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第二章 出会い
第45話:どちら様でしたっけ?
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吐息をつき、ふと力を抜いたときだった。
急に何かが勢いよくぶつかってきて、わたしの体が弾かれるように横へズレた。
思わず短い悲鳴を上げる。
左肩が何かにぶつかったのは分かった。その拍子にバランスを崩し、結果的に右へ吹っ飛ぶような形になっていた。
デジャヴ。
いつぞやは後ろに向かって吹っ飛んだけれど、今度は右だ。
一瞬の間に、色々なことを考えるものだ。
オーディンス副団長がこちらへ走ってくるのが視界の端に見えた。
店員さんも何人か動いているような気がした。神薙がお忍びで来ることはお店に伝えられていて、急に複数の人が駆け出したから、それで異常を察知したのだろう。
この間のように怪我でもしようものなら、今度はお店の人に迷惑が掛かるし、また騎士団に降格人事でも出ようものなら大変だ。
気合いで踏ん張らないと、とは思ったものの勢いがありすぎて踏みとどまれない。そのまま陳列棚に激突することになった。
ガシャン、と音がした。
「い……っ」
アクセサリーが陳列されている棚だ。
ぶつかった瞬間、右肘の辺りに強い痛みがあり、電流が走ったように指先まで痺れた。
これは雷様でもうずくまるやつだ。わたしにも神薙様の意地(?)があるので頑張ってこらえる。
直感的に大事には至っていない気がした。長袖を着ているので、打撲程度ならごまかしが効く。流血騒ぎさえ避けられれば大丈夫だと思った。
それよりも、商品を壊していないかが気になった。
「リア!」
ヴィルさんが誰よりも早く猛スピードで駆けつけてきた。
イケメンはレベルが上がるとワープ機能が搭載されるようだ。きっと、格好良さと速さは比例しているに違いない。イケ仏様も俊敏だし。
わたしはまんまと抱き寄せられ、また彼の胸の中にすっぽり収まってしまっていた。
吹っ飛ばされると彼の大胸筋が現れる。これもまたデジャヴだった。
「リア、大丈夫か。ぶつけただろう? 痛むか?」
あのぅ、ヴィルさん。
すみません、ちょっとよろしいでしょうか。
痛いのはこの際どうでも良いのです。
さっきまで「リア殿」と呼んでいたのに、急に呼び捨てにされていますよね。
貴方の雄っぱいと、このタイミングでの呼び捨て。
これはズルイと思うのです。
まだ肘は痛かったけれども、もう何がなんだか分からなくなって、ぶんぶんと首を横に振っていた。
肘以外の場所はすべてが気持ちいい。
彼の胸は心地良い温もりとフィット感があり、さらには香水の良い香りに包まれていた。
アップグレードしたイケメンさんには、マイナスイオン発生機能が付いているのかも。癒し効果は森林浴の約二十五倍です(当社比)
それにしても、わたしは一体何にぶつかったのだろう?
先程までいた場所を見ると、近くに細身の女性が一人立っていた。
全然知らない人だ。
それなのに、なぜか彼女は鬼のような形相でわたしを睨みつけていた。
どちら様でしょうか?
どうしてそのようなお顔をなさっているのでしょうか。
それではほとんど般若の面です。
わたし、何かしてしまいましたか? 心当たりは何もないのですけれども、なにぶん慣れぬ異世界ですので、何か粗相をしていたらご指摘を頂きたく……。
彼の胸の中に収納された状態でぽ~っとしていた。
「そういえば血相を変えて飛び出してきたイケ仏様はどうしたかな」と、そんなことも考えていた。
ただ、ここで何を考えても、彼の甘ったるい毒に溶かされてどこかへ行ってしまう。
見ず知らずの女性の刺すような視線や般若の面は、わたしに刺さる前にトゲトゲが削られて消えてしまうのだ。
多分、ここに潜り込んでいる間のわたしは無敵だ。何をされても痛くないし怖くもない。
イケメンもこのレベルになると、核シェルター機能が付くのだろう。俊敏で癒し効果がある核シェルターともなると高性能すぎて取り扱いが難しそうだ。しかし、国宝だから仕方がない。
「リア、近くのカフェで少し休まないか?」
それをやられると、わたしが何も言えなくなってしまうのを知ってか知らずか、彼は耳元で囁くように言った。
頷くと、さっと後ろから肩を抱くようにエスコートしてくれた。
なんだか、わたし、チョロい気が……。
急に何かが勢いよくぶつかってきて、わたしの体が弾かれるように横へズレた。
思わず短い悲鳴を上げる。
左肩が何かにぶつかったのは分かった。その拍子にバランスを崩し、結果的に右へ吹っ飛ぶような形になっていた。
デジャヴ。
いつぞやは後ろに向かって吹っ飛んだけれど、今度は右だ。
一瞬の間に、色々なことを考えるものだ。
オーディンス副団長がこちらへ走ってくるのが視界の端に見えた。
店員さんも何人か動いているような気がした。神薙がお忍びで来ることはお店に伝えられていて、急に複数の人が駆け出したから、それで異常を察知したのだろう。
この間のように怪我でもしようものなら、今度はお店の人に迷惑が掛かるし、また騎士団に降格人事でも出ようものなら大変だ。
気合いで踏ん張らないと、とは思ったものの勢いがありすぎて踏みとどまれない。そのまま陳列棚に激突することになった。
ガシャン、と音がした。
「い……っ」
アクセサリーが陳列されている棚だ。
ぶつかった瞬間、右肘の辺りに強い痛みがあり、電流が走ったように指先まで痺れた。
これは雷様でもうずくまるやつだ。わたしにも神薙様の意地(?)があるので頑張ってこらえる。
直感的に大事には至っていない気がした。長袖を着ているので、打撲程度ならごまかしが効く。流血騒ぎさえ避けられれば大丈夫だと思った。
それよりも、商品を壊していないかが気になった。
「リア!」
ヴィルさんが誰よりも早く猛スピードで駆けつけてきた。
イケメンはレベルが上がるとワープ機能が搭載されるようだ。きっと、格好良さと速さは比例しているに違いない。イケ仏様も俊敏だし。
わたしはまんまと抱き寄せられ、また彼の胸の中にすっぽり収まってしまっていた。
吹っ飛ばされると彼の大胸筋が現れる。これもまたデジャヴだった。
「リア、大丈夫か。ぶつけただろう? 痛むか?」
あのぅ、ヴィルさん。
すみません、ちょっとよろしいでしょうか。
痛いのはこの際どうでも良いのです。
さっきまで「リア殿」と呼んでいたのに、急に呼び捨てにされていますよね。
貴方の雄っぱいと、このタイミングでの呼び捨て。
これはズルイと思うのです。
まだ肘は痛かったけれども、もう何がなんだか分からなくなって、ぶんぶんと首を横に振っていた。
肘以外の場所はすべてが気持ちいい。
彼の胸は心地良い温もりとフィット感があり、さらには香水の良い香りに包まれていた。
アップグレードしたイケメンさんには、マイナスイオン発生機能が付いているのかも。癒し効果は森林浴の約二十五倍です(当社比)
それにしても、わたしは一体何にぶつかったのだろう?
先程までいた場所を見ると、近くに細身の女性が一人立っていた。
全然知らない人だ。
それなのに、なぜか彼女は鬼のような形相でわたしを睨みつけていた。
どちら様でしょうか?
どうしてそのようなお顔をなさっているのでしょうか。
それではほとんど般若の面です。
わたし、何かしてしまいましたか? 心当たりは何もないのですけれども、なにぶん慣れぬ異世界ですので、何か粗相をしていたらご指摘を頂きたく……。
彼の胸の中に収納された状態でぽ~っとしていた。
「そういえば血相を変えて飛び出してきたイケ仏様はどうしたかな」と、そんなことも考えていた。
ただ、ここで何を考えても、彼の甘ったるい毒に溶かされてどこかへ行ってしまう。
見ず知らずの女性の刺すような視線や般若の面は、わたしに刺さる前にトゲトゲが削られて消えてしまうのだ。
多分、ここに潜り込んでいる間のわたしは無敵だ。何をされても痛くないし怖くもない。
イケメンもこのレベルになると、核シェルター機能が付くのだろう。俊敏で癒し効果がある核シェルターともなると高性能すぎて取り扱いが難しそうだ。しかし、国宝だから仕方がない。
「リア、近くのカフェで少し休まないか?」
それをやられると、わたしが何も言えなくなってしまうのを知ってか知らずか、彼は耳元で囁くように言った。
頷くと、さっと後ろから肩を抱くようにエスコートしてくれた。
なんだか、わたし、チョロい気が……。
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