政略結婚で繋がった関係。
全てを理解できなくても信頼関係は築けていけるのではないかしら。
彼の手に自身の手を乗せ、馬車に乗り込む。
同い年だったかしら。
少し大きいけれど、剣だこも傷もない、真っ白な手。
私の手は手袋で覆われているけれど、世の中の淑女とは対極な、寧ろ男性のように剣だこが潰れて荒れた状態になっている。
私はこの努力の証が刻まれた手が好きだけれど、それを許してくれる殿方なんていないと思うのよね。
そういう意味でも、政略結婚の相手が面倒な相手でなくてよかったと心底思うわ。
「、しているのですか?」
「!」
気が付いたら、馬車の中で話しかけられていたみたい。
聞き逃すなんて失礼なことをしてしまったわ!
「あ・・・えっと~・・・」
冷や汗が吹き出しそうになる私を見て、ヴァーミリアン様は苦笑しながらもゆっくり問いかけてくれた。
「気にしないでください。私の話が面白くない事は私自身よく理解していますから。
コホンッ、それでは私が何を問いかけたかでしたね?
ナーロレイ嬢は、我が儘だけどカリスマ性のある方を魅力的だと感じたり、恋愛対象として見たりしていますか。」
唐突な質問ね。
――我が儘でカリスマ性のある方・・・。
交流の少ない私の頭に浮かぶのは、可愛げのある弟・ラーシュ。
あの子は私なんかより頭脳派なのに、私の方が優れていると思っている節があるのよね~。・・・互いに身内の欲目で見ている所はあるかもしれないわね。
「…私は、どうでしょうね。男女の機微には疎いの方だから恋愛なんて分からないわ。以前一度だけ弟とそういう話をしたけれど、私の理想はどうも高すぎるようだから、参考にもならないのではないかしら?」
ヴァーミリアン様は何か話したそうにしていたけれど、曖昧に笑みを浮かべて追及の手を止めさせた。
彼には何処か・・・、そう、年相応の純真さがあって、それが私には眩しすぎる。
眩い光ほど目を背けたくなるし、私の欠落した箇所が浮き彫りになるのだ。
婚約を祝うお茶会に向かう馬車の中で、既に婚約を白紙にしたいという気持ちと、彼と向き合える日が来るのかという途方もない想像が頭を占めていた。
私、ナーロレイ・キュランダは王家主催のお茶会に招かれたのだ。
勿論王家からのお誘いを断れるはずもなく、今日を迎えてしまった。
(…仕方ないわね。この時期に急遽お茶会を開いた理由は分かるけど…)
今日のお茶会は王妃様が提案したもので、彼女が国一のお茶会好きだという理由もあるけれど…。ここ一年間で婚約が決まった者たちへの祝いを兼ねている。
そろそろ出発しなくてはいけない時間になっていて、時間ギリギリまで図書館にいたところ呼ばれてしまいましたの。
・・・。
ボイコットはしてないわ!事前に余所行きの格好に着替えていますわ!
玄関まで行くと、機嫌のいい婚約者様が出迎えてくれました。
彼が終始ニコニコと緩み切った顔をしているのは何故でしょうか?
私にはまだヴァーミリアン様の事がよく分からないのよね…。
――まあ、私達は政略結婚で繋がった関係。
全てを理解できなくても信頼関係は築けていけるのではないかしら。
彼の手に自身の手を乗せ、馬車に乗り込む。
同い年だったかしら。
少し大きいけれど、剣だこも傷もない、真っ白な手。
私の手は手袋で覆われているけれど、世の中の淑女とは対極な、寧ろ男性のように剣だこが潰れて荒れた状態になっている。
私はこの努力の証が刻まれた手が好きだけれど、それを許してくれる殿方なんていないと思うのよね。
そういう意味でも、政略結婚の相手が面倒な相手でなくてよかったと心底思うわ。
「、しているのですか?」
「!」
気が付いたら、馬車の中で話しかけられていたみたい。
聞き逃すなんて失礼なことをしてしまったわ!
「あ・・・えっと~・・・」
冷や汗が吹き出しそうになる私を見て、ヴァーミリアン様は苦笑しながらもゆっくり問いかけてくれた。
「気にしないでください。私の話が面白くない事は私自身よく理解していますから。
コホンッ、それでは私が何を問いかけたかでしたね?
ナーロレイ嬢は、我が儘だけどカリスマ性のある方を魅力的だと感じたり、恋愛対象として見たりしていますか。」
唐突な質問ね。
――我が儘でカリスマ性のある方・・・。
交流の少ない私の頭に浮かぶのは、可愛げのある弟・ラーシュ。
あの子は私なんかより頭脳派なのに、私の方が優れていると思っている節があるのよね~。・・・互いに身内の欲目で見ている所はあるかもしれないわね。
「…私は、どうでしょうね。男女の機微には疎いの方だから恋愛なんて分からないわ。以前一度だけ弟とそういう話をしたけれど、私の理想はどうも高すぎるようだから、参考にもならないのではないかしら?」
ヴァーミリアン様は何か話したそうにしていたけれど、曖昧に笑みを浮かべて追及の手を止めさせた。
彼には何処か・・・、そう、年相応の純真さがあって、それが私には眩しすぎる。
眩い光ほど目を背けたくなるし、私の欠落した箇所が浮き彫りになるのだ。
婚約を祝うお茶会に向かう馬車の中で、既に婚約を白紙にしたいという気持ちと、彼と向き合える日が来るのかという途方もない想像が頭を占めていた。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
隠していない隠し部屋
jun
恋愛
真夏の深夜、庭に突然シルビオとキャルティは現れた。
そして別れを惜しむように激しいキスをする二人は、密着したまま歩いて行った・・・。
バルコニーからその二人を見ていた私。
浮気現場の目撃者も私。
そして、突然現れた二人。
絆されて結婚したエルザと、土下座して結婚してもらった夫のシルビオ。二人の結末は離婚か継続か。
そして隠し部屋は何処に⁉︎
*R15は一応保険として。
*2024・2・23 思いの外長くなってしまったので長編に変更しました。
*2024・2・23 本編完結。番外編執筆中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる