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第十二章 重圧
第271話:陛下の代理でお茶会へ
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◇◆◇
イケオジ陛下からの依頼で、王宮主催のお茶会に出席することになった。
陛下が言うには「貴族間の活発な交流を目的として、小規模かつ試験的に始めるもの」だそうだ。
異業種間交流のきっかけ作りや、出会うことで化学反応が起きそうな者同士を結びつけようという狙いがあるらしい。
頻度は週に一回から二回程度。
参加人数はその時々で違うけれども、四人から六人くらいの「小規模なお茶会」とのことだった。
「私の代理として毎回出てもらいたい」と、ムチャ振りを頂いた……。
「陛下の代理なんてムリ」と抵抗を試みたものの、すでに予定は組まれていて逃げ場がない。
救いだったのは、ヴィルさんやアレンさんなど知り合いが参加者の一人として必ず同席してくれるということ。
護衛として同じ部屋にいるだけでなく、お茶会メンバーとして席についてくれるので、これは大きい。
陛下は「ふつうにお茶とお喋りを楽しめば良いだけ」とも言ってくれた。
しかし、『国王代理』というメガトン級のプレッシャーを少しでも和らげるため、マナーの先生からお茶会でのお作法をガッツリと教えて頂いた。もう理論武装でもしないとやっていられない。
この国で「お茶会」と言えば、誰かの家でやるパーティーだ。
てっきり参加者のお家で開催するのかと思いきや、場所は王宮エリアにある予約制ティーハウスや高級ホテルの中にある老舗のお茶屋さん、それから商人街で人気のカフェなど。お店はメンバーの年齢やタイプに合わせてまちまちで、いずれも個室を押さえての開催だった。
ある時は格式高い伝統的なお茶、またある時は若者に流行りのフレーバーティー。開催場所が変わるおかげで毎回参加するわたしも飽きることがなく、あちこちのお茶とお菓子が楽しめる。
もともとアレンさんとお忍びで王都内のカフェ巡りをしていたので、新しい行きつけの発掘にも良かった。
参加者にとっても、自宅での開催は準備が大変。王宮でのお茶は「格式が高い」という重圧が往々にしてあるらしい。自分のお茶代だけを支払えば良いというこの企画は、負担や煩わしさが極限まで削ぎ落されているので気楽で楽しいと好評だった。
いやー、最高最高。楽しくなってまいりましたぁ。
参加者は種族や身分、年齢層いずれも不問のようだった。
イケメンにしか出会えないキテレツな状況に置かれていたわたしには、この「普通な感じの出会い」が刺激的かつ感動的だ。
初めてのお茶会の相手は、ヒト族のオバーチャンズだった。
最初は遠慮しているのかあまり元気がなかったのだけれども、最終的にめちゃくちゃ盛り上がってしまい、時間が足りなくて改めてお食事会の約束をした。
お食事をともにしながら、「少し風変わりな食器を探しているのですが……」と話を振ったところ、ヒト族の職人さんが作っているオルランディア伝統陶器のお店を教えてくれた。
親切で優しくてヴェリーナイスなおばあちゃま三人だった。
陶器なら和食に合うお皿がないという悩みが解決できるかも知れないと思い、早速教えて頂いたお店に行ってみた。場所は商人街の裏通り。くねくねした細い坂の途中だ。
「こんにちは」とドアを開けると、素朴で温かみのある陶器がわたしを迎えてくれた。
予想どおり和食器に似ている(!)
大はしゃぎでお皿を数種類と小さな湯呑を選んだ。
さらにお茶碗に似た大小のボウルを発見(!!)
これで「カツ丼と親子丼をどうやって盛りつけるのか問題」が解決だ。
ちょっと頑張れば和食御膳のような素敵ランチが作れるかも知れない。
まとめて注文し、後日届けてもらうことにした。
緊張して臨んだ初めてのお茶会、フタを開けてみれば化学反応を起こしたのはわたしだった。
オバーチャンズのおかげで素敵なものと出会えた。
天人族のオジーチャンとのお茶会では、アレンさんの目がキラキラしていた。
参加者のオジーチャンの中にオルランディア・チェスの名人がいたのだ。
もう引退されているらしいけれども、公式戦の連勝記録保持者で、五十年以上その記録が破られていないそうだ。その偉業に、陛下から特別なチェスセットを賜ったとのこと。
アレンさんは学生チェス大会の王者になったことがあり、彼も連覇を成し遂げた人だ。
後日、名人のお家にお邪魔して、陛下から賜ったチェスセットを見せて頂いた。
駒がすべてエメラルドでできている大変なお宝だ。テーブルの上でペカーっと光っている。
わたし達が目をしぱしぱさせていると、「ちょっとやってみますか?」と言って、名人は気さくにアレンさんを対局に誘った。
その昔、王都騎士団で指導係もやっていたお方だ。それゆえにアレンさんがリスペクトする気持ちは強い。
彼は憧れの名人とエメラルドのチェスで対戦して感激しきり。
わたしは名人の奥様とお茶を頂きながら、ピカピカの駒を目で追ってはドキドキハァハァしていた。
アレンさんは名人から「素晴らしい才能」と褒められ、公式戦へのエントリーを勧められていた。
お茶会から始まる新しい人間関係は多才で「今度お友達も交えてお茶を……」と言った具合に、人が人を繋いでいくのも興味深い。
オバーチャンズのお茶会には旦那さん達やそれぞれのお友達が加わり、チェス名人は現役で活躍するお弟子さん達を紹介してくれた。
イケオジ陛下からの依頼で、王宮主催のお茶会に出席することになった。
陛下が言うには「貴族間の活発な交流を目的として、小規模かつ試験的に始めるもの」だそうだ。
異業種間交流のきっかけ作りや、出会うことで化学反応が起きそうな者同士を結びつけようという狙いがあるらしい。
頻度は週に一回から二回程度。
参加人数はその時々で違うけれども、四人から六人くらいの「小規模なお茶会」とのことだった。
「私の代理として毎回出てもらいたい」と、ムチャ振りを頂いた……。
「陛下の代理なんてムリ」と抵抗を試みたものの、すでに予定は組まれていて逃げ場がない。
救いだったのは、ヴィルさんやアレンさんなど知り合いが参加者の一人として必ず同席してくれるということ。
護衛として同じ部屋にいるだけでなく、お茶会メンバーとして席についてくれるので、これは大きい。
陛下は「ふつうにお茶とお喋りを楽しめば良いだけ」とも言ってくれた。
しかし、『国王代理』というメガトン級のプレッシャーを少しでも和らげるため、マナーの先生からお茶会でのお作法をガッツリと教えて頂いた。もう理論武装でもしないとやっていられない。
この国で「お茶会」と言えば、誰かの家でやるパーティーだ。
てっきり参加者のお家で開催するのかと思いきや、場所は王宮エリアにある予約制ティーハウスや高級ホテルの中にある老舗のお茶屋さん、それから商人街で人気のカフェなど。お店はメンバーの年齢やタイプに合わせてまちまちで、いずれも個室を押さえての開催だった。
ある時は格式高い伝統的なお茶、またある時は若者に流行りのフレーバーティー。開催場所が変わるおかげで毎回参加するわたしも飽きることがなく、あちこちのお茶とお菓子が楽しめる。
もともとアレンさんとお忍びで王都内のカフェ巡りをしていたので、新しい行きつけの発掘にも良かった。
参加者にとっても、自宅での開催は準備が大変。王宮でのお茶は「格式が高い」という重圧が往々にしてあるらしい。自分のお茶代だけを支払えば良いというこの企画は、負担や煩わしさが極限まで削ぎ落されているので気楽で楽しいと好評だった。
いやー、最高最高。楽しくなってまいりましたぁ。
参加者は種族や身分、年齢層いずれも不問のようだった。
イケメンにしか出会えないキテレツな状況に置かれていたわたしには、この「普通な感じの出会い」が刺激的かつ感動的だ。
初めてのお茶会の相手は、ヒト族のオバーチャンズだった。
最初は遠慮しているのかあまり元気がなかったのだけれども、最終的にめちゃくちゃ盛り上がってしまい、時間が足りなくて改めてお食事会の約束をした。
お食事をともにしながら、「少し風変わりな食器を探しているのですが……」と話を振ったところ、ヒト族の職人さんが作っているオルランディア伝統陶器のお店を教えてくれた。
親切で優しくてヴェリーナイスなおばあちゃま三人だった。
陶器なら和食に合うお皿がないという悩みが解決できるかも知れないと思い、早速教えて頂いたお店に行ってみた。場所は商人街の裏通り。くねくねした細い坂の途中だ。
「こんにちは」とドアを開けると、素朴で温かみのある陶器がわたしを迎えてくれた。
予想どおり和食器に似ている(!)
大はしゃぎでお皿を数種類と小さな湯呑を選んだ。
さらにお茶碗に似た大小のボウルを発見(!!)
これで「カツ丼と親子丼をどうやって盛りつけるのか問題」が解決だ。
ちょっと頑張れば和食御膳のような素敵ランチが作れるかも知れない。
まとめて注文し、後日届けてもらうことにした。
緊張して臨んだ初めてのお茶会、フタを開けてみれば化学反応を起こしたのはわたしだった。
オバーチャンズのおかげで素敵なものと出会えた。
天人族のオジーチャンとのお茶会では、アレンさんの目がキラキラしていた。
参加者のオジーチャンの中にオルランディア・チェスの名人がいたのだ。
もう引退されているらしいけれども、公式戦の連勝記録保持者で、五十年以上その記録が破られていないそうだ。その偉業に、陛下から特別なチェスセットを賜ったとのこと。
アレンさんは学生チェス大会の王者になったことがあり、彼も連覇を成し遂げた人だ。
後日、名人のお家にお邪魔して、陛下から賜ったチェスセットを見せて頂いた。
駒がすべてエメラルドでできている大変なお宝だ。テーブルの上でペカーっと光っている。
わたし達が目をしぱしぱさせていると、「ちょっとやってみますか?」と言って、名人は気さくにアレンさんを対局に誘った。
その昔、王都騎士団で指導係もやっていたお方だ。それゆえにアレンさんがリスペクトする気持ちは強い。
彼は憧れの名人とエメラルドのチェスで対戦して感激しきり。
わたしは名人の奥様とお茶を頂きながら、ピカピカの駒を目で追ってはドキドキハァハァしていた。
アレンさんは名人から「素晴らしい才能」と褒められ、公式戦へのエントリーを勧められていた。
お茶会から始まる新しい人間関係は多才で「今度お友達も交えてお茶を……」と言った具合に、人が人を繋いでいくのも興味深い。
オバーチャンズのお茶会には旦那さん達やそれぞれのお友達が加わり、チェス名人は現役で活躍するお弟子さん達を紹介してくれた。
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