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第3章 水色の少年
受付嬢の焦燥
しおりを挟むside 受付嬢
私には焦燥感しかなかった。
朝笑顔で送り出した少年、クロムくんが夕方になっても帰ってこない。
依頼場所のクロスオードの森はギルドからそんなに離れていないから、王都のターミナルから出ている巡回馬車に乗れば3時間もかからないで往復できる。
ランクに多少あっていない依頼だったから手間取って通常1~2時間で済むものを3時間かけるまではわかる。だけど、すでにクロムくんがギルドを出てから8時間は経っている。
どうにかしなくてはと思い立ち、マスターに話を通していた時だった。
「ただいまーつかれたー」
忘れもしないあの気の抜けているくせにマスターよりも強い赤髪の少年が帰ってきた。フータ=キルティアと名乗っていた少年…いや年齢的には青年だろうが、クロムと同じように年齢よりも幼く見える。その子は圧倒的魔力量・コントロール・体術を駆使する。この国の勇者(屑)よりもよっぽど強い。
だから、私は駆け寄って懇願した。
「あっ!フータくん帰って来た!いいタイミング!帰って来たばかりですまないけど1人のギルド員探してくれない!?」
はぁ…っとため息をつかれたがしょうがない。帰ってきて休息を取ろうとするところだ。ただでさえ、私が今朝大量の依頼を押し付けたのにさらにこんなことまでさせるなんて図々しいにもほどがあるとは思っている。でも、それとこれは別だと思いたい。
するとフータくんはどこへ行ったのか聞くなり、真っ青な顔をした。この年の少年をあの森にいかすなんて…と思ったのだろう。大丈夫だとおもったのに…
「全く……早く行くからクロム?の魔力が感じられるものなんかないのか?」
そう言われ、私はさっきマスターに見せていたクロムくんの登録書類を渡した。あまりよくないだろうがコレが一番だ。
すると、フータくんの周りにとてつもない量の魔力が収束していく。そしてぽぅっと広がる感覚。魔力探知だ。まさか、クロスオードの森まで広げているの?そう思うのも無理はない距離だから。でも、この子は測定不能の限界までの魔力量を有するのだから、それくらい当然、常人の感覚で計ってはいけないのか。
「生きてはいる。けど、やられてるかも。」
そう、呟いた。やられてる、その言葉が意味するのは…
お願い!早く助けて!というまでもなく、フータくんは転移していった。
どうか…、無事でありますように。
半刻ほどたった時、フータくんが帰ってきた。その腕の中にはローブを着たまま眠っているクロムくんの姿。
ああ、よかった。
私は安堵した。でも私はフータくんから告げられた事実に驚かされた。
なんとクロム君はフータくんが発見した時にはすでにうまされていた、ということ。
とてもそうには見えなかったので、きっと彼が治療してくれたのだろう。
とてつもない安心感に襲われたせいか、私は眠ってしまっていた。
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